【ペット多頭飼育】犬と猫を複数頭・多頭飼育する前に確認するべき注意点

複数頭のペットと暮らすことは、飼い主にとって癒やしや喜びを与えてくれることがありますが、多頭飼育することは様々な困難や問題もあります。今回は、犬と猫を多頭飼育する前に確認するべき注意点を解説します。

多頭飼育する際の注意点

飼育管理が難しくなる

頭数が増えるにつれて管理が複雑になる場合があります。ペットは異なる性格や健康状態を持つため、食事管理やトイレのしつけ、散歩のスケジュール調整など、管理項目が増えていくことを考慮しなければなりません。

経済的負担の増加

ペットフード代や医療費、予防接種や不妊去勢手術、ペットホテルの利用など、多頭になることで出費も当然ながら増えます。
今後10年以上にわたり継続的に費用を負担できるかを検討する必要があります。本当に最後まで面倒を見られるかを改めて考えてみてください。

騒音や衛生面のリスク

多頭飼育によって、鳴き声の問題、マーキングやトイレ周りの衛生維持など、多頭飼育では近隣とのトラブルリスクが高まります。マンションやアパートで飼育している場合、共同住宅の規約を守ることはもちろんのこと、十分な防音対策やこまめな掃除が重要です。

繁殖リスクと頭数増加の可能性

いずれの動物においても、不妊去勢手術を受けさせていない場合には、予期せぬ繁殖によって頭数が増える恐れがあります。予想以上に飼育数が増えてしまうと、経済的負担や飼育管理が一気に厳しくなり、最悪の場合は飼育崩壊へとつながりかねません。

多頭飼育を始める前に確認すべきポイント

家族や周囲との話し合い

多頭飼育は、家族や同居人だけでなく、集合住宅であれば管理組合や近隣住民にも影響を与えます。まずは増やす予定のペットの種類や性格、大きさなどを含め、どの程度の負担が見込まれるかを周囲としっかり話し合いましょう。また、飼い主本人だけでなく家族全体で協力してペットを世話できる体制を整えることが大切です。

住環境やスペースの確保

ペットの大きさや活動量に応じた住環境が必要です。複数の犬の場合、散歩スペースや運動スペースを十分にとる必要があり、猫の場合も頭数に応じた数のトイレや上下運動ができるキャットタワーなどを設置するといった工夫が求められます。住環境が手狭だったり、ペットの種類や体格に合わない住まいでは、ペット同士のストレスやケンカを増やす要因ともなりかねません。

しつけと社会化の重要性

多頭飼育では1頭1頭へのきめ細かなしつけが難しくなることがあります。特に、新しく迎えたペットが子犬・子猫の場合は、適切な社会化期のトレーニングが欠かせません。しつけが行き届いていないと、問題行動が発生した際に対処が難しくなるだけでなく、他のペットや人への迷惑が拡大する可能性があります。

不妊去勢手術と健康管理

ペットを増やすうえで考慮すべき最重要事項のひとつが不妊去勢手術の実施です。意図せず繁殖させてしまい、一気に頭数が増えてしまうと、飼育環境の悪化や金銭的負担の増加を招きます。また、定期的なワクチン接種や健康診断、寄生虫予防などを行い、ペット同士がお互いに病気を移し合わないよう注意が必要です。

ペット同士のケンカ・ストレス

ペットが増えると、個体間の相性やテリトリー意識、上下関係が問題となることがあります。特に新入りペットを迎える際は、先住ペットとの相性を慎重に見極めるため、隔離期間を設けたり、初対面時に落ち着ける環境を整えるなどの工夫が必要です。ペット同士がストレスを感じやすい状況を避け、適切な距離感や休めるスペースを確保してあげましょう。

飼育放棄や飼育崩壊

多頭飼育の失敗例として最も深刻なものが「飼育崩壊」です。飼い主が経済的あるいは身体的理由で世話をしきれなくなり、ペットたちが適切なケアを受けられず、不衛生な環境で増え続けるケースが後を絶ちません。こうした悲劇を防ぐためにも、飼育前の十分な準備と、万が一飼えなくなったときの相談先や譲渡先の確保など、リスク管理を徹底しておくことが重要です。

多頭飼育に係る苦情の状況

環境省は、都道府県・政令指定都市・中核市の125の地方自治体動物愛護管理部局に対して、多頭飼育に係る苦情の状況について調査しました。動物を2頭以上飼育している飼い主に関して、平成30年度に複数の住民から苦情が寄せられた世帯の数について質問したところ、全国で年間2,149件、1自治体あたり平均約20.5件の多頭飼育に係る苦情が存在することが明らかになりました。なお、1世帯に対して苦情が複数寄せられた場合であっても、苦情の原因となっている世帯を1件として算定しています。

苦情のあった世帯数(全体):2,149件
苦情のあった世帯数(都道府県):1,252件
苦情のあった世帯数(政令指定都市):440件
苦情のあった世帯数(中核市):457件

犬猫の不妊去勢に関するメリット・デメリット

ペットを擬人化して、不妊去勢手術を行わない方もいるため、人間とは違うということ、メリットとデメリットを理解する必要があります。

雄(オス)の去勢手術のメリット

・望まない交尾がなくなる。
・精巣の病気や前立腺肥大(犬)のリスクがなくなる。
・性ホルモンに関係する肛門周囲腺腫
(犬)等の病気のリスクが低くなる。
・雌への興味によるストレスが軽くな
る。
・猫では発情期特有の困った行動がなくなる。(大きな鳴き声、マーキング、外に出たがる、けんか等)
・雄同士の競争による攻撃性が低下す
る。
・猫免疫不全症候群等、けんかや交尾で感染する病気のリスクが低くなる。

