犬の飼育が地域の「つながり」を強める科学的根拠

「犬を飼い始めると、地域の人との会話が増える」なんとなくそう感じている飼い主さんは多いのではないでしょうか。
実はこれ、単なる感覚ではなく科学的に裏付けられた事実です。しかし、最新の研究によると、それは「親友ができる」という意味とは少し違います。

本記事では、麻布大学と立教大学による最新の研究論文(2025年発表)を基に、犬が私たちの人間関係と「地域への所属感」にどのような影響を与えるのか解説します。

この記事の要点

  • 犬を飼うと「地域への所属感(Sense of Community)」が高まる。
  • その要因は深い「友達」が増えるからではなく、「場に根差した人間関係(Anchored Personal Relationships)」が増えるため 。
  • 猫や他のペットではこの効果は見られない。
    重要なのは「散歩」による定期的な顔合わせである可能性が高い 。

犬を飼うと「地域への所属感」が高まる科学的理由

最新の研究により、犬の飼育は、飼い主が地域に対して「ここは自分の居場所だ」と感じる所属感(Sense of Community)を高めることが明らかになりました 。
これは、単に「犬が可愛いから幸せ」という話ではありません。犬を介した人間関係の変化が大きく関係しています。

友達とは違う?「場に根差した人間関係」の重要性

この研究で最も重要な発見は、犬がもたらす関係性が「深い友情(Friendships)」ではなく、「場に根差した人間関係(Anchored Personal Relationships)」であるという点です 。

場に根差した人間関係とは?

特定の場所(公園や散歩コース)や時間だけで成立する人間関係のこと。
お互いの家を行き来するほどではないが、会えば挨拶をし、犬の話をするような「ゆるやかな繋がり」を指します。論文によると、日本のデータでは、犬を飼っても「近所の友達」が増える確率は統計的に有意ではありませんでした 。しかし、「場に根差した人間関係」は明確に増加し、それが地域への愛着や安心感に直結していることが分かったのです。

つまり、無理に深い付き合いをしなくても、「散歩仲間の顔見知り」がいるだけで、私たちは地域に安心感を抱くことができるのです。

麻布大学・立教大学の研究データが示す真実

2023年に神奈川県相模原市で行われた調査(回答者377名)では、以下の結果が出ています。

このデータは、犬が「顔見知り」を作る最強の触媒(きっかけ)であることを示しています。

なぜ犬だけが特別なのか?猫との比較

「ペットなら猫でも同じ効果があるのでは?」と思うかもしれません。しかし、研究結果は「No」でした。

他のペット(猫など)では効果が見られない理由

調査の結果、猫やその他のペットの飼育は、人間関係の構築や地域への所属感に統計的な関連が見られませんでした

この違いの最大の要因は「散歩の有無」にあると考えられます。
犬の飼育には毎日の散歩が伴います。これにより、物理的に外に出る機会が増え、他者と接触する頻度が高まります。一方、完全室内飼育が推奨される猫では、この「社会的な接点」が生まにくいのです。

散歩が生む「偶発的な交流」と「習慣」

犬の散歩は、以下の2つのプロセスで人間関係を作ります。

1. 偶発的な交流(Incidental Interactions)
すれ違いざまの「こんにちは」「可愛いですね」といったやり取りが増えます。
2. 習慣化による顔なじみ化:
毎日同じルートを歩くことで、同じ人と繰り返し会うようになります。これが「場に根差した人間関係」へと発展します。

地域でのつながりを作るための散歩のコツ【実践編】

研究から読み取れる「地域への所属感を高めるためのアクション」を提案します。重要なのは「無理に友達になろうとしないこと」です。

1. 「同じ時間・同じルート」を意識する

「場に根差した人間関係」を作るには、繰り返し同じ人と会うことが重要です。毎日バラバラの時間に歩くよりも、ある程度ルーティン化した方が、顔なじみ(犬友だち)ができやすくなります。

2. 会話は「犬のこと」だけでOK

研究でも、犬を介した会話は「犬に関する情報」に限定される傾向があると指摘されています。
「何歳ですか?」「犬種は何ですか?」といった会話だけで十分です。プライベートなことに踏み込む必要がないため、心理的な負担も少なく、関係を維持しやすいのがメリットです。

3. マナーを守ることが大前提

問題行動のある犬の飼い主は、他者との交流を避ける傾向があるという研究もあります。基本的なしつけやマナーを守ることで、ポジティブな交流が生まれやすくなります。

犬は「ゆるい繋がり」をくれるパートナー

犬を飼うことは、単に動物と暮らすだけでなく、地域社会との「ゆるくて心地よい繋がり」を手に入れることでもあります。

  • 無理に友達を作らなくていい:挨拶程度の「顔見知り」が地域への安心感を作ります。
  • 散歩がカギ:外に出る習慣が、あなたと社会を繋ぎます。
  • 科学的根拠あり:この効果は、猫などの他のペットにはない、犬特有のものです。

「最近、地域に馴染めていないな」と感じているなら、愛犬との毎日の散歩が、その孤独感を癒やす一番の特効薬になるかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 近所付き合いが苦手ですが、犬を飼っても大丈夫ですか?
A. 研究によると、犬がもたらすのは深い「友達付き合い」ではなく、その場限りの「場に根差した人間関係」です。家を行き来するような密な関係ではなく、散歩中だけ挨拶するような「適度な距離感」の関係性が増えるため、深い付き合いが苦手な方にこそ向いていると言えます。

Q2. 散歩にあまり行かない場合でも同じ効果はありますか?
A. 本研究では、犬の散歩による「外出」と「他者との接触」が人間関係構築の鍵であると示唆されています。散歩に行かない場合、地域の人と顔を合わせる機会が作れないため、同様の効果は期待しにくいでしょう。

Q3. 田舎や都会など、住む場所によって違いはありますか?
A. 環境による違いはある可能性があります。今回の研究は首都圏の郊外(住宅地)で行われました。散歩に適した公園や緑道が少ないエリアでは、特定の場所に犬の散歩者が集中するため、逆に「顔なじみ」ができやすいという可能性も指摘されています。

参考文献:
Ishiguro I, Kodama S, Koyasu H, Nagasawa M, Kikusui T (2025) Dog ownership enhances anchored personal relationships and sense of community: A comparison with incidental interactions and friendships. PLoS ONE 20(12)

執筆:equall編集部

 

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