旅行や出張のたびに、「猫をペットホテル(キャッテリー)に預けるのはかわいそう…」「ストレスで体調を崩さない?」と不安になる飼い主さんは少なくありません。特に多い悩みが、次の3つです。
- ストレスで病気にならないか(体調悪化が心配)
- 個室と大部屋(集団)、どちらが安心なのか
- 何日までなら預けても大丈夫なのか
この記事では、スイス連邦工科大学の研究チームが140匹の猫を対象に実施した追跡研究(Kessler & Turner, 1997)をもとに、猫がキャッテリー環境にどう適応していくのかを科学的根拠(エビデンス)で解説します。
目次
猫の約3分の2は「2週間」で適応。ストレスは「4日目」に大きく下がる
- 約3分の2の猫は、2週間の滞在でストレスが時間とともに低下し、環境に適応できた
- ストレスは滞在最初の4日間で大きく減少する(=「最初の数日」が山場)
- 一方で約3分の1はストレス低下が不十分で、負担が続く可能性
- 全体の約4%は、2週間経っても極度の緊張が続き「ホテル利用が不適切」と判断されるレベル
- 意外な事実:個室/ペア/集団(大部屋)でストレスに有意差は出なかった
個室・ペア・集団飼育:どれが一番ストレスが少ない?
ペットホテル選びで迷いやすいのが、「個室が安心?それとも大部屋(集団)の方が良い?」という点です。
この研究で重要なのは、飼育スタイル(単独/ペア/集団)によってストレス値に有意な差が見られなかったという結果です。
一般的に「集団=ストレス」と思われがちですが、十分なスペースがある場合、猫は他個体との距離を取ってやり過ごせる可能性があります。逆に「個室なら安心」とも限らず、部屋タイプよりも、その猫自身の性格・経験・適応力が大きく影響すると考えられます。
ストレスはいつ下がる?目安は「4日目」
預け入れ直後はストレス反応が出るのが自然です。しかし、調査データでは最初の4日間でストレススコアが急速に低下しました。
その後も緩やかに低下は続くものの、2週間経っても「対照群(長期滞在で環境に慣れている猫)」ほどのリラックス状態には戻らなかった、という点も重要です。
つまり、
- 短期(数日):初期ストレスは“適応プロセスの一部”として起こりやすい
- 中期(〜2週間):多くの猫は落ち着くが、全員が完全に慣れるわけではない
という整理になります。
飼い主も使える「キャット・ストレス・スコア(CSS)」
研究では、猫のストレスを7段階で評価するキャット・ストレス・スコア(CSS)が使われました。面会時や帰宅後の様子チェックにも役立ちます。
- レベル1:完全にリラックス…横向き/仰向け、腹を見せる
- レベル2:リラックス(弱)…座る、少し動く、目は普通
- レベル3:緊張(弱)…腹を隠して座る、警戒気味
- レベル4:緊張(強)…伏せて固まる、耳が後ろ/前、体の一部がピクつく
- レベル5:恐怖(硬直)…体を低くして固まる、瞳孔が開く
- レベル6:強い恐怖…地面にへばりつく、震えることも
- レベル7:パニック(極度の恐怖)…小さくうずくまり激しく震える、威嚇/唸り声
研究では、最初の1週間はCSSでレベル3以上の猫が多い一方、2週目にはその割合が大幅に減少しました。
預ける前に飼い主ができる3つの対策
1)短期間の利用から「慣らす」
過去にその場所を利用した経験がある猫は、ストレス低下が早い傾向が示されています。いきなり長期ではなく、日帰り・1泊など短い滞在で、場所やスタッフに慣れさせておくのがおすすめです。
2)「4日以内の短期」なら過度に恐れすぎない
多くの猫は最初の数日で順応を始めます。短期利用で見られる初期ストレス反応は、必ずしも「悪いサイン」ではなく、適応過程の一部として起こりやすい点を押さえておきましょう。
3)極度に怖がりな猫は「別手段」も検討
全体の約4%は、2週間でも極度の緊張から抜けられず、ホテル利用が不適切と判断されるレベルでした。もし、
- 帰宅後に体調を崩した経験がある
- 環境変化で食欲不振・排泄停止が起きやすい
- 来客や物音にも過敏でパニックになりやすい
といった特徴がある場合は、自宅でのペットシッターなど「環境を変えない選択肢」を優先する方が安心です。
よくある不安に“論文ベース”で答える
Q. 猫はペットホテルで何日なら大丈夫?
A. 研究では、ストレスは最初の4日間で大きく下がる傾向が示されました。多くの猫は2週間で適応方向に進みますが、約3分の1はストレスが下がりにくい点も重要です。短期か長期かよりも、猫の性格(怖がり度)と施設の質が影響します。
Q. 個室と大部屋、結局どっちが良い?
A. この研究では個室/ペア/集団でストレスに有意差がありませんでした。つまり「個室なら安心」と決め打ちせず、隠れ場所がある・清潔・スタッフが猫に慣れているなど運用品質を重視するのが合理的です。
Q. ストレスで病気にならない?
A. 本研究は主に行動指標(CSS)でストレス推移を評価しています。体調面は個体差が大きいため、ホテル利用後に食欲・排泄・呼吸・元気が明らかに落ちる場合は、早めに専門家へ相談するのが安全です。
部屋タイプより「猫が落ち着ける運用」と「猫の性格」が鍵
猫は環境変化に敏感ですが、研究データからは「多くの猫は適応できる一方、適応が難しい猫も一定数いる」ことが明確に示されています。
- 多くの猫は、滞在4日目を境にストレスが下がりやすい
- 約3分の2は2週間で適応方向へ
- ただし約3分の1はストレスが下がりにくく、約4%は不適切レベル
- 個室か集団かより、清潔さ・隠れ場所・スタッフの知識など“運用の質”が重要
愛猫の性格を客観的に見極めつつ、必要なら「慣らし預け」や「自宅ケア」も組み合わせて、無理のない形でペットホテルを活用しましょう。
参考文献:Kessler, M. and Turner, D.C., 1997. Stress and adaptation of cats (Felis silvestris catus) housed singly, in pairs and in groups in boarding catteries. Animal Welfare, 6, pp.243-254.
執筆:equallLIFE編集部










































