多くの小学校で行われているウサギやニワトリなどの動物飼育。「子供の情操教育に良い」と一般的に信じられていますが、実はやり方を間違えると、かえって子供の心を傷つけ、思いやりの気持ちを低下させてしまう可能性があることをご存じでしょうか。
今回は、日本小動物獣医学会誌に掲載された論文「学校での動物飼育の適切さが児童の心理的発達に与える影響」をもとに、学校飼育の真の効果と、家庭でのペット飼育との違いについて解説します。
- 適切な指導と環境での飼育は、子供の「学校適応感」や「思いやり」の低下を防ぐ
- ずさんな管理(不適切な飼育)は、何もしないよりも子供の共感性を低下させるリスクがある
- 家でペットを飼っていない子供こそ、学校での飼育体験が心理的成長に大きく寄与する
目次
どのような調査が行われたのか
この研究は、小学4年生の児童768名を対象に、学校で動物(ウサギやニワトリなど)を1年間世話をした場合、子供たちの心理面にどのような変化が表れるかを調査したものです。
調査対象は以下の3つのグループに分けられました。
- 適切な学年飼育群:獣医師と連携し、先生が教育的な狙いを持って指導し、子供たちが主体的に世話をしている学校
- 不適切な学年飼育群:掃除が行き届かず不衛生、休日の世話が不十分、動物の健康状態が悪いなど、管理がずさんな学校
- 対照群(動物の世話をしない):飼育委員会(5・6年生)任せで、調査対象の4年生は動物の世話に関わらない学校
この3つのグループに対し、飼育開始前・終了直後・終了1年後の計3回、心理テストを行いました。
【結果1】「適切な飼育」は高学年特有の心の荒みを防ぐ
小学校高学年から中学にかけては、一般的に学校生活への満足度(学校適応)や他者への温かい気持ちが低下しやすい時期とされています。
しかし、この研究データによると、「適切な飼育」を行ったグループは、動物の世話をしなかったグループに比べて、以下の心理的要素の低下が抑制されました。
- 学校適応(学校が楽しい、満足している)
- 動物への共感性
- 他者への温かさ(困っている人を助けたい気持ち)
- 向社会的態度(親切な行動)
つまり、正しく動物と触れ合うことは、子供の心の安定剤となり、優しさを維持する効果があることが実証されたのです。
【結果2】「不適切な飼育」は逆効果!何もしないより悪影響
本研究で最も注目すべき点は、管理の悪い「不適切な飼育」が子供に与える悪影響です。
不適切な飼育環境(不潔、動物が病気など)で世話をしたグループは、動物の世話を全くしなかったグループよりも、「動物への共感性」や「人への思いやり」が大きく低下してしまいました。
理由としての考察
巣箱がない、病気が放置されているといった「命への配慮の欠如」を目の当たりにすることで、子供たちの共感性が損なわれた可能性があります。「動物を飼うこと」自体が良いのではなく、「どう飼うか(生命尊重の姿勢)」を見せることが教育上極めて重要です。
【結果3】「家にペットがいない子」ほど学校飼育の効果が高い
「家でペットを飼っているから、学校での飼育は必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、データは逆の結果を示しています。
家庭で動物を飼育していない子供が、学校で「適切な飼育」に参加した場合、家庭でペットを飼っている子供よりも「向社会的態度(社会的な優しさ)」が向上しました。
なぜ学校飼育の方が効果が出たのか?
家庭でのペット飼育は、結局のところ親が世話をしてしまいがちです。一方、学校の「学年飼育」では、子供たちが当番として責任を持ち、友達と協力して世話をする必要があります。この「責任ある世話」と「仲間との協力」の経験が、子供の成長を促したと考えられます。
【結果4】効果は1年後も持続する
適切な飼育の効果は、その場限りのものではありませんでした。飼育体験が終了してから1年後の調査でも、適切な飼育を経験した子供たちは、そうでない子供たちに比べて「動物への共感性」や「人への温かさ」が高い水準で維持されていました。
質の高い動物との触れ合い体験は、子供の心に長期的なポジティブな影響を残すことが示唆されています。
学校動物飼育の成功の鍵は「大人の関わり方」
今回の論文レビューから、学校での動物飼育は単に「動物がいれば良い」というものではないことが明らかになりました。
教育効果を高めるための条件
- 獣医師との連携があること
- 教師が教育的な明確な意図を持っていること
- 子供が主体的に責任を持って世話ができる環境であること
- 動物の健康と衛生が守られていること
これから学校や家庭で動物飼育を考える際は、「命を大切にする姿」を大人が正しく示せているか、今一度見直してみることが大切です。適切な飼育環境こそが、子供たちの優しい心を育む最高の教材となります。
参考文献:学校での動物飼育の適切さが児童の心理的発達に与える影響
執筆:equallLIFE編集部








































