動物愛護と動物保護の意味を理解していますか?犬猫殺処分数の推移と動向

ペットを愛する一人として、動物愛護と動物保護の意味について理解していますか?この二つの言葉はよく耳にするものの、実はその意味するところには違いがあります。今回は、ペット飼育者の皆さんに向けて、これらの違いについて詳しく解説します。

動物愛護とは

最近は、動物愛護という言葉をよく耳にすると思います。
動物愛護とは何でしょうか。これは動物が持つ生命を尊重し、苦痛から解放され、幸せに生きる権利を保障しようとする考え方です。

動物愛護の定義

動物の愛護とは、動物の取扱いに、その生命に対する感謝と敬の念を反映させること。「自然資源のWISE USE(賢明・良識的な利用)」の一概念

動物愛護の目的

その目的は、国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資すること

特徴

  • 動物の愛護の基本的考え方は、国民全体の総意により形成されているもの。
  • 動物に対して人が抱く意識や感情は、絶対的・固定的なものではなく、人・地域・時代により異なるもの。このため、動物の愛護の基本的考え方は、多様性に富んだ流動的なもの。

飼い主は、ペットを飼育する上で、日々のケアはもちろん、健康管理、適切な食事、そして何よりも愛情を持って接することが求められます。
動物愛護の精神は、ペットと人間との関係だけにとどまらず、すべての動物に対する態度に反映されるべきです。

出典:
環境省「動物愛護管理基本指針(仮称)」の基本的考え方(案)
動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針

動物保護とは

一方で、動物保護とは、動物を虐待や危害から守るための法律や規制を含む概念です。

動物保護の基本的な考え方

1.動物保護の基本は、人間においてその生命が大切なように他の動物の生命を尊重するということにある。動物はすべて他の生物の生命を犠牲にしなければ生きていけないものであるが、犠牲にすることを当然のこととして犠牲となる動物の生命を軽視することは誤りであり、むしろその動物の生命を貴重なものとして尊重することが肝要である。

2.動物の保護には、その生命を尊重する理念を確立することにあわせて、動物が人の生命、身体及び財産を侵害することなく、人間と動物が調和のとれた存在となることが重要である。したがって動物の飼養及び保管に当たっては、人間生活にとっての必要性、人間生活への影響についても十分な配慮をしなければならない。

3.動物愛護の精神の涵養は、動物を愛護し、その虐待を防止し、これを適正に飼養及び保管するためのみでなく、人の生命を尊重し、友愛と平和の情操を高揚する上にも極めて大切なものである。動物愛護に関する教育・啓蒙に際しては、このことを常に念頭におき、広く周知させるよう努めるべきである。

これには、野生動物の保護も含まれており、動物保護の背景には、生態系のバランスを保ち、絶滅の危機に瀕している種を守るという目的もあります。

動物虐待問題の現状を解説!法律の役割や課題と対策

動物の保護及び管理に関する法律の運用等について

1.動物に関する人の感情は、地域の慣習、生活環境等により、まことにさまざまであり、行政を進めるに当たっては、これらの事情をふまえて行うことが大切である。
また、動物保護行政は、国民の理解を深めることによって円滑に進められるものであり、この意味において、地方公共団体の行う動物保護に関する行政や動物関係団体の活動は極めて重要である。

2.法律は、動物の保護及び管理に関する基本原則、人の理下にある動物の飼養及び保管に関する措置並びに動物の虐待防止等について定めているが、都道府県等の犬及びねこの引取りに関する規定のほかは動物の保護に関する基本的な在り方を示すにとどまっている部分が多い。したがって同法の施行に当たっては、今後更に動物保護に関する具体的な指針を示していくことが必要である。

3.畜産動物のように現に品種改良、飼育・管理、疾病予防、流通等広い分野にわたって法令に基づく対策の講じられている動物については、それぞれの分野においてこの法律の基本原則にのっとった対策が進められるべきで、この法律の適用に当たってはそれらの対策の推移をみつつ慎重を期することが望ましい。

4.動物に闘技をさせることについては、法律に規定がないためその行為を動物の虐待防止の観点から禁止すべきであるかどうかしばしば問題が生じている。これらの闘技のなかには、古くからの伝統行事であったり、永年にわたり社会的に容認されてきたものもあり、その取扱いについてはなお慎重な検討を要するが、関係者に真に動物を保護し、その生命を尊重する姿勢が欠け、一般の人が残酷と思うような闘技も時に行われている。動物保護の基本原則にのっとり、これらの誤った行為が行われなくなるよう一層の啓発・指導が必要である。

5.法律の定める動物の適正な飼養及び保管は、動物の飼養者がその責任を自覚し、責任ある行動をとることによって初めて全うされるものであり、飼養者に対する指導を強化する必要がある。また、不適正な飼養及び保管に原因する動物による人身事故の防止については、その徹底をさなければならない。特に危険な動物による危書防止対策を更に強化する必要がある。

6.やむを得ず動物を処分するとか繁殖制限の措置をするといった法律に定める動物管理の方法をとることはなじみ難いものかもしれないが、今日の社会生活においてはこれらの措置は動物の適正な飼養にとって不可欠のものであるので、動物飼養の考え方の転換を促進することが必要である。

