ペットツーリズムのリアルな課題と解決策

愛犬と旅行に行きたいけれど、移動中の休憩や食事場所に困って諦めたことはありませんか。実は、多くの飼い主さんが同じ悩みを抱えています。

今回は、論文「ペット・ツーリズムにおける旅ナカ課題と観光地サイドの受容に関する考察」をもとに、現代のペット連れ旅行(犬旅)の実態を読み解きます。

この論文は、千葉県の「小谷流の里 ドギーズアイランド」を訪れた315名の愛犬家へのアンケート調査に基づいています。結論から言うと、ペットツーリズム振興の鍵は、宿泊施設(まくら)ではなく、移動中の食事・休憩(あご・あし)の改善にあることが判明しました。

この記事では、論文データから見える「飼い主の切実な声」と、これからの観光地に求められる「家族としての受容」について解説します。

旅行に行かない理由の第5位は「ペットがいるから」

旅行に行きたくても行けない理由は様々ですが、リクルートの調査によると、「ペットがいる」という理由は全体の8.1%で第5位にランクインしています。

特に犬の飼い主は、猫の飼い主と比較して「一緒に旅行したい」という意向が強く、環境の変化よりも「飼い主に会えないこと」にストレスを感じる犬の特性が影響していると考えられます。そのため、愛犬家にとっての選択肢は「愛犬と連れて旅をする」か「旅をしない」の2択になりがちです。

宿泊施設は増えたが「旅ナカ」が追いついていない

近年、ペットと泊まれる宿は増加しており、宿泊(まくら)に関する環境は整いつつあります。しかし、自宅を出発してから宿に着くまで、そしてチェックアウトしてから帰宅するまでの「旅ナカ」の環境整備については、まだ議論が不足しています。

今回の研究では、まさにこの「旅ナカ」における課題が浮き彫りになりました。

愛犬家の6割が直面する「車内放置NG」の壁

アンケート調査で最も衝撃的だったのは、休憩場所選びの基準です。

回答者の61.3%が、休憩場所を選ぶ際に「クルマにペットだけを残したくないので、ペットを連れて入れる場所かどうか」を最重要視しています。

ドッグランがあるか(23.5%)や、SNS映えするか(2.9%)といった要素よりも、「愛犬と一緒に店内に入れるか」が圧倒的に優先されています。

背景にあるリスク

  • 夏場の車内温度上昇による熱中症リスク
  • 盗難やトラブルへの不安
  • 愛犬の分離不安

飼い主にとって、愛犬を車に残して自分たちだけ食事や休憩をとることは、心理的にも物理的にも非常に高いハードルとなっています。

悲痛な叫び!観光地で愛犬家が経験した「残念な思い」

論文内の自由記述回答からは、観光地での具体的な苦労が見えてきました。特に多かったのは「食事(ランチ)」に関する悩みです。

飲食店での入場拒否とテラス席の限界

多くの飼い主が、入店や入場の制限に苦しんでいます。「ペット不可が多すぎる」「レストランに入れない」といった声が多数寄せられました。

さらに深刻なのが「テラス席ならOK」という条件です。

「真夏でも犬連れはテラスしか入れない」
「暑い日にワンちゃんを涼しい場所に置いて食事できなかった」
「日陰もなく店内可でもない」

このように、猛暑や極寒の中で、飼い主とペットの安全を守れる場所が極端に少ないことが明らかになりました。

衛生面と周囲への配慮

施設側の問題として、ドッグランの清掃不足(糞尿の臭い)や、犬が苦手な人との動線が分かれていないことによるトラブルも挙げられています。

これからの観光地に求められるのは「家族としての受容」

この研究が示唆する解決策は明確です。それは、ペットを単なる動物としてではなく「同行する家族」として受け入れる体制づくりです。

具体的に求められる対策

  • 店内利用の解禁:季節や天候に左右されず、家族全員で食事ができる環境。
  • 明確な情報発示:入り口で迷わせない「ペット可・不可」の分かりやすい表示。
  • エリア分け:動物が苦手な一般客と、ペット連れ客の双方が快適に過ごせるゾーニング。

ペットツーリズムは地域経済の起爆剤になる

本論文の興味深い点は、ペットツーリズムが観光過疎地の救世主になり得るという視点です。

調査地の「小谷流の里 ドギーズアイランド」がある千葉県八街市エリアは、県内の宿泊シェアがわずか0.6%という観光空白地帯でした。しかし、ペット特化型の施設ができたことで、新たな人の流れと経済効果が生まれています。

有名な観光名所がなくても、「愛犬と快適に過ごせる」というだけで、そこは愛犬家にとって最高のデスティネーション(目的地)になります。これは、日本の多くの地域にとって希望のあるデータと言えるでしょう。

飼い主ができること、施設ができること

今回の論文レビューから、犬連れ旅行の満足度を左右するのは「移動中の休憩・食事場所の確保」であることが分かりました。

飼い主の皆様へのアドバイス

  • 旅行計画時は、宿だけでなく「道中のペット可カフェ」や「屋内休憩所」を事前にリサーチする。
  • テイクアウトを活用し、車内(空調管理下)や安全な屋外エリアで食事をする準備をしておく。

観光・飲食事業者様への提言

  • 「テラスのみOK」から一歩進んで、店内の一部エリアを開放することを検討してください。それは、6割以上の愛犬家が求めているサービスであり、確実な集客につながります。

equallLIFEでは、今後も人とペットが共に豊かに暮らせる社会を目指し、アカデミックな知見も交えながら情報発信を続けていきます。


参考文献:ペット・ツーリズムにおける「旅ナカ」課題と観光地サイドの受容に関する考察―千葉県内における「犬旅」のアンケート調査から―

執筆:equallLIFE編集部

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