2025年4月、アメリカのドナルド・トランプ大統領による貿易政策が世界経済に大きな波紋を広げています。
輸入品に対する一律の関税に加え、中国や欧州連合(EU)、日本などには追加関税を課すという大幅な税率引き上げは、「貿易戦争」とも呼ばれる深刻な事態を招きかねないと多くの専門家が指摘しています。
こうした「トランプ関税」は、ペットフードやペット用品の価格にも影響を及ぼす可能性があり、犬や猫を飼育する人々にとって見過ごせない問題です。本記事では、この関税の概要と仕組み、そしてペットオーナーがどのような対策を取ればよいのかを詳しく解説します。
目次
トランプによる関税政策とは
トランプ大統領は以前から、「アメリカ国内産業の保護」を掲げて関税引き上げを公約してきました。米政府の発表によると、今回の措置ではすべての輸入品に最低10%の基本関税が適用され、さらに中国には34%、EUには20%、日本には24%など、国や地域によって追加的な上乗せ関税がかけられるとされています。
関税の発表を行った後、中国がすぐに報復措置をとり、米国さらに関税を引き上げ、104%の関税になるとしています。
関税政策は第二次世界大戦後に形成された国際貿易システムのあり方を根本的に変えかねず、世界中の企業・消費者に大きな衝撃を与えています。特に米国との貿易額が多い国々にとっては、大幅な税率上昇が国内経済に打撃をもたらすと同時に、消費財の値段が上昇することで生活者の負担も増すという懸念があります。
関税の仕組み
関税とは、外国からの輸入品に対して国が課す税金のことです。輸入品の分類や価格、原産地などに基づいて税率が細かく決められ、指定されたタイミングで関税を納付しなければなりません。 たとえば、「ペットフード」に分類される商品が海外から輸入される場合、輸入価格に一定の税率を乗じて関税が計算されます。さらに、トランプ政権下のアメリカでは、この基本関税に追加して国別・品目別にさらに上乗せされた関税が課されるケースがあるため、結果としてコストが大きく膨れ上がることにつながります。
関税の定義
関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。
関税率の種類
日本国憲法第84条は租税法律主義を定めています。これは、租税の種類、納税者、税率など租税に関する重要事項は法律又は法律の条件で定めなければならないということです。従って、関税率は国会の議決を経た法律に基づいて設定されますが、国会の承認を受けて成立した条約に基づいて設定される場合もあります。
法律に基づいて定められている税率
法律に基づいて定められている税率を国定税率といいます。わが国では、「関税定率法」と「関税暫定措置法」という二つの法律によって国定税率が定められています。
条約に基づいて定められている税率
WTO協定上、WTO加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束(譲許)している税率を協定税率(WTO譲許税率とも呼ばれる。)といい、その税率が国定税率より低い場合、WTO全加盟国・地域からの産品に対し等しく適用されます。
税関の役割
税関では以下の3つの大きな使命のもと、国内関係機関や関係業界、さらには各国の税関や国際機関などと連携・協力しながら、適正な税関行政の運営に取り組んでいます。
1.「安全・安心な社会の実現」
銃器・不正薬物等の密輸阻止を最重要課題とするとともに、我が国におけるテロ行為等を未然に防止することにより「世界一安全な国、日本」を築く。
2.「適正かつ公平な関税等の徴収」
国税収入の約1 割相当を徴収する歳入官庁として、適正かつ公平に関税等を徴収する。
3.「貿易の円滑化」
国際物流におけるセキュリティを確保しつつ、通関手続を一層迅速化する。
日本の税関も公式サイト(税関:関税の仕組み)で関税の計算方法や申告手続きの流れを紹介しているので、興味のある方は確認してみると理解が深まるでしょう。
ペットフード・用品への影響
こうした米国の関税政策は具体的にペットフードやペット用品にどのような影響をもたらすのでしょうか。
輸入コストの上昇
ペットフードや猫砂、ペット用のおもちゃなどの多くは海外で生産された後、日本に出荷されています。今回のように関税が大幅に引き上げられると、企業側の輸入コストが増加し、それが小売価格に転嫁される可能性が高まります。特に原産国が関税の対象となっている場合、値上げ幅が大きくなる恐れがあります。
メーカーの生産拠点の見直し
米国市場への輸出を重視しているメーカーは、関税回避のために生産拠点を移すなどの対策を急ぐと考えられます。しかし、新たな拠点への投資やサプライチェーンの再構築には時間とコストがかかるため、短期的には商品の値上がりや供給の不安定化を招く懸念があります。
消費者へのコスト転嫁
ペットフードや用品はペットの健康や快適さを保つために欠かせません。飼い主が購入を控えにくい生活必需品に近い側面があるため、メーカーや販売業者が値上げ分を消費者に転嫁しやすいと考えられます。こうした事情から、犬や猫を飼う家庭の家計に追加負担が生じる可能性は高いでしょう。
飼い主がとるべき対応
関税が引き上げられて値段が上がるとされるペットフードや用品ですが、飼い主としては愛犬・愛猫の生活を守るために、できるだけ早めに対策を講じることが大切です。
国内メーカーや代替商品の検討
関税の対象となりにくい国内生産のペットフードや用品に目を向けるのも一つの選択肢です。また、海外製品でも輸入元が関税率の低い国である場合、値上げ幅が抑えられる可能性があります。商品の品質や成分を確認した上で、よりコストパフォーマンスに優れた代替商品を探してみましょう。
セール・まとめ買いの活用
値上がりを見越して、比較的安価に購入できるセール時期を狙ったり、ペット用品専門店やオンラインショップでのまとめ買い割引を活用したりすることで、出費を抑えられる場合があります。ただし、賞味期限や保存方法には注意し、必要以上の在庫を抱えないようにしましょう。
情報収集と価格比較
価格変動が大きくなる時期ほど、複数の店舗や通販サイトをこまめにチェックして比較することが重要です。商品の流通状況に影響が出れば、一時的な品薄や急激な値上げが起こる可能性もあるため、定期的に最新情報を収集しておきましょう。
獣医師やペット専門家への相談
ペットフードは栄養バランスに直結するため、安易に安い商品へ切り替えると健康面でリスクが生じることもあります。獣医師やペットフードに詳しい専門家に相談し、ペットの年齢や体調、アレルギーの有無に適した商品を選択するのがおすすめです。
まとめ
トランプ政権が打ち出した大幅な関税引き上げ政策は、アメリカ国内だけでなく世界のサプライチェーンや貿易相手国を巻き込み、ペットフードやペット用品の価格をも押し上げる要因となりかねません。
日常的に犬や猫を飼育している家庭にとっては、家計の負担が増すだけでなく、商品選びや購入方法を見直す必要性が高まるでしょう。 飼い主ができる対策としては、国内メーカーの製品を検討したり、セールやまとめ買いを活用したり、獣医師に相談したうえでペットに必要な栄養を確保する方法を検討したりすることが挙げられます。
ペットは大切な家族の一員です。国際貿易政策の変化に左右されることなく、できる限り安定した環境と良質な食事を提供できるように情報収集と適切な対策を進めていきましょう。
執筆:equall編集部
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