「愛犬が噛む。どうしたらいいの?」悩んでネット検索したことはありませんか?
検索結果には「飼い主がリーダーになれ」「上下関係を教えろ」といった“もっともらしい助言”が並びます。しかし、その多くは科学的根拠が薄く、むしろ犬を追い詰めて咬傷リスクを上げる可能性があることが報告されています。
本記事では、論文『飼い犬の咬傷行動に関するインターネット情報の信頼性』をもとに、ネット上のしつけ情報に潜む危険と、飼い主が取るべき安全で現実的な対処法を解説します。
- 噛み犬のしつけ情報は、ネット上でどれくらい信頼できないのか
- 「主従関係」「リーダー論」が危険と言われる理由
- 動物福祉(アニマルウェルフェア)を無視した情報の特徴
- 咬傷行動の背景にある「恐怖・不安」とストレスの問題
- 飼い主が今日からできる、安全な行動ステップ
目次
ネット情報の約6割に「不適切な内容」が含まれる可能性
先に結論です。論文では、検索上位の「噛み犬トレーニング」関連ページを評価したところ、約6割で動物福祉に配慮しない不適切な記載が見つかったと報告されています。
つまり、ネットの助言をそのまま信じて実践すると、犬の恐怖やストレスを強め、結果として咬傷が悪化するリスクがある、ということです。大切なのは「強く叱る」ことではなく、犬が噛む状況を理解して安全に減らすことです。
ネット情報の信頼性は著しく低い
研究チームは、検索上位に出てくるウェブサイトを対象に、情報の信頼性を示す基準(著者の明記、根拠の提示など)で評価しました。
信頼できるサイトはごくわずか
その結果、複数の信頼性基準をすべて満たしたサイトは43サイト中1サイトにとどまったと報告されています。
また、科学的根拠が明記されているサイトはごく少数で、体験談や古い慣習ベースの情報が大半を占める傾向が示されました。
情報が古いまま放置されている
さらに、更新日が記載されているページでも、数年以上前の情報のままのケースが多いとされています。犬の行動学や動物福祉の考え方はアップデートされ続けていますが、ネット情報は追いついていないことが少なくありません。
「主従関係」や「リーダー論」の危険な罠
ネット検索で頻繁に出てくるのが「主従関係」「リーダー」「上下関係」という言葉です。論文では、これらが「恐怖」と結びついて語られる傾向が示されています。
科学が否定しつつある「支配性理論」
過去のトレーニングでは「犬は順位付けをするから、人が上に立て」と説明されることがありました。しかし近年では、咬傷行動の多くは支配欲ではなく、恐怖・不安・痛み・学習履歴などが関与する、という考え方が主流になっています。
「叱る」「体罰」は逆効果になりやすい
ネット上には、次のような方法が“しつけ”として紹介されることがあります。
- マズル(口)を掴んで叱る
- 仰向けにして押さえつける(アルファロール)
- 首を締めるタイプの首輪を使う
- 大きな音で驚かせる
これらは犬に恐怖や苦痛を与える「嫌悪刺激」になり得ます。恐怖を感じている犬に恐怖を重ねれば、犬は防衛のために咬傷行動を強めることがあり、問題解決どころか悪化につながりやすい点が重要です。
動物福祉(アニマルウェルフェア)を無視した情報の氾濫
論文では、情報が動物福祉の観点(「5つの自由」などの考え方)に配慮しているかどうかも評価されました。その結果、約6割のページで不適切な記載が見つかったとされています。
具体的なNG行動の例
ネット情報の中には、動物虐待に近い記述が含まれるケースも報告されています。
- 犬の身体に直接触れて苦痛を与える(殴る、吊るし上げる等)
- 道具で不快感を与える(電気ショック首輪、刺激スプレー、大きな音など)
これらは「しつけ」ではなく、犬の恐怖反応を引き出す「威圧」になりやすい方法です。さらに、営利目的のサイトでは、刺激系グッズ販売へ誘導されるケースもあるため注意が必要です。
噛み癖の本当の原因は「恐怖・不安」が中心
では、なぜ犬は噛むのでしょうか。論文の文脈では、ネット上で語られがちな「なめられている」「支配されている」という説明よりも、恐怖・不安・ストレスという要因が重要であることが示唆されます。
咬傷行動は「攻撃性」だけでなく、身を守るための防衛反応として起きることがあります。たとえば「触られるのが怖い」「追い詰められた」「痛い」「逃げ場がない」など、状況要因が重なると起きやすくなります。
だからこそ、罰で押さえ込むのではなく、「噛む状況を作らない」「恐怖を下げる」「安全に行動を置き換える」ことが本筋になります。
飼い主がとるべき正しい行動ステップ
ネット情報に振り回されず、愛犬と家族の安全を守るために、現実的なステップを整理します。
1. ネット情報は「参考」までに留める
個人ブログや体験談、グッズ販売が目的のページは鵜呑みにしないでください。「即効」「一発で治る」を強調するほど危険な場合があります。
2. 「恐怖」や「痛み」を与える方法は避ける
叩く、押さえつける、驚かす、締める、痛みを与える道具を推奨する情報は、その時点で離脱してOKです。短期的に止まったように見えても、恐怖が残れば再発や悪化が起きやすくなります。
3. まず獣医師へ相談(痛み・病気の除外)
咬傷の背景には、痛み(関節・皮膚・歯科など)や体調不良が隠れていることがあります。最初に「体の問題」を除外することは、安全面でも優先度が高い対応です。
4. 行動診療・専門家へ(陽性強化を基本に)
しつけ教室やトレーナーを選ぶ際は、「主従関係」「服従」を強調するタイプより、科学的根拠に基づいた陽性強化(望ましい行動を褒めて増やす)を基本とする専門家を選びましょう。
5. 情報を見るときのチェックリスト
- 誰が書いた?(獣医師・行動診療・公的機関か)
- 根拠はある?(論文・ガイドライン・一次情報への言及があるか)
- いつ更新?(古い情報のまま放置されていないか)
- 犬を怖がらせていない?(恐怖・痛みで止める発想になっていないか)
愛犬を守れるのは飼い主の「選ぶ力」
論文レビューから見えてくる要点は次の通りです。
- ネット上の「噛み犬」情報には、動物福祉に配慮しない不適切な内容が多く含まれ得る
- 「主従関係」「リーダー」という言葉は、恐怖を与える指導とセットで語られやすい
- 咬傷行動の背景は「支配」よりも「恐怖・不安・状況要因」で説明できることが多い
- 体罰や威圧は、再発や悪化のリスクを高めやすい
「愛犬になめられている」と悩む必要はありません。必要なのは支配ではなく、犬が安心できる環境と、噛む状況を減らす安全設計です。
ネットの無責任な情報に振り回されず、科学的根拠と動物福祉に沿った方法を選んでいきましょう。
参考文献:飼い犬の咬傷行動に関するインターネット情報の信頼性
執筆:equallLIFE編集部









































