ペットフードの歴史とオーガニック・ナチュラルフードの誤解

ペットフードは、イギリスで誕生して以来、社会や時代の変化とともに形態を変えながら発展してきました。近年では法整備や基準が整い、人の食品と同等の扱いを受けるようにもなっています。

背景には、ペットを家族として大切にする風潮と、安全性を求める意識の高まりがあります。本記事では、ペットフードの歴史や現状、代替フード(Alternative Food)の登場、オーガニックフード、ナチュラルフード、さらには獣医師の責任といった多面的な視点から、ペットフードについて解説いたします。

ペットフードの歴史

ペットフードが最初に誕生したのは、1860代年のイギリスです。その後、1922年に世界で初めてウェットタイプのペットフードが開発されました。このウェットフードは、食用や軍馬用として需要が下がった際に、不要となった馬肉を再利用して作られたものだそうです。

そして、当時まだ残飯を与えることが主流だった家庭にも市販ペットフードをコマーシャル等を駆使し、積極的にアピールし、Milk Boneが買収され、人間の品店に商品が並ぶようになると、ペットフードは日常に根づいていきます。しかし第二次世界大戦の始まりとともに、金属や食肉の需要が拡大したため、主流はウェットフードからドライフードへと移行しました。

このように、ペットフード産業は人の産業と競合を避けながら、使用しきれない原材料(副産物)をうまく再利用しつつ共存関係を築いて成長してきたといえます。大手企業が参入したことで、ペットフードは生活に密接する巨大な産業へと発展し、1948年にはMark Morris(のちのヒルズ)から療法食が販売されるまでになりました。

ペットフードの現在

近年のペットフード市場の成長はめざましく、2016年度のアメリカでの売り上げは280億ドルに達したと言われています。これはベビーフードの市場規模をはるかに上回る金額です。要因としては、ペットを飼う世帯数の増加やペットを家族同様に考える「擬人化」が進んだことが挙げられます。

日本の市場をみると、富士経済が2023年のペットフードの市場規模を公表し、その額ら4,754億円となっています。
ある調査では、「ペットを家族の一員」と考える飼い主は全体の6割以上で、人と同じような食事を意識したグルメフードが登場し、ペットの擬人化をさらに加速させています。

そして、多くの大手企業がペットフード産業に参入しています。人の産業が副産物を無駄なく活かすためにペットフード分野に合理的に参入し、大規模な宣伝を行うことで市場全体の成長を後押ししています。
ペットフード市場はMarsとNestleの2社が大きなシェアを占めると言われています。近年では、オーガニックやナチュラル、グレインフリーなど、代替フードも台頭してきました。

代替フードとは

代替フードは、「食材の品質」に注目したベンチャー企業が「家族経営」を掲げて打ち出したペットフードです。ここでは「ナチュラル」「オーガニック」「ベジタリアン」や「ローフード(生食)」など、従来のペットフードになかった表現が取り入れられています。

大手企業は利益優先で安全性を軽視しているといったマイナスのイメージを強調し、家族経営や地産地消を掲げることで支持を得ようとする企業もあります。大手企業を推奨していた獣医師の立場が批判される場面も見られるようになりました。

ナチュラル=安全という幻想

多くの飼い主が自然な食材を使ったフードで、ペットを育てたいと考えるようになっていますが、ペットの体に合った栄養価や安全性、会社の信頼性などを最優先に考える事が必要となります。
犬や猫は人とは代謝の仕組みが大きく異なるため、単に人が口にする食材だけで健康を維持できるわけではありません。また、飼い主が抱きやすい「ナチュラル=安全で健康」という思い込みは、誤解を生みやすいと指摘されています。
グレインフリーやグルテンフリー、副産物を使わないなど、さまざまな主張がある一方で、科学的に立証されていないケースや、製品によってはかえって脂質が多くなったり、炭水化物の種類が偏ったりするリスクもあります。

オーガニックフードとナチュラルフード

アメリカのペットフード安全性には、FDA、USDA(米国農務省)、AAFCO(米国飼料検査官協会)などが関与しています。FDAとUSDAは連邦政府機関であり、AAFCOは法人組合にあたります。

オーガニックについてはUSDA Organic認証という明確な基準がある一方、ナチュラルという表記は非常に曖昧で、ペットフードに対する法的な規制が存在しないため、混乱が起こってしまうのが現状です。こうしたあいまいなルール下で、消費者は「ナチュラル」「オーガニック」が高品質や安全を保証するかのように誤解しがちです。

グレインフリー

グレインフリーフードの有用性については確固たる結論は出ていない。また必ずしも高タンパク質・低炭水化物の「原始的フード」ではなく、エネルギー源をポテトやタピオカで代用している場合、かえって栄養価が下がり、またグリセミック指数が上がるため特に糖尿病患者では注意が必要。

グルテンフリー

グルテンは健康に害をあたえると考えてしまいがちだが、少数のアイリッシュセッター群での報告を除いて、犬でのセリアック病は極めて稀。猫では報告例がない。

これらの言葉は、企業が商品を販売するためのマーケティング用語として発展し、消費者はなんとなく良いと思い込み商品を購入しているではないだろうか。

ペットフード会社の信頼性

飼い主が商品を選ぶ際、必ずしも正確な情報に基づいて判断しているとは限りません。インターネットや広告の謳い文句に左右されるケースも多いのです。
メディアや販売店がなぜその商品を薦めるのかを冷静に考えましょう。何もインセンティブ無しに人へ商品を紹介するでしょうか。インセンティブとフードの価値を天秤にかけた時、正しい情報を提供してくれる人がどれだけの割合いるかを考えてみてください。

ペットフード会社の実績と信頼性、製品の安全性を確認する方法として、8つの項目が挙げられる。

ペットフードメーカーに確認する項目

  • 獣医臨床栄養専門医または同等の資格を持ったものがいるか
  • ペットフードの開発やレシピの作成に関わっている人の肩書き・資格
  • 給餌試験または化学分析によって調された商品はどれか
  • 商品の均一性と品質保証のために具体的にどのような管理を行っているか
  • どこで生産・加工されているか。施設を訪問することは可能か。
  • 栄養成分分析と消化率のデータを共有できるか
  • 商品のカロリー値/g
  • 商品に関する研究データ、査読付き論文での発表業績があるか

まとめ

ペットフード産業は長い歴史を経て成長し、多種多様な商品が市場にあふれています。一方で、規制や基準は必ずしも整っておらず、飼い主や獣医師には正しい知識や選択眼が求められます。飼い主は広告やパッケージの宣伝文句だけでなく、自身のライフスタイルやペットの健康状況を踏まえつつ、獣医師から得られる科学的・医学的情報を参考にフードを選ぶとよいでしょう。

参考論文:ナチュラル・オーガニックフードの誤解

執筆:equall編集部

 

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