保護猫カフェの社会的意義。「遊びに行くだけ」が猫を救う理由とは

保護猫カフェへの来店は、単なる娯楽ではありません。それは都市における持続可能な動物保護活動の一環です。

近年、保護猫カフェは「猫と遊べる場所」としてだけでなく、社会的な課題解決の場として注目されています。しかし、「保護活動に興味がないと行ってはいけないのではないか」「ただ遊ぶだけで貢献になるのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。

本記事では、研究論文をもとに、保護猫カフェを利用する人々の意識と、その行動がどのように猫の命を救うことにつながるのかを解説します。これを読めば、保護猫カフェへの来店が持つ本当の価値がわかります。

保護意識がなくても「来店」が最大の支援になる

まず結論から申し上げます。保護猫カフェにおいて、利用客が「猫を保護したい」という強い意識を持っているかどうかは、活動の持続性において必須条件ではありません。

最新の研究によると、以下の2点はどちらも保護活動において不可欠な貢献であることが明らかになりました。

  • 保護意識を持って里親になること
  • 保護意識は薄いが、猫と遊び、入場料を支払うこと

つまり、「ただ猫が好きで遊びに行っただけ」という行動が、施設の経営を支え、結果として多くの猫を救う土台となっているのです。

横浜市の保護猫カフェを対象とした最新調査の概要

今回ご紹介するのは、筑波大学の中川紗智氏による研究論文です。猫の殺処分数が依然として多い都市部、特に神奈川県横浜市にある老舗保護猫カフェ(店舗A)を対象に、来店客の意識調査と分析が行われました。

  • 調査対象:横浜市中心部の保護猫カフェ「店舗A」の来店客
  • 調査時期:2023年5月
  • 分析手法:アンケートおよび聞き取り調査

この研究の画期的な点は、来店客を「保護意識の有無」と「リピート率」で分類し、それぞれの層がどのように保護活動に貢献しているかを可視化したことにあります。

来店客の4つのタイプとそれぞれの役割

論文では、来店客を以下の4つのタイプに分類しています。あなたはどのタイプに当てはまるでしょうか。

タイプA:初来店 × 保護意識なし(63人)

  • 特徴:猫が好きで遊びに来た層。20代の若者が中心。
  • 役割:入場料による資金的支援。この層が将来的なサポーターになる可能性が高い。

タイプB:初来店 × 保護意識あり(23人)

  • 特徴:30代女性が中心。最初から保護活動や譲渡に関心がある。
  • 役割:将来の里親候補。

タイプC:リピーター × 保護意識なし(61人)

  • 特徴:40代以上の男性が多い。特定の店舗のファン。
  • 役割:安定的な経営資金の提供。猫の「人馴れ」トレーニングの相手。

タイプD:リピーター × 保護意識あり(91人)

  • 特徴:30代以上の女性が中心。ボランティアや寄付経験も豊富。
  • 役割:保護活動のコアな支援者。情報の拡散や積極的な譲渡への協力。

ここで重要なのは、タイプAやCのような「保護意識があまりない層」も、タイプBやDと同じくらい重要であるという事実です。

なぜ「おじさん一人客」が保護活動のキーマンなのか

今回の調査で特に興味深い発見は、タイプC(リピーター × 保護意識なし)の存在です。この層には、中高年の男性が多く含まれていました。

彼らの多くは、「猫を飼いたいが、自分の年齢と猫の寿命(15〜20年)を考えると、責任を持って飼うことが難しいため断念している」という背景を持っています。

タイプCの貢献ポイント

  • 高頻度での来店:週1回以上通う人もおり、安定した収益をもたらす。
  • 猫の社会化:穏やかに過ごす常連客の存在は、警戒心の強い保護猫にとって「人間は怖くない」と学習する良い機会になる。
  • 場所の維持:彼らが通い続けることで、保護猫たちが暮らす場所が維持される。

「飼えないから関わらない」のではなく、「飼えないからこそカフェに通って支える」という新しい保護活動の形がここにあります。

保護猫カフェが果たす3段階の貢献モデル

本論文では、保護猫カフェにおける貢献をピラミッド型の3段階モデルで示しています。

第1段階:保護活動の場の維持

  • 対象:すべての来店客
  • 内容:入場料や飲食代を支払うこと。寄付だけに頼らない、持続可能な保護活動の資金源となります。

第2段階:保護活動の補助

  • 対象:主にリピーター
  • 内容:猫と触れ合うこと自体が、猫の「人馴れ(人への順応)」や「場所馴れ」のトレーニングになります。人間と同じ空間にいることに慣れた猫は、譲渡されやすくなります。

第3段階:譲渡(卒業)

  • 対象:保護意識のある客(タイプB・D)
  • 内容:実際に里親になり、猫を家族として迎え入れます。

このように、ただ遊びに行くだけ(第1段階)でも、その行動はピラミッドの土台を支え、最終的な譲渡(第3段階)へとつながるバトンリレーの一部となっているのです。

都市住民として私たちができること

保護猫活動というと、野良猫の捕獲や一時預かりなど、ハードルの高いボランティアをイメージしがちです。しかし、本研究は「お客様として楽しむこと」も立派な保護活動であることを科学的に裏付けました。

  • 保護意識がなくても、来店するだけで活動資金と場所の維持に貢献している。
  • 猫と遊ぶことは、次の飼い主へつなぐための「人馴れ訓練」になる。
  • 飼育を諦めた人でも、カフェに通うことで猫の福祉に貢献できる。

今度の休日は、気軽に近くの保護猫カフェへ足を運んでみてはいかがでしょうか。「かわいい」「癒やされた」というその感情と行動が、確実に猫たちの未来を支えています。

 

参考文献:都市における猫の保護活動参加者の意識と活動の持続性―横浜市の保護猫カフェ来店客の分析を通して―

執筆:equallLIFE編集部

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