猫動画で脳波はどう変わる?動物が人に与える癒やし効果と飼育経験の関係

私たちは日常的に「動物の動画を見ると癒やされる」と感じることがありますが、それは科学的にどのような根拠があるのでしょうか。また、誰にでも同じ効果があるのでしょうか。

今回は、論文「動物が人に及ぼす効果の検証 ―ペット動画視聴による脳波電位の影響―」をもとに、動物動画が私たちの脳に与える影響と、その効果を最大限に引き出すための条件について、解説します。

  • 猫の飼育経験が長い人ほど、動画視聴中にリラックスを示す「α(アルファ)波」が増加した
  • 動物を飼ったことがない人は、逆に緊張や警戒を示す「β(ベータ)波」が増加する傾向が見られた
  • アニマルセラピーや動画による癒やし活用には、個人の「好み」と「経験」の事前の把握が不可欠である

なぜ今、動物による癒やし効果が検証されているのか

近年、不登校児童や生徒の増加が社会問題となっており、その解決策の一つとして「動物介在活動(AAA)」が注目されています。

動物介在活動とは、動物とのふれあいを通じて精神的な安定や身体的なリハビリテーション効果を促す活動のことです。先行研究では、家族との会話が途絶えた不登校の生徒が、ペットの犬や猫を「安全地帯(心の拠り所)」とし、それをきっかけにカウンセラーや家族との関係を再構築できた事例が報告されています。

しかし、実際に動物が人の生理機能(脳波など)にどのような影響を与えているのか、また「動物との関わり経験」がその効果にどう影響するのかについては、まだ解明されていない部分が多くあります。本研究は、客観的な指標である「脳波」を用いて、その効果を検証したものです。

猫の動画を見たときの脳波を測定

この研究では、大学生33名へのアンケート調査を行い、その中から以下の3つのグループ(各2名、計6名)を抽出して脳波測定実験を行いました。

  • A群:猫の飼育経験が10年以上(愛着が深い)
  • B群:猫の飼育経験が10年未満
  • C群:猫を飼ったことがない

実験の手順

  1. リラックスした状態で座る
  2. 基準となる脳波を1分間測定(開眼状態)
  3. 猫の動画を5分間視聴
  4. 視聴後の脳波を1分間測定
  5. 主観的な気分に関するアンケートに回答

測定した脳波の指標

  • α(アルファ)波:リラックスしている時や、興味を示している時に出る脳波
  • β(ベータ)波:緊張している時や、集中・覚醒している時に出る脳波

飼育経験の有無で脳の反応が真逆になる

実験の結果、飼育経験のあるグループ(A・B群)と、経験のないグループ(C群)の間には、決定的な違いが見られました。

1. 飼育経験者は「リラックス」した

猫の飼育経験が長いA群およびB群は、動画視聴中にα波(リラックス)が高く維持され、β波(緊張)が低い数値を示しました。特に飼育歴10年以上のA群は、基準の段階からα波が高く、動画を見ることでさらに安定した心理状態になったことが推察されます。事後のアンケートでも「緊張が和らいだ」「癒やされた」という回答が得られました。

2. 飼育未経験者は「緊張」または「無関心」だった

一方で、猫を飼ったことがないC群の結果は対照的でした。動画視聴中にリラックスを示すα波が低くなり、逆に緊張や警戒を示すβ2波が高くなる傾向が見られました。アンケート結果でも、C群からは「気分の変化はなかった」との回答が得られており、癒やし効果は確認されませんでした。

この結果からわかること

「動物動画=誰でも癒やされる」わけではありません。日常的に動物と触れ合い、愛着を持っている人にとっては、動画を見るだけで脳がリラックスモードに入ります。しかし、接点がない人にとっては、単なる映像刺激に過ぎず、場合によっては「何をどう見ればいいのかわからない」という無意識のストレス(緊張)を生む可能性があることが示唆されました。

アニマルセラピーや日常への応用

この研究結果は、私たちが日常生活でストレスケアを行う際や、教育・医療現場で動物を活用する際に重要な視点を与えてくれます。

不登校支援や高齢者ケアへの活用

論文では、不登校の子供が引きこもりから脱却するためのきっかけとして、ペットの存在意義が高い場合、動物が「家族関係の再構築」に重要な役割を果たすと考察されています。重要なのは、対象者がその動物に対して「好意」や「経験」を持っているかどうかです。

例えば、犬派の人に猫の動画を見せたり、動物が苦手な人に無理に触れ合いを勧めたりしても、逆効果(ストレス)になる可能性があります。

自分に合った「癒やし」の見つけ方

  • 自分が「可愛い」「愛おしい」と心から思える対象(動物)を見つけることが第一歩です。
  • 過去に飼育経験がある動物の動画は、脳をリラックスさせる即効性のあるツールになり得ます。
  • 現在ペットを飼えない環境(マンション等)にいる人でも、過去に飼っていた種類の動物動画を見ることで、擬似的な接触体験による精神安定効果が期待できます。

まとめ

本論文の検証により、動物動画が人に与える効果には「個人差」があり、その鍵を握るのが「飼育経験」と「愛着」であることがわかりました。

  • 飼育経験者は、その動物の動画を見るだけで脳波がリラックス状態になる。
  • 飼育未経験者の場合、動画を見てもリラックス効果は得られにくく、緊張する場合もある。
  • 不登校支援やセラピーでは、対象者の「好きな動物」を事前に把握することが成功の鍵。
  • ペットを飼っていなくても、過去に馴染みのある動物の動画を見ることは心のケアに有効。

「動物は癒やしになる」という一般論を鵜呑みにせず、自分自身やケアしたい相手が「どの動物に愛着を持っているか」を知ることから始めてみましょう。それが、科学的に正しい癒やしの近道です。

 

参考文献:動物が人に及ぼす効果の検証 ―ペット動画視聴による脳波電位の影響―

執筆:equallLIFE編集部

 

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