犬や猫を「ペット」ではなく「家族の一員」と呼ぶことが当たり前になった現代。なぜ私たちはこれほどまでに動物との絆を求めるのでしょうか。
今回は、論文『ペットの家族化の進展とその帰結(2022)』をの調査データから見えてきた、現代日本人の「孤独」と「癒やし」、そして「人間関係よりも心地よいペットとの関係」について解説します。
- ペットが「家族」と定義される社会学的背景
- 飼い主の約半数がペットと同じ布団で寝ている事実
- 夫婦関係に不満がある人ほどペットに癒やしを求める傾向
- ペットが独身者の孤立を防ぐセーフティーネットである理由
目次
ペットの家族化とは|主観的な「家族」への変化
かつてペットは、番犬やねずみ捕りといった「役割」を持つ家畜に近い存在でした。しかし現在では、多くの人がペットを「代替不可能な存在」とし、その幸福に責任を持ち、親密な感情を抱いています。これを社会学では「ペットの家族化」と呼びます。
研究によると、この背景には大きく2つの社会的トレンドがあります。
1. 家族形成の困難(未婚・離婚の増加)
1990年代以降、未婚率や離婚率が上昇し、標準的な核家族(夫婦と子供)を維持することが難しくなりました。独身者や子供のいない夫婦が、親密な関係の対象としてペットを選ぶケースが増えています。
2. 親密性の変容(純粋な関係性の希求)
現代人は、家制度や役割(「妻だから」「夫だから」)に縛られた関係よりも、純粋に気持ちが通じ合う関係(純粋な関係性)を求めるようになっています。人間同士では利害や役割が邪魔をすることがありますが、ペットとは「無条件の愛」を築きやすいため、理想的な親密さの対象として選ばれているのです。
データで見る飼育のリアルなお金・室内飼い・睡眠
論文内の調査(2022年実施・全国2,225名対象)からは、ペットが完全に生活の中心に入り込んでいる実態が浮き彫りになりました。
飼育費用と環境の変化
犬の飼い主の多くは月額5,000円から1万円以上を支出しており、猫の飼い主もそれに次ぐ費用をかけています。
特筆すべきは「室内飼育」の定着です。猫の8割以上が完全室内飼育であり、犬も「外飼い」は過去のものとなりつつあります。家の中で常に一緒に過ごすことが、家族としての密度を高めています。
衝撃の「添い寝」率
ペットとの親密さを最も象徴するのが「就寝スタイル」です。調査によると、犬猫の飼い主の約5割が日常的にペットと同じ布団(ベッド)で寝ています。
- ほぼ毎日一緒に寝る:35.5%
- 数日に1回程度:10.7%
これは、別の調査にある「夫婦で同じ布団で寝る割合(約3割)」を上回る数字です。多くの飼い主にとって、ペットは配偶者以上に肌を接して眠るパートナーとなっているのです。
人間よりもペット?浮き彫りになる「親密性」の逆転
この論文で最も興味深い点は、人間関係とペット関係の比較データです。「一緒にいて一番落ち着く」「癒やされる」対象として、人間ではなくペットを選ぶ人が決して少なくありません。
夫婦関係の満足度との関連
夫婦関係に「満足している人」と「不満な人」を比較すると、明らかな傾向が見られました。
- 夫婦関係に不満がある人:癒やしの対象としてペットを選ぶ割合が急増する。
- 独身者(特に女性):親密な関係の相手としてペットへの依存度が高い。
例えば、「一緒にいて一番落ち着く相手」という質問に対し、一人暮らし女性の63.6%、男性の51.5%がペットを挙げています。また、配偶者がいる女性でも、夫婦仲に不満がある層では、ペットが心のよりどころになっている実態が確認されました。
なぜペットの方が「上」になるのか
人間関係には、どうしても「気遣い」や「見返り」といった計算が入ります。しかし、ペットとの関係は言葉を介さない非言語コミュニケーションであり、裏切られることがありません。
「自分を無条件に受け入れてくれる」「話を聞いてくれる(ように感じる)」という体験が、複雑な現代社会において、人間以上の癒やしを提供していると考えられます。
ペットが救う「孤独」社会的な意義
「ペットを家族扱いするのはおかしい」という意見もかつてはありました。しかし、結論として、ペットの家族化が現代社会において重要な「福祉的機能」を果たしていると指摘しています。
未婚化や高齢化が進む日本において、家族を持たない、あるいは家族と疎遠な人々が増えています。そうした人々にとって、ペットは孤独や社会的孤立を防ぐ防波堤(セーフティーネット)となっています。
「ペットがいなければ誰とも親密な関わりを持てなかったかもしれない」という人々に対し、ペットは生きる張り合いや精神的な安定を与えているのです。
ペットは「代わりの家族」以上の存在へ
ペットの家族化の現状を解説しました。
重要なポイント
- ペットの家族化は「家族形成の困難」と「親密性の変容」が要因
- 犬猫飼い主の約半数が同じ布団で寝ている(配偶者以上の密着度)
- 夫婦関係に不満がある人や独身者にとって、ペットは最大の癒やし
- ペットは現代人の孤独を防ぐ重要なパートナーである
「たかが動物」という価値観は、もはや過去のものです。人間関係が複雑化し、個人の孤立が懸念される現代において、言葉を話さずとも寄り添ってくれるペットの存在は、私たちが人間らしく生きるために不可欠な「家族」そのものと言えるでしょう。
参考文献:ペットの家族化の進展とその帰結
執筆:equallLIFE編集部
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