ペットを「わんこ」「ニャンコ」「◯◯ちゃん」と親しみやすい言葉で呼んだり、話しかけたり…そんな日常の中にある“擬人化(Anthropomorphism)の心理的・文化的背景を知ることで、人とペットの関係はもっと深まります。
今回は、擬人化の概念や歴史、広告やメディアでの活用例、さらに現代コミュニケーションにおける可能性を解説します。
目次
擬人化とは?その認知的・文化的背景
擬人化(Anthropomorphism/Personification)は、非人間的な存在に“人間の属性”を付与して理解しようとする認知メカニズムです。
「社会性動機」と「効力動機」という2つの心理的動機が擬人化の背景にあります。「社会的つながりを持ちたい」という欲求から擬人化に走る人もいれば、「対象を予測・操りたい」という欲求から擬人化に至るケースもあるようです。
歴史と文化における動物擬人化
日本最古の漫画「鳥獣戯画」には、ウサギやカエル、サルなどが人のように遊ぶ姿が描かれています。これらは単なる絵ではなく、人間と動物の境界を越える文化表現とも言えます。
ヨーロッパでは『長靴をはいた猫』のような民話、古代エジプトではアヌビスといった擬人化された存在が登場します。
擬人化とコミュニケーション効果
広告における擬人化
擬人化は広告においても非常に効果的な手法として活用されています。たとえば2007年のソフトバンクの「犬が父親」になったCMは、強い印象を残しCM好感度第1位を獲得、翌年にはACCグランプリを受賞しており、2025年時点でもCMは継続しています。
同様に2010年のNTTドコモも、擬人化を使った広告でACC金賞を受賞し、両社は擬人化によって消費者の心をつかむコミュニケーションを展開しました 。
擬人化は心理的に「感情移入しやすい」「記憶に残りやすい」といった効果をもたらすため、広告やマーケティングにおいて広く活用されています。
ペットへの擬人化 – 日常に浸透した愛の表現
ペットに対して擬人化する行為は、愛情表現やコミュニケーション促進にもつながります。「ペットを人間のように感じられる」ことで、絆がより深まるでしょう。
例えば、ペットの表情・仕草に人間のような心情を投影したり、「ご飯はまだ〜?」と話しかける行為そのものが、社会性動機による擬人化の現れです 。
また、効力動機の観点からは、ペットの行動を予測したり管理しやすくするために、敢えて“人間らしく解釈する”という側面も考えられます。
長い時間過ごしていると、飼い主とペットの絆が深まり、犬や猫の鳴き声や仕草から考えていることが分かるようになるでしょう。
ペットの家族化が擬人化を加速させる
ペットが伴侶動物といわれ、家族の一員となった現代では、ペットは人間の子供ように扱われています。
擬人化が家族化を進めるのか、家族化が擬人化を進めるのかという議論もありますが、この流れは、ペットと出かけるスポットの増加や犬服、ペット医療の発展など関連サービスが強化されることにより、加速していくでしょう。
ペット関連のサービスを展開する方は、ペットに対するホスピタリティも求められ、使用する言葉にまで注意を払う必要があります。
ペットの食事を「エサ」と呼ぶことが不快感を増幅させる要因にもなり得ます。
まとめ
擬人化は単なる可愛らしさの演出にとどまらず、コミュニケーションや理解を助ける認知・文化現象なのです。ペットとの暮らしにおいても、擬人化をうまく活用することで、より豊かな関係を築くことができるでしょう。
参考文献:
佐 々木 恵理(2000)「動物をめぐることばと表現」現代日本語研究会
関沢 英彦(2012)「父さんは犬 : 広告における擬人化」コミュニケーション科学
執筆:equall編集部
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