ベルジアン・シェパードの特徴や性格は?飼い方・毛色・歴史・飼育費用を解説【犬種】

しなやかな脚、引き締まった体、キリッとした立ち耳。牧羊犬らしいワーキングドッグの気質と、家族への強い忠誠心をあわせ持つ犬種がベルジアン・シェパードです。

この記事では、ベルジアン・シェパードの特徴・性格・サイズ・歴史・日本での飼育頭数・年間飼育費用・ケア・お出かけのポイントまでまとめて解説します。

ベルジアン・シェパードとは?

ベルジアン・シェパードは、ベルギー原産の中〜大型の牧羊犬(牧畜犬)です。

  • グローネンダール
  • タービュレン
  • マリノア
  • ラケノア

という 4つのバリエーション に分かれますが、1つの犬種「ベルジアン・シェパード・ドッグ」として扱われています。 ジャパンケネルクラブ(JKC)は、ベルジアン・シェパード・ドッグについて次のように紹介しています。

「ベルギーでは、1800年代の終わり頃、タイプも様々で、被毛が極めて異なる牧羊犬群が存在した。この状況を改善するため、何名かの熱心な愛犬家がグルー プを形成し、Cureghem獣医学校のA・Reul博士から指導を求めた。彼はこの犬種の真の開拓者且つ設立者と目されている人物である。この犬種は1891年から1897年の間に正式に確立された。1891年9月29日、ブリュッセルにベルジアン・シェパード・ドッグ・クラブが設立され た。同年11月15日には、A・Reul博士はCureghem獣医学校に117頭の犬を集めたので調査と繁殖が可能になった。翌年には、実際に繁殖のプ ログラムを開始し、何頭かの種牡を用いて非常に近い血筋同士の交配を行った。1892年4月3日には、ベルジアン・シェパード・ドッグ・クラブにより最初 の詳しいブリード・スタンダードが作成された。3つの被毛のバラエティーを有する1犬種が認められた。しかしながら、その頃言われていたようにベルジア ン・シェパードはまだ一般庶民にしか知られていなかったので、地位を確立することはできなかった。結果として、1901年になるまでベルジアン・シェパードはベルギーKCのスタッド・ブックに登録を許可されなかった。翌年以降、ベルジアン・シェパードの愛好家の間で、タイプを統一させ、欠点を正すという原動力が働き出した。ベルジアン・シェパードのタイプと気質は1910年頃までに確立されたと言える。ベルジアン・シェパード・ドッグの歴史上、認められたいくつかのバラエティーや毛色について、多くの白熱した議論が行われた。一方、形態や気質、作業への 適正については意見の相違が生じたことはない。」
出所:ジャパンケネルクラブ公式HP

世界中で「働く犬」として活躍しており、特にマリノアは軍・警察・国境警備などで採用されることが多い犬種です。

ベルジアン・シェパードの特徴

性格

ベルジアン・シェパードの性格の傾向は次のようにまとめられます。

  • 注意深く、活動的
  • 活力に満ち、常に次の行動に移る用意ができている
  • 番犬としての高い質を備えている
  • 牧羊犬や護衛犬、防衛犬、サービ ス・ドッグに必要とされる質を全て兼ね備えている

また、きちんとトレーニングされた個体とそうでない個体では性格の印象が変わります。

子犬のころから

  • 人、犬、音、場所などへの社会化
  • 基本的な服従訓練(オスワリ・マテ・オイデなど)
  • 咬み抑制・吠えのコントロール

を丁寧に積み重ねることで、頼れるパートナーとしての力を最大限発揮してくれます。

運動量

ベルジアン・シェパードは、日本で一般的な家庭犬の中でもトップクラスの運動量を必要とする犬種です。

  •  朝夕の十分な散歩
  • 週に数回のドッグラン
  • アジリティなどのスポーツ

「散歩だけ」では満足できず、頭と心も使う運動 が必要になります。

運動が不足すると、

  • 破壊行動
  • 過剰な吠え
  • 落ち着きのなさ

などの問題行動につながりやすいため、一緒に体を動かすのが大好きな人向けの犬種と考えるとイメージしやすいです。

サイズ・毛色・体重など

ベルジアン・シェパードの標準的な大きさは、JKCでおおよそ次のように示されています。

  • 体高:オス 約62cm、メス 約58cm
  • 体重:オス 約25〜30kg、メス 約20〜25kg
  • 体型:やや軽めの骨格で、筋肉質・引き締まった体

