ペットと飼い主のウェルビーイングを解説!犬や猫と幸福に暮らす方法

犬や猫との暮らしは、飼い主のウェルビーイングを向上させます。愛犬や愛猫と暮らす毎日は喜びと癒しを与え、心と体の健康に大きく貢献します。
毎日の散歩や遊びは飼い主の運動量を増やし、触れ合うことで感じる癒しや幸福感は、心の健康を保つ上でも非常に重要です。

本記事では、ウェルビーイングの定義からペットとの生活を通じて得られる効果について国内外の先行研究を参考にまとめました。ぜひ最後までご覧ください。

目次

ウェルビーイングとは

近年、ウェルビーイングという言葉が広がってきました。WHOはウェルビーイングを「健康とは、病気や虚弱でないことだけでなく、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態」と定義し、身体的側面だけではなく、精神面と社会面も含めた健康状態を意味します。

ウェルビーイングの歴史

オックスフォード英語辞典によると、ウェルビーイングの語源は、イタリア語で幸せや福祉を表す「benessere (ベネッセレ)」で、16世紀ごろから言葉が使い始められたとされています。

第2次世界大戦以前、国際保健行政の柱は現在のWHO地域事務局に相当する複数の国際機関が独立して行う地域密着型の疾病・衛生対策でした。そのため現在のWHOに相当する国際連盟の The Health Organization of the League of Nationは全世界レベルの保健行政を掌握するには至っていませんでした。この現状に改革の必要性を感じていた施患明氏(スーミンスー、中国保健省上席研究員、在ワシントン中国大使)は乱立していた国際保健機関の統合構想を提案し、サンフランシスコ会議(1945年)で「WHO設置のための専門準備委員会緊急招集」を中国・ブラジル共同宜言として表明して採択されました。

これによって第1回国際連合経済社会理事会(1946年)でWHO設置が正式決定され、専門準備委員会において健康定義を含むWHO憲章の起草作業が始まったとされます。

ウェルビーイングの概念

ウェルビーイングは、元々はアリストテレスの幸福から始まり、日常生活との関連性から幸福感、感情、愛といった主観的な概念が研究対象として拡大し、心理的ウェルビーイングや社会的ウェルビーイングと細分化されていきました。

幸福・ユーダイモニア

ウェルビーイングは、幸福に近いニュアンスで利用されることが多いですが、異なる概念となります。
幸福は、紀元前 4~5世紀のギリシア哲学最盛期から追求さてれてきた永遠の課題であり、アリストテレスは人生の最終目標は幸福であると提唱しました。幸福は、ギリシャ語でユーダイモニア・エウダイモニア(eudaimonia)と言います。アリストテレスの主張によれば、お金を稼ぎたい、同僚から尊敬されたい、恵まれない人たちを助けたいといったさまざまな目標は、究極的には幸福な人生を送るための手段にすぎないということ。

主観的ウェルビーイング(Subjective Well-being)

Diener:人生の主観的かつ全体的な評価と定義され、幸福な人々は充実した人間関係を持ち、社会的な絆と幸福感が強く関連しています。幸せな人々は、豊かで満足のいく人間関係を持っていて、友人や家族、恋人との関係が充実していて強い社会的絆が幸福感を高めます。

心理的ウェルビーイング(Psychological Well-being)

Ryff:人格の成長、人生における目的、自律性、環境制御力、自己受容、積極的な他者関係という6つの心理的機能から構成される概念です。

社会的ウェルビーイング(Social Well-being)

Keyes:社会的ウェルビーイングは、社会的な5つの機能である社会的統合、社会的貢献、社会的一貫性、社会的実現、社会的受容から構成される概念です。

PERMA理論

Seligman:ウェルビーイングの概念をポジティブ心理学の観点から一般に浸透させたものであり、ウェルビーイングは五つの測定可能な要素(PERMA)が考察対象となります。どれ一つとして単独でウェルビーイングを定義する要素はないが、各要素がウェルビーイングに寄与し、これら五つの要素には、自己報告で主観的に測定される側面と、客観的に測定される側面とがあります。

QOL

WHOの定義では、生活している文化や価値観の中で、自分の目標、期待、基準、関心事との関連において、その人が人生においてどのような立場にあるかを認識することされています。
近年では、QOLはwell-beingと同義で使われていて、QOLは生活の質と認識されることが多いようです。

ペット飼育者のウェルビーイング

ペットと飼い主のウェルビーイングについては、誤解されることが多いですが、ペット自身のウェルビーイングとは客観的概念であり、犬や猫が幸せかどうかを主観的に測ることは難しいです。主な研究ではオキシトシンの分泌を用いて調査するのが一般的といえます。

