子どもの心に動物が与える影響

動物との触れ合いが子どもに良い影響を与えるという話はよく耳にします。しかし、実際に子どもの心や体の中でどのような変化が起きているのかを科学的に検証したデータは意外と少ないものです。

今回は、論文「動物との触れ合いが幼児期後期の子どもに及ぼす心理的効果」をもとに、動物が子どもに与える本当の影響について解説します。

動物との触れ合いは子どもの「肯定的な行動」を強く引き出す

まず、この研究で判明した最も重要なポイントを整理します。

  • 行動面では「愛着」や「受容」といった肯定的な反応が圧倒的に多い
  • 「攻撃」などのネガティブな行動は一切見られなかった
  • 生理的なストレス値(リラックス度)は必ずしも下がらず、むしろ上がる子もいた

つまり、動物との触れ合いは単に「静かに癒やされる」だけでなく、好奇心や興奮を伴う「能動的な喜び」である可能性が高いということです。

4歳から6歳の子どもとウサギの触れ合い実験

この研究は、幼児期後期(4歳から6歳)の子ども12名を対象に行われました。

実施内容

  • 動物に対する印象を事前にアンケート調査
  • ウサギと自由に触れ合う様子をビデオ撮影し行動を分析
  • 触れ合いの前後に「唾液アミラーゼ活性」を測定しストレス度を数値化

唾液アミラーゼ活性とは、ストレスを感じると上昇する酵素の一種です。通常、リラックスすると下がり、ストレスや緊張状態にあると上がるとされています。

行動と数値のギャップが示す「子どもの心理」

この研究の面白い点は、目に見える「行動」と、体の反応である「数値」に違いが見られたことです。

3割以上が「触る」行動に費やされた

ビデオ分析の結果、子どもたちの行動は非常にポジティブなものでした。

  • 愛着行動:26.32%から75.00%(個人差あり)
  • 受容行動:11.54%から60.00%
  • 攻撃行動:0%

特に多かったのが「愛着」に分類される行動です。その中でも「触る」という行動が全体の約30%を占めました。子どもたちは見るだけでなく、実際に触れることで動物の温かさや柔らかさを感じ、そこから安心感や親しみを得ていることがわかります。

リラックスではなく「ワクワク」している?

一方で、リラックスの指標となる唾液アミラーゼ活性の値には、統計的な有意差(明らかな変化)が見られませんでした。

  • 値が下がった子(リラックスした):4名
  • 値が上がった子(興奮・緊張した):8名

一般的にアニマルセラピーは「癒やし=数値の低下」を期待されます。しかし、今回の結果では半数以上の子どもで数値が上昇しました。

これは決して「動物が嫌いだった」わけではありません。遠足という非日常的なイベントや、動物に触れるという体験に対して、子どもたちの精神が高揚し、良い意味での「興奮(ワクワク感)」が生じたためと考えられます。子どもにとっての動物との触れ合いは、静かなリラックスタイムというよりは、好奇心を刺激される楽しい活動なのです。

ペットを飼っている子と飼っていない子の「印象」の違い

研究では、自宅でペットを飼っているかどうかが、動物への印象にどう影響するかも調査しています。

ペット飼育ありの子どもの特徴

ペットを飼っている子どもは、そうでない子どもに比べて、動物に対してよりポジティブなイメージを持っていました。特に以下の項目で統計的に明らかな差が出ています。

  • 親しみやすい
  • 安心する
  • 攻撃的ではない
  • 臭くない
  • きれい
  • 柔らかい

日頃からペットの世話をしたり遊んだりしている経験が、動物全般への信頼感や「汚くない、怖くない」という認識につながっていると言えます。

ペット飼育なしの子どもも好意的

もちろん、ペットを飼っていない子どもたちも、全体的には「優しい」「触れてみたい」といった肯定的な印象を持っていました。テレビや絵本などを通じて、間接的に動物への良いイメージが育まれていると考えられます。

親が知っておくべき動物との関わり方

今回の論文レビューから、以下のことが言えます。

子どもを動物と遊ばせるメリット

  • 「愛着」の形成:触る、撫でるという行動を通じて、他者を大切にする気持ちが育まれる
  • 好奇心の刺激:静かに癒やされるだけでなく、知的な刺激やワクワクする感情(良い興奮)が得られる
  • 五感への刺激:視覚だけでなく、触覚(温かさ、柔らかさ)を通じた体験が情緒を安定させる

親へのアドバイス

子どもが動物と遊んで興奮してはしゃいでいても、それは「ストレス」ではなく「喜び」の表現である場合が多いです。無理に落ち着かせる必要はありません。「優しく触ろうね」と声をかけつつ、子どもが自発的に「触りたい」「関わりたい」と感じる気持ちを尊重してあげましょう。

また、自宅でペットを飼えなくても、動物園のふれあいコーナーなどで実際に「触れる」機会を作ることは、子どもの情緒発達にとって非常に意味のある体験になります。

 

参考文献:動物との触れ合いが幼児期後期の子どもに及ぼす心理的効果

執筆:equallLIFE編集部

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