現代社会において、ペットは単なる愛玩動物ではなく、家族の一員として深い絆を築いています。
日々の暮らしの中で、ペットと暮らす自分自身の幸せとペットの幸せを考えたことはありますか?
今、動物福祉の視点から注目されている「ウェルビーイング(Well-being)」 という概念があります。
これは病気がないというだけでなく、心・体・社会的つながりのすべてが満たされた状態を意味します。
目次
ウェルビーイングとは?「幸福」より深い“人の健康”の基準
ウェルビーイングとは、「身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態」を意味し、単なる病気の有無ではなく、人生の充実度や主観的な幸福感を含む概念です。これは、世界保健機関(WHO)が定義しています。
動物は自己評価によって主観的幸福を語ることができず、飼い主の感情・認知・行動に依存する関係となります。
ペットがもたらす「心・体・社会」のウェルビーイング効果
ペットとの暮らしが飼い主にもたらす主な効果は、以下の3つの側面に整理できます。
心のウェルビーイング/感情の安定とストレス緩和
孤独感を軽減する“存在の安心感”
犬や猫とのふれあいは、人間の孤独感を軽減することが、国内外の研究で明らかになっています。
- 誰かがそばにいる安心感、精神的支え
- 会話の相手になり、感情の共有がしやすくなる
ホルモン分泌の変化による“癒し効果”
ペットとの触れ合いにより、オキシトシン(愛情ホルモン)が分泌されるとされ、これによりリラックス効果や幸福感の上昇が生じます。
身体のウェルビーイング/健康習慣と生活リズムの改善
散歩やお世話による身体活動の増加
特に犬の飼い主では、散歩が日常化し運動量が増えることが知られており、これは肥満や生活習慣病の予防にも効果的です。
- 一定の運動習慣が身につく
- 生活リズムが整う
- 規則正しい睡眠や食生活のきっかけにも
介護や高齢犬猫との生活がもたらす“身体への気づき”
老犬・老猫の世話では、排泄・食事・体調管理などのケア意識が高まり、飼い主自身も健康への意識や知識を得る契機になります。
社会的ウェルビーイング:つながり・役割・参加の促進
地域・他者との接点が増える。「ご近所づきあいが生まれた」「散歩中に他の飼い主と挨拶を交わすようになった」といった声は多く聞かれます。
- 犬の散歩によるコミュニケーションの増加
- ペットイベントや地域活動への参加
- SNSを通じた情報発信と共感
飼い主としての「役割意識」が自己肯定感につながる
ペットを守る・育てるという責任ある立場は、人生の中に「役割」と「意味」を生み出す行動です。
これは、特に高齢者や育児後の世代で大きな心理的価値となります。
効果が高いとされる飼い主像
- 単身世帯や高齢者:孤独感の軽減
- 子育て終了後の世代:役割喪失からの回復
- メンタル不調や不安傾向のある人:感情の安定
ペットを通じてウェルビーイングを高めるためのヒント
日常の中で「ありがとう」を伝えましょう。ペットとの接触は感謝の気持ちを育てます。
「ありがとう」と声をかける習慣は、自分の感情を言語化し、ポジティブに再認識する手段になります。
同じ悩みを持つ飼い主とつながる
「共感」や「分かち合い」は、ウェルビーイング向上の鍵です。
- SNSでの交流
- ペット関連のオンラインイベントや地域の譲渡会
まとめ
ペットは私たちの生活を癒してくれるだけではなく、私たち自身の心・体・社会的な健康=ウェルビーイングを支えてくれる存在です。
飼い主のウェルビーイングを高める3つの要素
1. 感情の安定(孤独感や不安の軽減)
2. 生活習慣の整備(規則正しい生活と運動)
3. つながりと役割意識の向上(社会との接点と自己肯定)
これらは、ペットとの暮らしを大切にする飼い主だからこそ得られる恩恵です。
今日から、自分自身のウェルビーイングを見つめ直し、「ペットとの関係性」がもたらす幸せのかたちを再確認してみてはいかがでしょうか。
執筆: 獣医師 丸田 香緒里
ウェルビーイング診断
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