愛するペットを失ったとき、胸の奥がえぐられるような悲しみが押し寄せます。
それなのに周囲から「たかがペットでしょ」と言われて、言葉を失った経験がある人もいるかもしれません。
しかし日本の学術研究では、ペットロスは「異常」ではなく、家族を失ったときに起きる正常な悲嘆反応(グリーフ)として重要性が認められつつあります。
本記事では、論文「日本におけるペットロス研究の動向と展望」をもとに、過去20年の研究レビューから見えてくるペットロスの実態と、回復のヒントをわかりやすく解説します。
- なぜ今「ペットロス」が社会課題になっているのか
- 若年層と高齢者で異なる影響(成長/孤立リスク)
- 犬猫だけでなく小動物でも深い悲しみが起こる理由
- 「ペットロス症候群」という言葉が生む誤解
- 研究レビューから整理できる回復のヒント
目次
日本におけるペットロス研究が増えた背景
なぜ昔より「ペットロス」という言葉を耳にするようになったのでしょうか。論文では、その背景としてペットブームの“質”が変わったことが指摘されています。
番犬から「伴侶(コンパニオンアニマル)」へ
戦後の日本では、ペットは時代とともに役割が変化してきました。
- 第1次ペットブーム(1950年代~):番犬としての需要(実用性が中心)
- 第2次ペットブーム(1960~80年代):小型室内犬が広がり、愛玩動物として定着
- 第3次ペットブーム(1990年代後半~):ペット可住宅の増加などで、ペットが“家族”に近づく
ペットが「役に立つ存在」から「心のパートナー」へ変わったことで、死別の痛みも、人間の家族を失う悲しみに近いものになりました。研究が増えたのは、社会の価値観が変わった証拠でもあります。
ライフステージで異なるペットロスの影響
ペットロスは誰にでも起こり得ますが、年齢や環境によって意味合いが変わります。論文がレビューした複数研究から、世代ごとの傾向が整理されています。
子ども・若者:悲しみが「成長」につながることがある
若年層を対象にした研究は比較的多く、悲しみが「つらい体験」である一方、学びや成長につながる可能性も示されています。
- 死の概念の理解:幼少期の死別経験が「死は不可逆である」ことの理解を深める
- 死生観の形成:身近な死として強く記憶され、命の捉え方に影響する
もちろん「成長できるから良い」という話ではありません。悲しみは本物です。ですが、悲しみのプロセスが人を成熟させる可能性がある、という視点は救いにもなります。
高齢者:孤立リスクが高まりやすいが「継続する絆」が支えになる
高齢者の場合、ペットが日々の会話相手や生きがいになっていることも多く、死別がそのまま生活意欲の低下や孤立、抑うつにつながるリスクがあります。
ここで重要視されるのが「継続する絆(Continuing Bonds)」です。
- 写真に話しかける
- 思い出を語る
- 供養や小さな儀式を続ける
「忘れなきゃ前に進めない」ではなく、心の中でつながり続けることが、回復を支える場合がある。論文はそうした視点を示唆しています。
犬猫だけじゃない。小動物でもペットロスは深い
「犬猫なら分かるけど、ハムスターや魚でそこまで?」という無理解は、飼い主をさらに追い込みます。
論文で触れられる研究では、大学生の調査で“強い衝撃”の対象として犬に次いでハムスターが多いなど、犬猫以外でも深い喪失が起こり得ることが示されています。
悲しみの強さは、体の大きさや寿命で決まりません。
どれだけ愛着が形成され、日常が共有されていたかが大きいのです。
周囲の無理解によって悲しみが「公認されない悲嘆(非公認の悲嘆)」になったとき、人はより孤立しやすくなります。ここは社会がアップデートすべき点です。
「ペットロス症候群」という言葉に注意
メディアでは「ペットロス症候群」という言葉が広く使われますが、論文ではこの言葉が誤解を生みやすい点にも注意が促されています。
病気扱いが、回復を妨げることがある
「症候群」と名付けると、悲しむこと自体が病気や異常のように扱われる恐れがあります。
ペットロスは多くの場合、正常なグリーフであり、時間経過や周囲のサポートによって回復へ向かいます。
ただし、食事や睡眠が長期間とれない、希死念慮があるなど、生活機能が著しく落ち込む場合は専門的支援が必要です。
大切なのは、「悲しみを否定しないこと」と「必要なときに支援につながること」の両立です。
回復のヒント
論文が扱う研究群から見えてくる、現実的なヒントを4つに整理します。
- 悲しみを肯定する
つらいのは当然です。涙が出るのは弱さではなく、愛した証です。 - 話せる場を持つ
思い出を語れる相手や場所(家族、友人、同じ経験を持つ人のコミュニティなど)が回復を助けます。 - 無理に忘れなくていい
写真、供養、日記など「継続する絆」は、心の安定につながることがあります。 - 周囲は種別で判断しない
犬猫でも小動物でも、悲嘆は本物です。周囲の共感が回復を支えます。
ペットロスは「弱さ」ではなく、関係性の深さ
ペットロスが個人の問題に見えて、実は社会の理解や支援の不足と結びついているという点です。
- ペットが伴侶化したことで、死別の痛みも深くなった
- 若年層では成長につながる側面、高齢者では孤立リスクがある
- 小動物でも悲嘆は深く、無理解が二次的な苦しみを生む
- 病気扱いではなく、正常な悲嘆として支える視点が重要
もしあなたが今、深い悲しみの中にいるなら。
それは「大切にしてきた時間」が確かにあった証拠です。焦らず、あなたのペースで、少しずつで大丈夫です。
参考文献:日本におけるペットロス研究の動向と展望
執筆:equallLIFE編集部









