ベルジアン・シェパードの歴史

ベルジアン・シェパードは、19世紀のベルギーにいた牧羊犬タイプの一群から選抜・固定されてきた犬種です。ドイツ・シェパードなどとルーツを同じくし、当初はベルギー全土で羊や家畜を守るために使われていました。

19世紀末、ベルギーの獣医学者アドルフ・ルールらによって犬種標準化の取り組みが始まり、被毛と毛色の違いから複数のタイプに分類。長い紆余曲折を経て、1950年代に現在の

  • グローネンダール
  • タービュレン
  • マリノア
  • ラケノア

の4バリエーションが公式に確立されました。

第一次・第二次世界大戦では、伝令犬・救護犬・護衛犬として活躍し、その有能さが世界中の軍や警察に知られるきっかけとなりました。特にマリノアは、現在でも多くの国の軍用犬部隊・警察犬部隊で採用されています。

4つのバリエーションと毛色

 
ベルジアン・シェパードは、被毛タイプと毛色の違いで4種類に分かれます。
 
1.グローネンダール(Groenendael)
    • 被毛:長毛、ダブルコート
    • 毛色:ソリッド・ブラック(全身黒)
    • ふさふさの黒いコートが美しい、もっともクラシックなタイプ
2.タービュレン(Tervueren)
    • 被毛:長毛、ダブルコート
    • 毛色:フォーン〜グレイの地にブラックのオーバーレイ+ブラックマスク
    • エレガントで「ショードッグ的」な人気も高い
3.マリノア(Malinois)
    • 被毛:短毛(スムース)、ダブルコート
    • 毛色:フォーン〜マホガニーにブラックオーバーレイ&ブラックマスク
    • 軽快でタフなワーキングラインが多く、軍用犬・警察犬として有名
4.ラケノア(Laekenois)
    • 被毛:粗く硬い長毛(ラフコート)
    • 毛色:フォーン地に控えめなブラックオーバーレイ
    • 4種のなかでもっとも希少で、素朴な雰囲気のタイプ

被毛の長さや質によって、お手入れ頻度や抜け毛の量も多少変わりますが、「どのタイプも換毛期の抜け毛はしっかり出る」と思っておくとよいでしょう。

ベルジアン・シェパードの飼育頭数

日本での純血種登録は、一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が行っています。

ベルジアン・シェパード・ドッグ・タービュレン

年度 飼育頭数 飼育頭数順位

2010年 54頭 76位
2011年 34頭 82位
2012年 43頭 83位
2013年 24頭 89位
2014年 37頭 80位
2015年 26頭 89位
2016年 25頭 92位
2017年 28頭 85位
2018年 20頭 94位
2019年 35頭 85位
2020年 30頭 84位
2021年 10頭 102位
2022年 15頭 102位
2023年 7頭 110位
2024年 19頭 94位


飼育頭数推移

ベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノア

年度 飼育頭数 飼育頭数順位

2010年 28頭 92位
2011年 30頭 87位
2012年 22頭 96位
2013年 31頭 86位
2014年 45頭 76位
2015年 17頭 101位
2016年 42頭 76位
2017年 22頭 92位
2018年 50頭 77位
2019年 16頭 97位
2020年 29頭 85位
2021年 15頭 99位
2022年 37頭 83位
2023年 34頭 85位
2024年 30頭 86位