雌の不妊手術のメリット

・望まない妊娠がなくなる。
・卵巣、子宮の病気のリスクがなくなる。
・性ホルモンに関係する乳腺腫瘍等の病気のリスクが低くなる。
・発情期特有の困った行動がなくなる。
(猫:大きな鳴き声、トイレ以外での排尿、外に出たがる等、犬:出血で部屋を汚す、外に出たがる、飼い主の言うことを聞かない等)

デメリット

・麻酔のリスクがある。(適切な麻酔管理で軽減できる)
・肥満傾向になる。(適切な栄養管理で防げる)
・犬では尿失禁の発生率が上がる。(薬で治療できるが、完治は難しい)
・ストレスと多くの病気が軽減されることにより、健康に長生きできる確率が高くなる。
・社会全体として、不適切な飼育をされている動物や殺処分される動物を減らすことができ、繁殖しないことで、遺伝性疾患の減少にも役立つ。
・発情期のストレスや、発情に関連した問題行動が減少することによって、外出の制約がなくなる。周囲への迷惑も軽減できる。

多頭飼育を行う際の心得

現状を正しく把握する

既に飼っているペットの年齢や性格、健康状態を見極め、新たに迎えるペットとの相性をチェックしましょう。先住ペットが高齢の場合や、慢性的な病気を抱えている場合には、飼い主の負担も増えますので慎重な判断が必要です。

ルールとマナーを守る

鑑札や注射票の装着、ワクチン接種、不妊去勢手術といった基本的な手続きや医療はしっかり行いましょう。犬の場合は法律で狂犬病予防注射が義務付けられているほか、地域によっては頭数を届け出る義務が発生する場合もあります。集合住宅の規約を守ることはもちろん、近隣へ迷惑をかけないよう騒音対策や清掃を徹底してください。

困ったときは相談する

多頭飼育で問題を感じたら、一人で悩まずに専門家や行政、愛護団体などに相談しましょう。適切なアドバイスを受けることで状況が改善する場合も少なくありません。飼育放棄や飼育崩壊は、飼い主とペット双方にとって不幸な結果をもたらします。その前に手を打てるよう、困ったときにすぐに相談できる体制を作っておきましょう。

飼い主としての責任を最後まで全うする

多頭飼育の最も大切な前提は「終生飼育」です。ペットたちは飼い主の元で暮らし続ける以上、自ら環境を選ぶことはできません。年齢を重ねると、病気や認知症を患うこともあります。最後の瞬間まで責任を持ち、愛情を注ぎ続ける覚悟を持った上で多頭飼育に踏み出すことが求められます。

ペットのストレスサイン

犬のストレスサイン

①過剰に吠える、鳴く、鼻を鳴らす
②落ち着かない
③犬や人に攻撃的になる
④自分の尾を追いかけてグルグル回る
⑤手足などを過度に舐めたりかじったりして、毛が抜けてしまう
⑥すぐに逃げたり隠れたりする
⑦家具やケージなどを噛む
⑧食欲不振、あるいは、食欲亢進
⑨下痢

猫のストレスサイン

①不適切な場所での排泄、壁などへの尿スプレー
②狭いところに閉じこもって出てこなくなる
③不適切な場所での爪とぎ行動
④体を過度に舐め、毛が抜けてしまう
⑤グルーミングをしなくなり、毛がバサバサになる
⑥他の猫を執拗に追いかけまわす、追い詰める
⑦食欲不振、元気消失
⑧膀胱炎、便秘

犬の複数頭飼育で守るべきこと

  • 全ての犬の登録、毎年の狂大病予防注射
  • 鑑札、注射票、名札(マイクロチップ)の装着
  • 全ての犬の不妊去勢措置
  • それぞれの犬と接する時間を確保する
  • それぞれの犬にくつろぐ快適な空間を確保する
  • しつけはそれぞれの犬に1対1で行う
  • ご飯は別々に用意して先住犬から与える
  • 大同士の関係を適切に把握し、争いにならないように配慮する
  • 定期的なワクチン接種と健康診断、病気の予防と治療
  • 犬が老齢になったとき介護できる体力と人手
  • 災害時に一緒に避難できる手段がある

猫の複数頭飼育で守るべきこと

  • 必ず室内で飼う
  • 全ての猫の不妊去勢措置と個体識別(名札、マイクロチップなど)
  • それぞれの猫にくつろぐ快適な空間を複数用意する(隠れられる高い場所)
  • 餌は頭数分、別々に用意する
  • トイレは猫の頭数に1を加えた数(場所)を用意する(爪とぎも複数)
  • 定期的なワクチン接種と健康診断、病気の予防と治療
  • 災害時に一緒に避難できる手段がある

まとめ

多頭飼育は、ペット同士の愛らしい関わりやにぎやかな日常を楽しむことができる一方で、経済的・時間的負担や近隣トラブル、飼育崩壊などのリスクが高まるという側面があります。大切なのは安易にペットを迎えるのではなく、飼育できる範囲を冷静に見極め、家族や周囲と協力しながらペットたちが安心して暮らせる環境を整えることです。

飼い主としての責任を果たし、ペットの健康と幸せを最優先に考えることで、多頭飼育ははじめて意味のあるものになります。何よりも大切なのは、ペットへの深い愛情と、正しい知識と準備をもって向き合うことです。

適正飼養についてもあわせてご覧ください

参考:環境省「多頭飼育問題とはどのような問題か」、「もっと飼いたい?犬や猫の複数頭・多頭飼育を始める前に」

執筆:equall編集部

 

公式LINE

おすすめ情報を受け取る

犬用ドッグフード選びにお悩みの方へ!選び方や購入方法を解説します

猫用キャットフード選びにお悩みの方へ!選び方や購入方法を解説します

 あなたにオススメ