他にもHHHHHMMというスコアリングがあります。5つのHと2つのMを幸福度を測る評価方法です。5つのHとは、痛み・苦痛、飢え、水分補給、衛生、幸福のことで、2つのMとは、活動・動き、そして状態が悪い日よりも、良い日の方が多いというものであり、ペットの治療で最後の瞬間にどうするべきかなど終末期に使われることが多い印象です。

以上の点と「幸せな飼い主と暮らすことでペットも幸せになれる」という観点から飼い主のウェルビーイングに重点を置く方がより実生活に近く、幸せなペットライフを過ごせると考えます。実際に孤独な人がペットに対して虐待をするといった研究もあります。

飼い主のウェルビーイングとは、犬や猫との関係を通じて飼い主が感じる幸福や心身の健康のことです。ペットとの生活は、愛情を注ぎ、受けるだけでなく、心の支えやストレスの緩和、そして生活のリズムを整える役割を果たします。ペットがいることで、交流も生まれ地域との繋がりも深まり、飼い主の幸福度が高まり、日常生活がより豊かになります。

飼い主の幸福度に及ぼす影響

ペットを飼うことは、飼い主の幸福度に影響を与えます。
人とペットの関係は、ペットを飼育することで幸福度が向上することは様々な研究からも分かっています。

視線を介して絆形成や信頼に関わるオキシトシンが分泌されたり、猫との接触や遊びといった相互作用がオキシトシンの分泌を促進する。犬を飼育することで子供のウェルビーイングが向上します。

犬との散歩によって身体的な健康にも良い影響を与えてくれます。

適正飼養が最初のステップ

適正飼養とは、「動物の健康と安全を守り、人に危害を加えたり迷惑をかけないように飼養すること」です。

適正飼養が守られないとペットの健康に悪影響を与えたり、近隣のトラブルに発展してしまうことがあります。また、動物虐待に発展すると懲役や罰金が処せられるため、飼い主は適正飼養するための情報を取得し、ルールを守って飼育する責任があります。

適正飼養には、健康的な食事管理や日々の参加なども含みます。最近では、ウェルビーイングを高めるためのアイテムなどマーケティング用語としても使われていますが、ウェルビーイングが高まる商品かどうかのエビデンスがない場合が多く、それらは会社の利益を上げるための宣言文と捉えておいた方が良いでしょう。

適正飼養についてはこちらのページをご覧ください

飼い主の心と体の健康を保つために

ペットの飼い主として、あなたの心と体の健康は重要です。ペットは1人では生きていけません。飼い主に依存する生き物なのです。そのため飼い主が健康で幸福な生活を送ることが何よりも重要です。

生活リズムを整える

犬や猫との生活でも、日々のリズムを整えることで心身の健康を保つことができます。例えば、毎日同じ時間に起きて、一定のルーティンで行動することが大切です。朝の散歩や食事の時間を決めておくと、ペットも安心しますし、飼い主自身も生活リズムが整いやすくなります。

また、リラックスする時間を設けることで、質の高い睡眠を取ることができ、ストレスの軽減にもつながります。お互いに規則正しい生活を心がけることで、より健康で幸せな日々を送ることができます。

コミュニティとの良好な関係

飼い主としての責任や日常の忙しさは時にストレスとなることがあります。そんな時こそ、周囲のサポートを積極的に活用することが大切です。友人や家族、近所のコミュニティとつながりを持ち、相談やアドバイスを受けることで、精神的な負担を軽減できます。

また、専門的なサポートが必要な場合、ペットシッターや動物病院のサービスを利用するのも一つの手です。これにより、自分自身のウェルビーイングを高め、ペットとの生活をより豊かで楽しいものにすることができます。

コミュニティについてはこちらの記事をご覧ください

地域コミュニティやオンライン、SNSグループで他の飼い主と情報交換を行うことで、最新のペットケア情報や役立つアイデアを手に入れることができます。

域の飼い主コミュニティに参加すると、近隣の飼い主とのリアルな交流も可能ですし、ペット以外にも災害に関する情報収集をすることもできます。コミュニティに参加するきっかけとしては、ペットイベントや地域猫活動があげられます。

ペットイベント一覧 >

地域猫活動について >

孤独感を軽減することが大切

孤独とは、ひとりぼっちである精神的状態と言われ、孤独な状態に陥ると、精神面で「うつ病」「自殺」「アルツハイマー病」の増加や「認知機能」の低下など、身体的側面では「心血管疾患のリスク」「高血圧」「死亡率」の増加などに関与します。

