「うちの子は室内飼いだから大丈夫」は危険?ネコの迷子対策と身元表示の重要性

「うちの子は室内飼いだから迷子にならない」そう思っていませんか?

実は、完全室内飼育のネコでも、ドアの隙間からの脱走や災害時のパニックによる逸走は起こり得ます。そして迷子になったとき、身元が分からなければ、飼い主のもとへ戻れない可能性が一気に高まります。

本記事では、論文『完全室内飼育下のネコの身元表示に対する飼い主の意識調査』をもとに、迷子対策としての「身元表示」がなぜ普及しないのか、どうすれば普及するのかを解説します。

  • 迷子猫が「飼い主に戻りにくい」理由
  • 完全室内飼育でも身元表示が必要な根拠
  • マイクロチップ・首輪・迷子札が普及しない要因と対策
  • 動物病院の声かけが装着率を上げる理由

迷子猫の返還率はわずか0.7%

研究の背景として示されるのが、迷子猫の返還率の低さです。

令和4年度のデータでは、行政に引き取られたネコのうち約7割が「所有者不明」とされ、飼い主のもとへ返還された割合(返還率)は0.7%(204頭)にとどまります。

外見だけでは「飼い猫か、野良猫か」を区別できないため、飼い主が見つからないまま収容が長期化し、最悪の場合は殺処分などの対象になるリスクも高まります。

室内飼いでも「迷子」は起こる

「外に出さないから大丈夫」という認識が、身元表示の普及を妨げる最大の要因になっています。

ですが、室内飼育でも迷子のリスクはゼロではありません。

  • 来客時に玄関からすり抜ける
  • 窓や網戸のわずかな隙間から出てしまう
  • 引っ越し・工事・通院などの移動時に脱走する
  • 地震や火災など災害時にパニックで逸走する

「一度外に出てしまうと戻れないネコ」も珍しくありません。だからこそ、身元表示は“万が一の保険”として意味があります。

完全室内飼育ネコの身元表示、実施率は低い

本研究では、完全室内飼育のネコを飼う飼い主171名へのアンケートから、身元表示の装着率が整理されています。

  • 首輪:40.9%
  • マイクロチップ:25.1%
  • 迷子札:16.4%

半数以上のネコが首輪をしておらず、マイクロチップや迷子札はさらに低い数値でした。つまり、多くの室内飼育ネコが「身元が分からない状態」に置かれていることになります。

なぜ装着しないのか?いちばん多い理由は「室内飼育だから」

装着していない理由として、すべてのアイテムで共通して最も多かったのが「室内飼育だから」という回答です。

さらに、各アイテム特有の理由も見えてきます。

マイクロチップをしない理由

  • 体内への埋め込みに抵抗がある
  • 必要ないと思う

首輪をしない理由

  • ネコが嫌がる
  • かわいそう

迷子札をしない理由

  • 装着を考えたことがない
  • 首輪ができない

普及のカギは「専門家からの推奨」だった

この研究で重要なのは、装着率に影響する要因として「誰かに推奨された経験があるか」が大きい点です。

推奨された経験がある飼い主ほど装着率が高く、推奨されたことがない飼い主は装着していない傾向が示されました。

一方で、現状は動物病院で推奨される機会が多くありません。

  • 獣医師からマイクロチップを勧められた経験:29.8%
  • 愛玩動物看護師から推奨された経験:マイクロチップ3.9%、首輪6.5%、迷子札4.0%

裏を返すと、動物病院スタッフのひと声、特に日常的に飼い主と接する愛玩動物看護師の声かけは、装着率を引き上げる大きな余地があると言えます。

ネコに優しい身元表示の選び方

「嫌がる」「かわいそう」という不安を減らすには、ネコの習性に合った選び方を知ることが近道です。

首輪を嫌がるネコへの対策

首輪を嫌がる原因のひとつに「音」があります。ネコは聴覚が鋭く、鈴や金属音がストレスになることがあります。

  • 鈴や過度な装飾のない、シンプルで柔らかい素材を選ぶ
  • 子猫のころから短時間ずつ慣らす
  • 安全バックル(一定の力で外れるタイプ)を選ぶ

迷子札の選び方

市販の迷子札はイヌ用が多く、ネコには大きすぎたり重すぎたりすることがあります。「どこで買えばいいかわからない」という声が出るのも自然です。

  • ぶら下げ型ではなく、首輪に縫い付けるタイプや軽量プレートを選ぶ
  • ネコ向け商品や購入先を、動物病院側が案内できると理想

マイクロチップの正しい理解

マイクロチップは外れて失われる心配がなく、「永久的な身元表示」として機能します。

抵抗感がある飼い主には、安全性や手技、痛みの程度、登録の流れなどを具体的に説明することが安心につながります。

理想は「ダブル装着」

論文の結論として望ましいのは、マイクロチップ首輪+迷子札の併用です。

  • 首輪・迷子札:保護した人が一目で「飼い猫」と判断でき、すぐ連絡につながる
  • マイクロチップ:首輪が外れても、リーダーで確実に飼い主特定ができる

室内飼育でも、迷子と災害は突然起こります。愛猫に「お守り」をつけておくことは、ネコの命を守り、飼い主の後悔を減らすための現実的な備えです。

 

参考文献:完全室内飼育下のネコの身元表示に対する飼い主の意識調査

執筆:equallLIFE編集部

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