飼育頭数推移

ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダール

年度 飼育頭数 飼育頭数順位

2010年 35頭 88位
2011年 32頭 84位
2012年 36頭 89位
2013年 22頭 90位
2014年 9頭 111位
2015年 11頭 105位
2016年 11頭 105位
2017年 15頭 100位
2018年 8頭 107位
2019年 17頭 95位
2020年 8頭 107位
2021年 14頭 100位
2022年 6頭 118位
2023年 14頭 97位
2024年 15頭 98位


飼育頭数推移

日本国内ではかなりのマイナー犬種です。
 
そのため、
  • ペットショップでの出会いはほとんど期待できない
  • 多くは専門ブリーダーから迎え入れる
  • 里親募集・保護団体経由の出会いもごく少数
といった状況になっています。

ベルジアン・シェパードの年間飼育費用

中〜大型のアクティブな犬種であるベルジアン・シェパードと暮らす場合、小型犬より一段高い費用を想定しておく必要があります。

目安として、1カ月・1年間の費用例は以下の通りです(あくまで一例です)。

  一か月(単位:円) 一年 (単位: 円)
ドッグフード 5,000 60,000
トイレ用品 1,000 12,000
トリミング 12,000 144,000
ペットホテル   30,000
ペット用品 2,000 24,000
医療費   30,000
合計 20,000 300,000

※医療費にはワクチン、狂犬病予防、フィラリア・ノミダニ予防などの「予防医療のみ」を概算。
※フードのグレード、トリミング頻度、ペットホテル利用、病気・ケガによって大きく増減します。

特に、股関節形成不全などの整形外科疾患や、重度の皮膚病・アレルギーが発生した場合は年間数十万円単位の医療費 になることもあり得ます。ペット保険加入も含めて、ライフプランを検討しておくと安心です。

※算出方法は、コチラをご覧ください。

ベルジアン・シェパードのケア

【毎日】

  • しっかりした散歩・ジョギング・遊び
  • 「マテ」「オイデ」などの基礎トレーニング
  • ニオイ探しゲームや知育玩具でのノーズワーク

【2、3日に一度】

  • 長毛(グローネンダール・タービュレン):ピンブラシ+コームで全身をブラッシングし、もつれ防止
  • 短毛(マリノア):ラバーブラシで抜け毛ケア
  • 粗毛(ラケノア):コームで毛玉チェック&もつれ取り

【月に一度】

  • シャンプー
  • 爪切り
  • 耳掃除
  • 肛門腺しぼり

シャンプーのしすぎは皮膚トラブルの原因になるため、月1回程度を目安に。毛量の多いタイプは、サロンでのプロケアを併用すると管理しやすくなります。

健康面で気をつけたいポイント

文献や各種クラブの推奨によると、ベルジアン・シェパード全体で特に注意したいのは次のような項目です。

  • 股関節・肘関節形成不全などの整形外科疾患
  • てんかん(特にマリノアでは遺伝性てんかんや突発的な攻撃行動との関連も報告あり)
  • 皮膚炎・アレルギー
  • 眼科疾患

骨格と神経系のチェックが重要と言われており、多くの国で、繁殖に際して股関節・肘関節・てんかんの検査が推奨されています。

日本で迎える場合も、可能であれば

  • 親犬の股関節・肘関節検査結果
  • てんかん発症歴の有無

などをブリーダーに確認しておくと安心です。

ベルジアン・シェパードとお出かけする方法

ベルジアン・シェパードは家族と一緒に行動することを強く望む犬種です。十分なしつけと運動管理を前提に、マナーを守れば、さまざまなお出かけを楽しむことができます。

ペットと一緒に行ける施設

  • 広めのドッグラン
  • 山・湖・海辺などのアウトドアスポット
  • ペット同伴可のキャンプ場・グランピング施設
  • ペットフレンドリーなホテル・コテージ

