ペット同行避難の阻害要因とは?自治体対応の地域差と飼い主の意識調査に基づく分析

災害大国日本において、ペットと暮らす私たちが直面する最大の課題、それが「同行避難」です。2013年に環境省がガイドラインを策定し、ペットと一緒に避難することが推奨されるようになりました。しかし、実際の災害現場では混乱が続いています。

今回は、「災害時のペット同行避難の阻害要因に関する基礎的研究」をもとに、自治体の受け入れ体制のリアルな実情と、飼い主が抱える意識のズレについて解説します。

「避難所に行けばなんとかなる」という考えが、いかに危険であるか。データに基づいた事実を知り、愛する家族を守るための具体的なアクションを確認していきましょう。

避難所に行っても入れない?自治体対応の「地域格差」

同行避難とは、あくまで「ペットと一緒に避難所まで移動すること」を指し、必ずしも「同じ部屋で過ごせること」を意味しません。研究データからは、地域によって対応に大きな差があることが明らかになっています。

受け入れ体制のリアル(広島・岡山・大阪の比較)

調査によると、2018年の西日本豪雨を経験した広島県や岡山県の自治体では、教訓を生かして受け入れ体制の改善が進んでいます。岡山県の調査対象全自治体では「全避難所で受け入れ可」となっています。

一方で、大阪府の一部の自治体では、同行避難者を受け入れる避難所が「ゼロ」の地域や、「検討中」とする地域も存在しました。つまり、住んでいる場所によっては、災害時に「ペットと行く場所がない」という事態が現実に起こり得るのです。

ペットの居場所は「屋外」が現実

多くの飼い主が「避難所ではペットと同室で過ごしたい」と願っています。しかし、現実は厳しいものです。

  • 広島県:多くの自治体で「屋内(同室)」スペースを確保
  • 岡山県・大阪府:大半が「屋外(軒下など)」を指定

学校の体育館が避難所になる場合、ペットは「渡り廊下」や「軒下」のケージに置かれるケースが一般的です。台風や冬場の避難において、屋外での飼育環境はペットにとって過酷であり、飼い主にとっても頻繁な世話が困難になります。

飼い主の37%が「避難しない」を選択するリスク

避難所の体制が整っていない、あるいは情報が不明確であるため、多くの飼い主が命に関わる危険な選択をしようとしています。

自宅待機と車中泊の危険性

アンケート調査によると、避難指示が出た場合の行動として、以下の回答が目立ちました。

  • 37%:犬や猫と一緒に自宅に残る(避難しない)
  • 44%:自家用車の中での避難を考えている

この数字は衝撃的です。自宅に残れば家屋倒壊や津波・浸水の犠牲になる可能性が高まり、車中泊はエコノミークラス症候群や熱中症のリスクと隣り合わせです。「ペットを守るため」に選んだ行動が、結果として「飼い主とペット共倒れ」のリスクを高めているのが現状です。

準備不足が避難をためらわせる

なぜ避難所へ行けないのか。その背景には飼い主側の準備不足もあります。同行避難経験者はクレートトレーニングなどの実施率が高い一方、全体で見ると以下の通りの低い実施率となっています。

  • マイクロチップ装着率:17%
  • クレートトレーニング実施率:26%
  • 猫をキャリーに慣らす:20%

普段からケージやクレートに入ることに慣れていないペットを、不特定多数の人が集まる避難所に連れて行くことは困難です。この「しつけ不足」が、結果的に避難所への移動を諦めさせる大きな要因(阻害要因)となっています。

情報のミスマッチが不安を増幅させている

行政と住民の間で、情報の伝え方にも大きなズレがあることが分かりました。

行政はHP、住民は「紙」を求めている

多くの自治体が「ホームページで情報を公開している」としていますが、実際にその避難所体制を知っている飼い主は20%にも満たない状況です。

  • 飼い主側の要望:80%以上が「印刷物の全戸配布」や「広報誌」での情報を希望
  • 行政側の対応:主にホームページでの掲載

災害時、ネットが繋がりにくくなる可能性も考慮すれば、ハザードマップと同様に、ペット防災に関する情報も「紙」で手元にあることが安心につながります。このミスマッチが、事前の備えを遅らせる一因となっています。

今日から始める「同行避難」への具体的対策

  1. 自治体の「防災課」へ直接確認する
    ホームページを見るだけでなく、電話や窓口で具体的に聞いてください。「ペットは室内に入れますか?」「ケージは持参ですか?」「屋外の場合、雨風はしのげますか?」。具体的なイメージを持つことが大切です。
  2. クレート(ハウス)を「安心できる場所」にする
    避難所ではケージやクレート生活が基本です。普段から「ハウス」と言えば喜んで入るようトレーニングしてください。これができていないと、周りの避難者の迷惑になり、受け入れを拒否される原因になります。
  3. 迷子対策を徹底する
    マイクロチップの装着はもちろん、首輪には必ず迷子札をつけてください。災害時の混乱ではぐれた場合、外見だけで自分のペットだと証明するのは困難です。

社会全体の合意形成に向けて

今回の研究レビューから見えてきたのは、以下の3つの事実です。

  • 自治体によって受け入れ体制には大きな差があり、屋内同伴は当たり前ではない
  • 多くの飼い主が避難を諦め、自宅や車中泊という危険な選択肢を考えている
  • 飼い主側のしつけや準備(クレート待機・迷子対策)が圧倒的に不足している

ペットを守れるのは飼い主だけです。しかし、避難所は動物が苦手な人も利用する公的な場所です。「避難させてくれて当たり前」ではなく、飼い主としての責任(しつけと準備)を果たした上で、安全を確保する姿勢が求められます。

まずは、お住まいの地域の避難所がどのようなルールになっているか、今日確認することから始めてみてください。

 

参考文献:災害時の「ペット同行避難」の阻害要因に関する基礎的研究.

執筆:equallLIFE編集部

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