7.法律の施行に関する事務の多くは地方公共団体の所掌するところとなっており、その事務を円滑に進めるためには、飼養者負担を含めた財政の充実、業務執行体制の確立等の一層の推進を図ることが必要である。
また、動物保護管理行政を進めるに当たっては、この行政の性質にかんがみ、広<住民各層に動物保護管理の基本理念を深めるように努めるとともに、動物を飼養している者の積極的な協力を得てその展開を図っていくことが肝要である。

出典:
環境省「動物愛護管理基本指針(仮称)」の基本的考え方(案)
動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針

ペットについて学ぶことが大切

ペット飼育者の立場からすると、この二つの概念は密接に関連しています。
私たちが動物愛護をすることは、動物保護の一環とも言えます。
また、必要に応じて行動を起こすことが挙げられます。例えば、動物保護活動への支援や、動物保護団体への寄付などがあります。

最近では、「動物愛護」という言葉が一人歩きして、企業のPRに活用されており、されって本当に動物のためにやっているの?と疑問に感じる場面も増えています。

しかし飼い主に知識がない場合は、善悪の判別は難しくなってしまいますので、ペットの飼い主として正しい判断ができるようにペットについて学ぶことが大切です。

動物愛護週間

動物愛護管理法では、国民の間に広く動物の愛護と適正な飼養についての理解と関心を深めていただくため、9月20日から26日を動物愛護週間と定めています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください

ペットの殺処分数

環境省が統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」を毎年発表しています。

殺処分数は減少しているものの、猫の処分数は犬の約5倍であり、特に猫の殺処分に課題がある事が分かります。

殺処分数の推移

年度
引取り数
処分数
返還・譲渡数 殺処分数
平成16年度 418,413 29,323 394,799
平成17年度 392,232 28,915 365,301
平成18年度 374,160 33,369 341,063
平成19年度 336,349 36,121 299,316
平成20年度 315,107 41,085 276,212
平成21年度 271,592 43,565 229,832
平成22年度 249,474 45,340 204,693
平成23年度 221,000 46,962 174,742
平成24年度 209,388 48,127 161,847
平成25年度 176,295 48,412 128,241
平成26年度 151,095 50,217 101,338
平成27年度 136,724 52,674 82,902
平成28年度 113,799 57,386 55,998
平成29年度 100,648 56,922 43,216
平成30年度 91,939 53,666 38,444
令和元年度 85,903 53,062 32,742
令和2年度 72,433 49,584 23,764
令和3年度 58,907 44,630 14,457
令和4年度 52,793 40,129 11,906

犬の殺処分数の推移

年度
引取り数
処分数
返還・譲渡数 殺処分数
平成16年度 181,167 25,297 155,870
平成17年度 163,578 24,979 138,599
平成18年度 142,110 28,942 112,690
平成19年度 129,937 29,942 98,556
平成20年度 113,488 32,774 82,464
平成21年度 93,807 32,944 64,061
平成22年度 85,166 33,464 51,964
平成23年度 77,805 34,282 43,606
平成24年度 71,643 33,269 38,447
平成25年度 60,811 32,092 28,570
平成26年度 53,173 31,625 21,593
平成27年度 46,649 29,637 15,811
平成28年度 41,175 30,500 10,424
平成29年度 38,511 29,955 8,362
平成30年度 35,535 28,032 7,687
令和元年度 32,561 27,126 5,635
令和2年度 27,635 24,199 4,059
令和3年度 24,102 21,518 2,739
令和4年度 22,392 19,658 2,434

猫の殺処分数の推移

年度
引取り数
処分数
返還・譲渡数 殺処分数
平成16年度 237,246 4,026 238,929
平成17年度 228,654 3,936 226,702
平成18年度 232,050 4,427 228,373
平成19年度 206,412 6,179 200,760
平成20年度 201,619 8,311 193,748
平成21年度 177,785 10,621 165,771
平成22年度 164,308 11,876 152,729
平成23年度 143,195 12,680 131,136
平成24年度 137,745 14,858 123,400
平成25年度 115,484 16,320 99,671
平成26年度 97,922 18,592 79,745
平成27年度 90,075 23,037 67,091
平成28年度 72,624 26,886 45,574
平成29年度 62,137 26,967 34,854
平成30年度 56,404 25,634 30,757
令和元年度 53,342 25,936 27,107
令和2年度 44,798 25,385 19,705
令和3年度 34,805 23,112 11,718
令和4年度 30,401 20,471 9,472

詳しくはこちらの記事をご覧ください

まとめ

動物愛護、動物保護は、私たち人間が動物と共存する上で非常に重要な概念です。ペットを飼うことは、その小さな命を預かるという大きな責任を伴います。

ペット飼育者の皆さんが動物愛護と動物保護の意味をより深く理解し、日々の行動に反映させるきっかけになれば幸いです。動物たちとの幸せな共生のために、一緒に学び、行動していきましょう。

執筆:equall編集部

 

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