孤独は人生のあらゆる場面において誰にでも起こり得るため、相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会を目指すことが大切です。孤独感は人間に対してばかりでなくペットに対するネガティブな態度にも繋がってしまうため、地域やオンラインなどを通じて人付き合いをすることが重要となります。

可能であれば直接顔を合わせて会話ができる地域住民の方と関係を築くようにしましょう。飼い主同士の励まし合いが孤独感やストレス軽減につながり、互いに助け合いながらペットと共に健康で幸せな生活を送ることができます。

孤独感とペットの関係についてはこちらの記事をご覧ください

ウェルビーイングが学べるおすすめ書籍

ウェルビーイング

著者:前野 隆司、前野 マドカ
内容:日本のウェルビーイング第一人者であり、慶応大学教授、武蔵野大学ウェルビーイング学部の初代学部長。イメージがつかみにくいウェルビーイングについて、働く人、部下を持つ人、経営者に向けて平易に解説するもの。ウエルビーイング研究の第一人者とコンサルティングのプロによる共著です

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ソーシャル・キャピタルからみた人間関係

著者:稲葉陽二
内容:日々の組織運営や社会活動で生じる問題を解く鍵として期待の社会関係資本には正負の面がある。実話や身近な例でわかりやすく解説。

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社会関係資本: 理論統合の挑戦

著者:三隅 一人

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あなたの犬を世界でいちばん幸せにする方法

著者:ザジー・トッド
内容:犬の自主性を尊重し、満たされた日々を用意するには?
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あなたの猫を世界でいちばん幸せにする方法

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ペットフレンドリーなコミュニティ:イヌとヒトの親密性・コミュニティ疫学試論

著者:大倉 健宏
内容:ペットとヒトとの「親密性」に人とイヌとに共通する歯周病菌の感染調査から迫る。

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「奴隷」になった犬、そして猫

著者:太田 匡彦
内容:「猫は照明を1日12時間以上あてると、年3回は産める」。ペット流通の闇を暴いた『犬を殺すのは誰か』から約10年。犬に続き、空前の猫ブームではじまった増産態勢。「かわいい」「いいね」の裏側で消えてゆく命。信念の取材が暴く、人間の愚行と、理不尽な社会。

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にゃんこパワー:科学が教えてくれる猫の癒しの秘密

著者:カリーナ・ヌンシュテッド
内容:膝の上で眠る小さな存在が「大きな幸せ」をくれる

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最新研究で迫る 犬の生態学

著者:菊水 健史
内容:知れば知るほど愛おしい!
人類の最古にして最高のパートナー
犬の行動のワケがすべてわかる!

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孤独なボウリング: 米国コミュニティの崩壊と再生

著者:ロバート・D. パットナム
内容:本書はハーバード大学教授である著者が、米国における「社会関係資本」の衰退について論じた書である。
「社会関係資本」とは、市民が自発的にコミュニティーを形成、あるいは参加し、金銭的・物質的な見返りを求めることなく活動する社会的絆を指す。経済行為に関わる「物的資本」や主に高等教育に関わる「人的資本」とともに、豊かな社会づくりには不可欠の財だが、「社会関係資本」を体系的に論じた研究者、書物は欧米でも極めて少なかった。

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ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ

著者:マーティン・セリグマン
内容:国際的に著名な心理学者マーティン·セリグマンの、この力強い約束の言葉で始まる。
ここ15年、ポジティブ心理学という新しい潮流をリードしてきた著者による10年ぶりの注目の新刊である。 伝統的な心理学は「人間の苦しみを和らげること」を目標としてきた。セリグマンが15年の間牽引してきたポジティブ心理学の目標は異なっている。
それは「人生を最も価値あるものにすること」にある。本書でセリグマンは「本物の幸福とは何なのか?」を問い、ダイナミックな新しい概念を提示している。

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コミュニティ:社会学的研究 : 社会生活の性質と基本法則に関する一試論

著者:R.M. マッキーヴァー
内容:アソシエーションとの対比においてその基礎概念を明らかにし、社会学原理論を展開したコミュニティ論の原点となる不朽の古典。

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まとめ

ウェルビーイングの定義から歴史、ペットと飼い主のウェルビーイングについて解説いたしました。

飼い主のウェルビーイングを高めるためには、適正飼養を身につけて、人間関係を築くことが大切です。困った時に相談できる方が周りにいることで、飼い主だけではなく、ペットも安心して暮らすことができます。地域コミュニティの方と良好な関係を築くためには適正飼養が欠かせません。ルールを守って、飼い主としての責任を果たすことで、愛するワンちゃんやネコちゃんと幸せな生活をおくることできます。

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執筆:equall編集部

 

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