災害大国である日本において、ペットは大切な「家族」です。しかし、いざ災害が起きたとき、本当にペットと一緒に避難できるのか、避難所には何が用意されているのか、不安に感じている飼い主様も多いのではないでしょうか。
本記事では、論文『多様化するペットとの同行避難はどこまで可能か』(新島典子・花木優生)をもとに、東京都23区と神奈川県19市の受け入れ実態をレビューします。
犬猫だけでなく、エキゾチックアニマル(爬虫類や鳥類など)の対応についても整理し、「いざという時に何を準備すべきか」をわかりやすく解説します。
- 避難所への「同行避難」は原則可能だが、同じ部屋で過ごせるとは限らない
- 東京都23区・神奈川県19市ともに、ペット用備蓄(フード・トイレ)は圧倒的に不足
- 犬猫以外(爬虫類・両生類など)は受け入れ不可の自治体が多い
- 「公助(役所の支援)」は限定的なため、「自助(自分の備え)」が命を守る
目次
ペットの「ご飯」と「トイレ」は役所にはない
まず、最も重要な事実をお伝えします。避難所で配られることを期待しがちなペット用品ですが、多くの自治体では十分に備蓄されていません。
今回の研究では、飼い主側の「避難所に備蓄があるはず」という期待と、自治体側の準備状況の間に大きなギャップがあることが示されています。
飼い主と自治体の意識のズレ
動物看護学部の学生(飼い主予備軍)への調査では、災害時に備えるべきものとして「フード」や「トイレシーツ」が高い割合で挙げられました。しかし、備蓄を完了している人は少なく、避難所の備蓄に期待する実態が浮き彫りになりました。
一方で、自治体の備蓄状況は厳しい現実があります。
- 東京都23区:ペット用備蓄があるのは6区のみ
- 神奈川県19市:ペット用備蓄があるのは5市のみ
特に衝撃的なのは、神奈川県19市では「ペットフード」の備蓄がゼロだった点です。東京都港区のようにトイレシーツを備蓄している例外的な自治体もありますが、基本的には「自分のペットの食事と排泄の世話は、自分で行う」ことが前提になります。
避難所での居場所は「屋外」が基本
「同行避難」という言葉から、体育館の中でペットと一緒に過ごせるイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし現実は異なります。
東京都23区の対応
- すべての避難所で受け入れ可能:大半の区が回答
- 居場所:14区が「屋外」と回答
神奈川県19市の対応
- すべての避難所で受け入れ可能:11市
- 居場所:多くの市で「屋外」や「車内」が指定され、室内同居ができる市はゼロ
雨風をしのげるスペースやペット専用室がある自治体もありますが、基本は「屋外」または「人間とは別の場所」になると考えておく必要があります。
普段室内で暮らしているペットにとって、ケージやクレートで長時間過ごすことは大きな負担です。だからこそ、平時からのクレートトレーニングが重要になります。
エキゾチックアニマルの避難は極めて困難
近年増えている、爬虫類・両生類・猛禽類・魚類・昆虫類などの「エキゾチックアニマル」。これら多様なペットの同行避難は、犬猫以上に厳しい現実があることが示されています。
受け入れ可否の境界線
研究では、犬・猫・小動物(ハムスターやウサギなど)については、多くの自治体で受け入れが可能でした。
一方で、以下の動物種は受け入れ可能な自治体が極めて限定的です。
- 爬虫類(ヘビ、トカゲなど)
- 両生類
- 猛禽類(フクロウなど)
- 魚類
- 昆虫類
なぜ断られるのか
主な理由は、設備面と安全・心理面の課題です。
- 設備の問題:温度管理(ヒーターやポンプ)に電源が必要だが、避難所の電源・スペースには限界がある
- 安全・心理的な問題:毒性や危険性への懸念、見た目の嫌悪感(特に昆虫)などで受け入れ合意を得にくい
東京都の江東区・杉並区・墨田区、神奈川県の相模原市・横須賀市など、幅広い動物種を受け入れる自治体も一部存在しますが、多くの場合は「同行避難がかなわない」前提で備える必要があります。
飼い主が今すぐやるべき3つの対策
研究の考察から導けるのは、「公助が薄い領域ほど、準備の差が命の差になる」ということです。今日からできる対策を整理します。
1. 徹底した「自助」の備蓄
避難所にはペットフードもトイレ用品も基本的にありません。最低でも数日分、できれば1週間分のフード・水・トイレ用品を備蓄してください。
- フード(普段食べ慣れたもの)
- 飲料水
- トイレシーツ/猫砂(猫砂は重いので分割・小分けが現実的)
- 排泄物処理袋、消臭用品
2. 自宅避難・在宅避難の検討
避難所の環境はペットにとって過酷です。自宅の耐震化や家具固定、ハザードマップ確認を進め、「自宅にとどまる(在宅避難)」という選択肢を持てるようにすることも重要です。
3. 「共助」のネットワークづくり
特にエキゾチックアニマルの飼い主様は、避難所に入れない可能性が高いです。同じ動物を飼う仲間同士で、緊急時に預かり合える関係を作っておくことが、公助に頼れないペットの命綱になります。
ペットを守れるのは飼い主だけ
今回の論文レビューから、自治体の備えには限界があることわかってきました。
- フードとトイレの備蓄は「飼い主の義務」
- 避難所での居場所は「屋外」が基本
- エキゾチックアニマルは受け入れ不可の可能性が高い
「同行避難」は、行政がすべて整えてくれる仕組みではありません。災害時に愛するペットを守れるのは、平時からの準備だけです。まずは、お住まいの自治体のホームページで「防災計画」や「ペット受け入れルール」を確認するところから始めましょう。
参考文献:多様化するペットとの同行避難はどこまで可能か―東京都23区・神奈川県19市避難所における準備と受入動物種の調査―
執筆:equallLIFE編集部









































