私が獣医師を目指した理由|小島成承

おそらく多くの獣医師はこの職業になった理由として昔飼っていたペットの影響や動物園が好きでという理由は多いと思われるが自分の場合はこれといったきっかけはなく単純に会社員ではない面白い職業につきたいなぁ、という少しあやふやなものでした。

実際中学のアンケートの時に答えた将来なりたい職業では保育士さんと書いたこともあります。

ただ根本にあったのは好きなものを職業にしたら働いていても楽しいだろうな、というのが1番の理由です。

では、好きなものから何故自分は獣医師を選んだのでしょうか?

自分の好きなもの

みなさんも将来の目標、何をしたいのかという内容で1度は考えたことがあると思います。

その時にまず私がやったのが好きなものをひたすらリストアップしていくという事でした。

子供や野球、ピアノをしていたので音楽、ゲームや好きな食べ物として卵かけご飯やラーメンなど色々なものを書きだしました。その中でピンと来たのが動物と子供でした。

そうなると保育士か獣医のどちらかになりたいかということを考えていました。今思えば動物関連であれば訓練士やトリマーなど色々あると思います。

ただ当時の自分は単純に仕事にするならかっこいい職業を手にしたいと考えていました。すると、しっくり来るのは獣医師だなと直感的に思いました。

そこに明確なこういう獣医師になりたい、とか獣医師になってこんな仕事をしたいという事はありませんでした。

あったのは自分の好きな事で他の人と違う働き方をしたい!しかし、それだけではとても獣医にはなろうと思うには弱すぎる理由であり、やはり根本には動物が好きだ!というのがあったのは間違いありません。

ただ自分の動物が好きだというルーツがどこからきているのかは全くわかりませんでした。

自分の動物好きのルーツとは?

両親に“自分は小さい頃はどんな子供だったの?”と聞いた事があります。

すると“じっとしていられない”“やかましい”など近所にいるただの元気な、親にとっては迷惑極まりない特徴を挙げられ自分もでも苦笑いをしていました。しかし母から“後は昔から本当に動物は好きだったよね。気づいたら散歩中の犬に触りにいき、時には野良猫を連れて帰り飼いたいと言い出した時もあって、それが大変だったわ”と告げられました。正直驚きです。

家ではペットを飼える環境ではなかったので動物との接点と言えば散歩中の犬か近所の野良猫です。自分から野良猫を連れてくる幼稚園児なんていないと思います。ただ言えることは潜在的に動物が好きというのが幼少の頃から染み付いていたのかと思いました。

獣医師になってやりたいことは?

獣医学生になり改めてどのような獣医になりたいかと考えた時に小動物の獣医になりたいというのは決まっていたのですがその先にこれといった目標がありませんでした。

そんなある日、教授の研究の関係で保護施設での犬猫の血液検査の手伝いに福島まで行く機会がありました。
そこは東日本大震災で被害を受け飼い主と離れ離れになった子や、身元がわからなくなって捕獲された子などを保護している施設でした。

一見元気そうな姿でご飯を食べたり遊んだりしているのですがその中には飼い主が見つからず弱っていく犬や、捕獲される際の記憶がトラウマになり人間不審になってしまった犬など様々な背景がある犬を目にしました。

この時にふとよぎったことが、この保護された犬、もしくは猫を1匹でも多く暖かい家庭で過ごせるように譲渡できればどれだけの動物が幸せになるのだろう。そしたら保護施設で働いている方々がどれだけ助かり喜ぶだろう。そのために自分ができることがあるのだろうか。

これから取得する獣医師という資格で何か出来るのではないだろうかと考えるようになりました。これが将来自分が獣医になってやりたい目標へと変わっていきました。

現在の自分

現在、臨床獣医師になって5年になりましたがまだまだわからないことばかりで、問題にぶち当たることばかりです。

学生の頃考えていた1匹でも多く犬や猫を譲渡させるという目標はまだ何もできていません。言ってしまえば始まってもいません。そんな事を考えるととてつもない焦燥感にかられるのですがそう思えるほど自分のなかでもこの目標が本当にやりたいことなのだと改めて実感できます。

まだ目標の途中であり、やりたいことの10分の1もできていません。ただ焦っても仕方ないので今自分が出来ることをして、色々なことを学び吸収し、将来保護犬、猫、そしてそこで働いている施設の方々のために尽力して行きたいと思います。

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執筆:獣医師 小島成承

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