近年、ペットの家族化が進む中で、ペットフードは単なる「エサ」から、健康を守るための「食事」へと意識が変化しています。
本記事では、『ペットフードの種類と加工』をもとに、法的な定義の違い、市場トレンドによる製品の変化、そして消化吸収を高めるための加工技術について、レビュー形式でわかりやすく解説します。
- ペットフードの定義が「2つのルール」でどう違うか
- 飼育環境の変化がフード設計に与えた影響
- 家畜用飼料とペットフードの決定的な違い
- 消化率を高める加工技術(デンプンα化、タンパク質変性、HTSTなど)の要点
- 2015年以降の表示制度変更のポイント
目次
ペットフードの定義:2つの法律の違い
ペットフードの定義は、どの法律・規約に基づくかによって対象範囲が異なります。ここを押さえると、「何がペットフードで、何がそうでないのか」が整理できます。
ペットフードの表示に関する公正競争規約(業界ルール)
穀類、肉類などを原料とし、加工・製造されたものを指します。
- 乾燥野菜などの簡易加工品は含まれる
- 未加工の生肉や、噛むだけの骨・皮(おもちゃ)は含まれない
ペットフード安全法(法律)
「愛がん動物の栄養に供することを目的」とするものが幅広く対象になります。
- 加工されていない生肉
- ミネラルウォーター
- サプリメント
つまり、安全法は「栄養摂取」を目的とする広い範囲をカバーし、公正競争規約は「加工食品」としてのペットフードをより厳密に定義していると言えます。
飼育環境の変化とフードの進化
ペットフードの形状や設計は、日本の飼育環境の変化に強く影響を受けています。市場が変わると、フードの“最適解”も変わるということです。
- 室内飼育の増加:犬の約58%、猫の約82%が「室内のみ」で飼育されています(2021年)。
- 小型化:犬の約70%が体重10kg以下の小型犬です。これに伴い、ドライフードの粒(キブル)のサイズは、かつての番犬時代に比べ小型化しています。
- 高齢化:7歳以上の高齢個体は犬で50%以上、猫で40%以上を占めます。これにより、関節や腎臓の健康維持に配慮した製品が増えています。
家畜用飼料とペットフードの決定的な違い
著者は、経済動物(牛・豚・鶏)用の飼料とペットフードには、目的や設計思想の面で明確な違いがあると指摘しています。
違い1:目的の違い
家畜は「経済効率と早期育成」を求める一方、ペットは「健康で長生き(生涯飼育)」を目指します。
違い2:抗生物質の扱い
家畜飼料では生産効率向上のために抗生物質の使用が認められる場合がありますが、ペットフードでは認められず、使用すれば薬機法違反となります。
違い3:加工度(α化度)の差
家畜飼料の多くはデンプンがα化(糊化)されていませんが、ペットフードは加熱加工により消化吸収性を高めています。
データ比較:豚用飼料(ペレット)のα化度が約33%であるのに対し、ドッグフード(発泡ドライ)は約91〜93%と非常に高い値を示します。
消化率を高める「加工・調理」の科学
ペットフードの加工は、単に形を整えるためではありません。栄養素を「動物が利用できる形」に変換し、安全性と消化性を両立させる重要な工程です。
デンプンのα化と消化性
加熱前の生デンプン(βデンプン)は消化率が低いですが、加熱・加圧することで「α化」し、消化酵素による分解性が向上します。
- ドライフードは水分10%以下に乾燥されていますが、製造時の加熱によって高い消化率を確保しています。
- 一方で、水分15〜35%のセミモイストフード等は、保管中にデンプンが「老化(β化)」しやすく、消化不良による軟便のリスクがあるため注意が必要です。
タンパク質の変性と安全性
原材料に含まれるタンパク質は、加熱・加圧によって適度に変性し、消化可能な状態になります。
また、生の豆類などに含まれるトリプシンインヒビター(消化阻害物質)も、加工工程で失活させることで安全性を確保しています。
主な製造機械:エクストルーダー(押出機)
ドライフードの多くは「エクストルーダー(押出機)」で製造されます。
HTST加工(高温短時間殺菌):120〜140℃で10〜20秒程度という短時間で処理するため、ビタミンの損失を抑えつつ、殺菌とデンプンのα化を同時に行える利点があります。
表示制度の変更
2015年の公正競争規約改訂により、成分表示が変更されました。
従来は「粗タンパク質」「粗脂肪」と表示されていましたが、食品と同様に「タンパク質」「脂質」という表示が可能になりました。
ただし、「粗灰分」や「粗繊維」については、分析法や栄養学的意味合いから「粗」の表現が残る場合もあります。
まとめ
ペットフードが単なる混合飼料ではなく、食品工学的な技術(エクストルーダーやレトルト殺菌など)を駆使して、ペットの健康寿命を支えるために設計された高度な加工食品であることを示しています。
飼い主や獣医療関係者は、加工特性や法的な定義を理解した上で、個体の状態やライフステージに合ったフードを選択・推奨することが求められます。
参考文献:ペットフードの種類と加工
執筆:equallLIFE編集部









