中〜大型で運動量も多いため、「ただ街をウロウロする」よりも、自然の中でのアクティビティ と相性が良い犬種です。

施設ごとに、

  • 同伴可能エリア
  • ノーリード可否
  • 必要な予防接種証明書
  • 頭数制限
  • サイズ制限

などのルールが異なるため、出発前に公式サイトやSNSで確認しておきましょう。

車移動・タクシーの注意点

  • クレートもしくは大きめのドッグシートベルトでしっかり固定
  • 夏場は車内温度に要注意(短時間の車内放置もNG)
  • 長距離移動では2時間おき程度に休憩&水分補給
  • 車から飛び出さないよう、ドア開閉時はリードを装着してから

タクシー利用時は「大型犬OK」の会社やペットタクシーを事前予約しておくと安心です。基本は、車移動となるため、車がない場合は、飼育のハードルが高くなるでしょう。

ペットとタクシーについて>>

電車移動の注意点

日本の鉄道会社では、多くの場合

  • 「顔や体が完全に入るクレート・キャリーに収納」
  • 「他の乗客の迷惑にならないこと」

が条件となっています。
しかし、中〜大型のベルジアン・シェパードを公共交通機関で移動させるのは現実的に難しい場面も多いため、車移動が基本になると考えておくとよいでしょう。

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バス移動の注意点

路線バスも原則として「小型のキャリーに入るサイズ」のみ可とされるケースがほとんどで、ベルジアン・シェパードのような中〜大型犬は利用できない場合が多いです。都市部の一部では「大型犬OKの観光バス」などもありますが、事前確認が必須です。

ペットとバスについて>>

飛行機移動の注意点

航空会社によって、

  • 受け入れ可能な犬種・体重
  • 機内持ち込み/貨物室輸送
  • 夏季・冬季の受け入れ制限

などの規定が異なります。大型クレートでの貨物室輸送になるケースが多く、ストレスも大きいので、

  1. かかりつけ獣医師による健康チェック
  2. 航空会社の最新ルール確認
  3. クレート慣れのトレーニング
を行ったうえで、慎重に検討しましょう。

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お出かけ先での注意点

  • 必ずリードをつけ、飼い主のそばでコントロールできる状態に
  • 他犬・他人が苦手な個体は距離をとり、無理に触らせない
  • 排泄マナー(処理・マーキング防止)は飼い主の責任
  • 迷子対策として、鑑札・迷子札・マイクロチップ登録を

大型に分類されることも多いベルジアン・シェパードは、見た目だけで怖がられる ケースもあります。 普段からのしつけとともに、「人が少ない時間帯や場所を選ぶ」「声かけしてから近づいてもらう」などの配慮も大切です。

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ペットと楽しめるイベント情報

ベルジアン・シェパードのようなワーキングドッグは、

  • ドッグスポーツ大会(アジリティ・フライボール・ディスクなど)
  • 服従訓練競技会
  • 牧羊犬トライアル
  • 大規模ペットイベント(グッズ・フード・しつけ相談など)

との相性が抜群です。

イベントを楽しむポイントは、

  • 会場の広さや混雑具合
  • 競技会の場合はルールや参加レベル
  • ペット同伴ルール(クレート必須、ヒート中の参加不可など)

を事前にチェックしておくこと。

特にベルジアン・シェパードは「刺激(音・人・犬)が多すぎる環境」で興奮しやすい個体もいるため、最初は短時間の見学から慣らしていくとよいでしょう。

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イベントのマナーについてはこちらの記事をご覧ください>>

ベルジアン・シェパードのまとめ

「毎日しっかり運動したい」「ドッグスポーツやトレーニングを本気で楽しみたい」というアクティブな飼い主さんにとっては、これ以上ないパートナーになってくれる犬種です。一方で、運動時間やしつけに時間を割けない環境では、お互いにストレスを抱えやすくなるため、迎える前にライフスタイルとの相性をじっくり検討することが大切です。






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執筆:equall編集部

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