ペットと逃げるには?能登半島地震の事例でわかる「3つの避難」

2024年に発生した能登半島地震。多くの被災者が避難生活を余儀なくされる中、注目されたのが「ペット連れ避難」の難しさです。

「ペットと一緒に避難所にいけるのか?」
「同行避難と同伴避難は何が違うのか?」

こうした疑問や不安を持つ飼い主の方は多いはずです。本記事では、論文『令和6年能登半島地震における〈人とペットの3つの避難〉に関する予備的考察』をもとに、能登の被災地で実際に起きたことと、これからのペット防災に必要な考え方を解説します。

そもそも「人とペットの3つの避難」とは?

災害時のペット避難に関する用語は混乱しがちです。まずは、本論文で整理されている「3つの避難」の定義を明確にします。これらを知っているだけで、取るべき行動が変わります。

同行避難(どうこうひなん)

意味:飼い主とペットが「避難行動」を共にすること。
重要点:避難所まで一緒に逃げる行為を指します。避難所の中で「同じ部屋にいられること」を保証するものではありません。

同伴避難(どうはんひなん)

意味:避難所等の敷地内に、人とペットの居場所を確保すること。
重要点:環境省のガイドラインでも、必ずしも「同室・同居」を意味しません。「飼育スペースは別棟」「屋外のテント」というケースも同伴避難に含まれます。

分散避難(ぶんさんひなん)

意味:避難所以外の場所(自宅、車中、親戚宅など)へ避難すること。
重要点:避難所環境が合わない場合や、ペットの性格を考慮して選択される「セカンドベスト(次善)」の策です。

能登半島地震で「ペット避難」はどう行われたか

論文では、著者が実際に訪問した能登地方の避難所(中能登町、七尾市、輪島市など)の事例が報告されています。現場では、マニュアル通りではない柔軟な対応が行われていました。

事例から見る成功と課題

  • 成功例:連携による住み分け
    ある学校避難所では、避難者・運営者・外部支援者(NPOなど)が対話し、校舎の1階をペット連れ専用、2階を一般避難者用とすることで「同伴避難(施設内同居)」を実現しました。
  • 配慮の例:あえて別室を選択
    大型犬を連れた飼い主が、「他のペット(小型犬が多い)を怖がらせてはいけない」と自ら申し出て、別の教材室を利用したケースがありました。これは飼い主同士の思いやり(共助)による解決例です。
  • 困難だった例:環境変化による離脱
    当初は避難所内で受け入れられていたものの、運営体制の変更や、心ない言葉をかけられたことで居づらくなり、車中泊や在宅避難(分散避難)へ移行せざるを得なかった飼い主もいました。

これらの事例から、現場での「対話」と「調整」が、ペットの居場所確保に直結することがわかります。

「インクルーシブ防災」という視点

本論文の重要な視点として、「インクルーシブ防災」が挙げられます。これは、「誰も取り残さない防災」のことです。

ペットがいるから避難できない?

「ペットがいるから避難所に行けない」「迷惑をかけるから車中泊をする」という選択は、飼い主である人間を危険に晒すことにつながります。これを「被災のイクスクルージョン(排除)」と呼びます。

障害の社会モデルで考える

災害時、普段は問題なく暮らしている飼い主とペットが「要援護者(助けが必要な人)」になってしまうのは、ペットそのものが悪いのではなく、受け入れる環境や仕組みが整っていないことに原因があると考えます(障害の社会モデル)。

つまり、ペット防災は「飼い主のわがまま」ではなく、「飼い主という人間を助けるための地域課題」として捉える必要があります。

私たち飼い主が今すぐできること

論文の分析を踏まえ、飼い主が平時から準備すべきことをまとめました。

自助(自分のことは自分でする)

  • しつけと健康管理:無駄吠えをしない、ケージに慣れさせる、ワクチン接種など。これらは避難所での受け入れられやすさに直結します。実際に、普段からケージ飼育をしていた猫はスムーズに避難できていました。
  • 備蓄:ペットフードやトイレシートなど、自分専用の物資を用意する。

互助(お互いに助け合う)

  • ご近所との関係作り:いざという時、「あの家の犬なら知っているから大丈夫」と思ってもらえる関係性が、避難所でのトラブルを防ぎます。

分散避難先の確保

  • 親戚や知人宅:避難所だけが避難先ではありません。ペットを預けられる場所や、一緒に身を寄せられる親戚宅をリストアップしておきましょう。

対話と準備が命を守る

能登半島地震の事例は、制度やマニュアルだけでなく、現場での「人と人との対話」がペット避難の成否を分けることを示しています。

  • 同行避難:一緒に逃げる(まずは命を守る行動)
  • 同伴避難:同じ敷地内にいる(必ずしも同室ではない)
  • 分散避難:避難所以外の選択肢(車中泊や親戚宅)

この3つを正しく理解し、普段から「うちの子はどこなら避難できるか?」を家族や地域で話し合っておくこと。それが、あなたと大切なペットの命を守る第一歩です。

 

参考文献:令和6年能登半島地震における〈人とペットの3つの避難〉に関する予備的考察:発災初期の能登地方の事例を踏まえて

執筆:equallLIFE編集部

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