【獣医師監修】コミュニティがある暮らしは、なぜ幸せなのか

「毎日挨拶する人が増えた」「地域で顔見知りができた」「SNSで飼い主仲間ができた」そんな変化をもたらす存在が、ペットです。

本記事では、飼い主の社会的ウェルビーイングに焦点を当て、ペットとの暮らしがどのように人とのつながりや地域との関係を育み、孤立の防止や自己肯定感の向上に寄与するのかを解説します。

社会的ウェルビーイングとは

WHOによる「健康」の定義にも含まれる、ウェルビーイングの三本柱のひとつが社会的側面です。

これは以下のような状態を指します。

  • 社会的に孤立していない
  • 安心して所属できる場所や人間関係がある
  • 自分の役割や居場所があると感じられる
  • 他者との交流により自尊心や幸福感が保たれている

つまり、「人と関わることで満たされる幸福感」こそが、社会的ウェルビーイングです。

飼い主が得られる“つながり”とその効用

地域との自然な接点が生まれる

特に犬の飼い主は、毎日の散歩を通じて近隣住民や他の飼い主と関わることが多くなります。

  • 「この時間によく会う犬仲間」ができる
  • 挨拶のやり取りが習慣化し、地域との“顔なじみ”が増える
  • 公園や動物病院を通じて、新たな交流が生まれる

ペットを通じた地域参加が飼い主の孤立感を減らし、見守られている安心感を生みます。

SNSやオンラインでの共感の輪が広がる

現代では、InstagramやX(旧Twitter)などでペットの写真を投稿したり、日常の出来事を共有する飼い主が増えています。

  • 同じような経験をしている飼い主との共感・励まし
  • 飼育の悩みや喜びを言葉にすることで整理される
  • 「いいね」やコメントが、社会的承認とつながりの実感につながる

リアルでの接点が少ない人でも、SNSを介して「つながっている」と感じることが、社会的孤立の緩和に役立ちます。

“役割”が人生に意味をもたらす

ペットの世話は毎日の小さな積み重ねですが、その行動の裏には「この子を守るのは自分」という明確な役割意識が存在します。

  • 「必要とされている」という自尊心
  • 「してあげたい」という利他的感情が自己肯定感を高める
  • 特に、子育て終了後や退職後の世代での心の充足感につながる

「ペットは飼い主を癒すだけでなく、飼い主の人生に意味を与えてくれる存在でもある」というのは、まさにこの点に集約されます。

社会的ウェルビーイングを高めるための工夫

ペットをきっかけにした地域参加

  • ペット同伴OKのイベントに参加
  • 地元の清掃活動や譲渡会のボランティアに参加
  • 動物病院やトリミングサロンの情報交換

飼い主仲間とのつながりを作る

  • 散歩中に名前を覚えて挨拶をする
  • ペット用のLINEグループ・SNSハッシュタグで交流
  • 情報交換や病気体験の共有で「一人じゃない」と実感

「ありがとう」と言ってもらえる機会を大切にする

他者の犬を可愛がる、猫を見守るなど、地域やSNSやさしい飼い主”として信頼や感謝を得ることが自分のウェルビーイングにも返ってきます。

交流が負担にならないように

人との関わりが苦手な方もいらっしゃいます。
大切なのは「無理に人付き合いを広げること」ではなく、自分のペースで“孤立しない”工夫をすることです。

  • SNSに投稿しなくてもOK
  • 一言のあいさつから始めれば十分
  • わずかな交流でも、心は豊かになる

まとめ

ペットとの暮らしは、私たちが知らぬ間に社会と関わる機会をつくり、孤独や無力感から守ってくれる“架け橋”になっています。

飼い主の社会的ウェルビーイングを高める3つの要素

1. 地域・他者との自然な交流
2. オンラインを通じた共感の輪
3. 飼い主としての役割と承認

「この子がいてくれるから、人と関われる」「この子がいるから、今日も外に出ようと思える」そんな暮らしの中に、人としての幸せ=ウェルビーイングの源泉があるのです。

執筆: 獣医師 丸田 香緒里

 

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