「ワンヘルス」とは? ペット飼育者こそ知っておきたい理念と福岡の取り組み

「ワンヘルス」という言葉を、ニュースなどで見聞きしたことはありますか。人と動物、そして環境の健康をまとめて守ろうという考え方で、ペットと暮らす私たちにこそ深く関わるテーマです。

その先進県として知られるのが福岡県。ところが2026年その福岡のワンヘルス事業が「税金の使い方」をめぐって大きく報道されました。
この記事では、「ワンヘルスとは何か」という基本から、福岡県の取り組み、そして批判されているのかまでを解説します。

ワンヘルスとは?

ワンヘルス(One Health)とは、「人の健康」「動物の健康」「環境の健全性」は互いにつながった“ひとつの健康”であり、一体的に守っていこうという概念です。世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)、世界動物保健機関(WOAH=旧OIE)などが国際的に推進しています。

なぜ、いまこの考え方が重視されているのでしょうか。背景には、次のような問題があります。

人獣共通感染症(ズーノーシス)の増加
新型コロナウイルスや鳥インフルエンザなど、私たちを脅かす感染症の多くは、もともと動物が持っていた病原体に由来するといわれています

環境破壊と生態系の変化
森林開発や気候変動で、人と野生動物の生活圏が近づき、動物由来の病原体が人に伝わりやすくなっています

薬剤耐性菌(AMR)の広がり
抗菌薬が効きにくい菌の問題は、人の医療だけでなく、動物や環境ともつながっています

つまり、「人の健康」だけを見ていても、感染症や環境問題は解決できない。だからこそ、人・動物・環境をまとめて考えよう、というのがワンヘルスの発想です。

ペット飼育者にとっても“自分ごと”

ワンヘルスは、遠い国際政治の話ではありません。人と動物の共生社会づくり、適正な飼育、動物由来感染症の予防などは、ワンヘルスの大切な柱であり、まさに愛犬・愛猫と暮らす私たちの日常に直結しています。

ペットの健康を守ることが、めぐりめぐって人や社会全体の健康を守ることにつながる。そう考えると、ぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。

 

福岡県は日本の「ワンヘルス先進県」

数ある自治体のなかでも、福岡県はワンヘルスに全国で最も早くから、そして幅広く取り組んできた“先進県”です。主な取り組みを見てみましょう。

全国初のワンヘルス条例
2021年1月、都道府県として全国で初めて「福岡県ワンヘルス推進基本条例」を施行。2022年10月には実効性を高める「実践促進に関する条例」も成立しました

6つの基本方針
①人獣共通感染症対策、②薬剤耐性菌対策、③環境保護、④人と動物の共生社会づくり、⑤健康づくり、⑥環境と人と動物のより良い関係づくり

アジアワンヘルス福岡宣言2022
2022年、福岡市でアジア獣医師会連合(FAVA)の大会が開かれ、アジアからワンヘルスを発信する宣言が採択されました

教育・研究の推進
2023年から高校などでワンヘルス教育がスタート。国際フォーラムも毎年開催されています

拠点施設の整備
研究や人材育成を担う「ワンヘルスセンター」を2027年度の稼働を目指して整備中。自然を活用した「ワンヘルスの森 四王寺」なども設けられています

理念そのものは国際的にも重要で、福岡の先進的な姿勢は各方面から注目されてきました。

なぜ福岡のワンヘルスは批判されているのか

一方で2026年に福岡県のワンヘルス事業は「進め方」や「お金の使い方」をめぐって強い批判にさらされています。理念の是非というより、“公費(税金)の使われ方”への疑問が批判の中心です。報道などで指摘されている主なポイントを整理します。

① 事業費の大きさと費用対効果への疑問

象徴的なのが、整備が進むワンヘルスセンターの総事業費が約200億円にのぼると報じられている点です。このほかにも記念のモニュメントや関連施設の整備費が報じられ、「本当にその金額に見合う効果があるのか」「箱物づくりに偏っていないか」といった費用対効果への疑問が上がっています。福岡県には、県民から事業の必要性や利権を問う抗議の声も寄せられています。

② 特定の人物・政治との結びつきへの指摘

報道では、福岡のワンヘルス推進を主導してきた中心人物として、県議会議長や日本獣医師会の要職を務めた県議の存在が繰り返し取り上げられ、「一部の議員のライフワーク」「特定の利権につながっているのではないか」という批判が出ています。あわせて、ワンヘルス関連の政治資金パーティーをめぐる問題や、県職員による組織的なパーティー券購入、高額な海外視察、講演会謝礼の不適切な処理といった疑惑も報じられ、福岡県は第三者委員会を設けて調査する事態になっています。

③ 知事の謝罪と、知事選の争点化

こうした状況を受け、服部誠太郎知事は県議会で、「ワンヘルスと言えば、何でも予算が付くと誤解させてしまった」という趣旨の謝罪を行いました(2026年6月)。ワンヘルス事業の是非は福岡県知事選でも争点の一つとなり、県政のあり方そのものが問われる問題へと発展しています。

陰謀論的な批判と、正当な批判は分けて考える

なお、ネット上には、根拠に乏しい陰謀論的な主張も見られます。しかし、これらは今回の福岡での問題とは性質がまったく異なります。「税金の使い方が適切だったか」という行政監視の観点と、証拠のない陰謀論は切り分けて受け止めることが大切です。

ペット飼育者として、どう受け止める?

ここで押さえておきたいのは、「ワンヘルスという理念」と「福岡での事業の進め方」は、別の問題だということです。

理念としてのワンヘルス
人獣共通感染症や薬剤耐性菌、環境と動物の健康を一体で守る考え方は、国際的にも重要で、ペットとの共生社会づくりにも欠かせません

事業としての進め方
一方で、公費が投じられる以上、その使い道が本当に県民や動物のためになっているか、透明性は保たれているかは、しっかりチェックされるべきです

批判が起きていることは、「ワンヘルスの理念が間違っている」という意味ではありません。むしろ、大切な理念だからこそ、利権や不透明さで信頼を損なってほしくない。多くの人が抱くのは、そんな思いではないでしょうか。ペットと暮らす私たちも、こうしたニュースを“他人ごと”にせず、是々非々で見守っていきたいですね。

まとめ

ワンヘルスは、ペットと人が安心して共に暮らせる社会の土台になりうる大切な考え方です。だからこそ、その進め方にも私たち一人ひとりが関心を持っていきたいものです。

出所

  • 福岡県「福岡県ワンヘルス推進基本条例」
  • 福岡県「ワンヘルスの実践促進に関する条例」ほか
  • FUKUOKA IS OPEN「ワンヘルス 施策紹介」
  • 福岡県「県民の声」

※本記事は2026年7月時点の状況を中立的に整理したものです。ワンヘルスの理念そのものの価値と、個別事業の運営に関する論点は分けてご理解ください。最新の状況は各公式情報・報道でご確認ください。

執筆:equall編集部

 

 


 

公式LINE

おすすめ情報を受け取る

犬用ドッグフード選びにお悩みの方へ!選び方や購入方法を解説します

猫用キャットフード選びにお悩みの方へ!選び方や購入方法を解説します

 あなたにオススメ