愛猫が昨日まで食べていたごはんを、今日は少し残す。そんな様子を見ると、「もう飽きてしまったのかな」と心配になることがありますよね。猫はグルメ、気まぐれ、好き嫌いが多いと言われがちですが、その背景には「におい」への慣れが関わっているかもしれません。
今回は、岩手大学の研究チームが2026年に発表した猫の食欲とフードのにおいに関する研究をもとに、「猫は同じごはんに飽きるのか」を考えます。結論を先に言うと、研究では、同じフードや同じにおいに繰り返し触れることで食べる量が下がり、新しいフードや新しいにおいで一時的に食べる意欲が戻る可能性が示されました。ただし、食べない理由をすべて「飽き」で片づけるのは危険です。
- 猫の食欲には、味だけでなくフードの「におい」への慣れが関わる可能性があります
- 研究では、同じフードを繰り返すと摂食量が下がり、新しいにおいで回復する場面が見られました
- 家庭では、少量ずつ新鮮に出すことと、食欲低下を体調不良のサインとして見ることが大切です
目次
猫の「食べ飽き」には、においへの慣れが関係するかもしれません
猫が同じごはんを途中でやめると、「味に飽きた」と表現したくなります。しかし、研究が示したのは、味そのものよりも、同じフードのにおいに繰り返し触れることで食べる意欲が下がる可能性です。
これは、猫がわがままだから食べない、という話ではありません。猫は本来、小さな獲物を何度も捕まえて少量ずつ食べる動物です。研究チームは、その小分けの食事パターンに、胃の満腹感だけでなく、においの刺激に慣れるしくみが関わっているのではないかと考えました。
つまり、愛猫がフードを残したときに大切なのは、「嫌いになった」とすぐ判断することではなく、においの変化、出し方、量、環境、そして体調を合わせて見ることです。
研究では何を調べたのでしょうか
中心となる研究は、Takumi Takahashi、Shota Ichizawa、Sara Kikuchi、Nanami Hara、Reiko Uenoyama、Tamako Miyazaki、Masao Miyazaki氏らが2026年にPhysiology & Behaviorに発表した「Olfactory habituation and dishabituation dynamically regulate feeding motivation in domestic cats」です。
研究では、健康なミックスの家庭猫12匹を対象に、複数のドライフードを使った摂食実験が行われました。猫たちは16時間の絶食後、10分間食べる時間と10分間の間隔を組み合わせた複数サイクルで、同じフードを繰り返し出されたり、途中で別のフードや別のフードのにおいを提示されたりしました。
同じフードを繰り返す条件
同じフードを続けて提示した条件では、猫たちの食べる量はサイクルが進むにつれて下がる傾向がありました。興味深いのは、16時間絶食した後でも、多くの猫が最初から出された量をすべて食べ切ったわけではなかった点です。
この結果は、猫が食事をやめる理由が単純な満腹だけではない可能性を示しています。もちろん、胃腸からの満腹感も関わりますが、研究チームは、同じにおいへの慣れが短い時間の中で食べる意欲を下げた可能性を指摘しています。
新しいフードやにおいを入れる条件
別の条件では、同じフードを繰り返した後に、新しいフードを提示しました。すると、フードの種類によっては、いったん下がった摂食量が回復しました。さらに重要なのは、食べるフード自体を変えなくても、別のフードのにおいだけを提示したときにも、食べる量が戻る場面があったことです。
これは、猫の食欲が「味」だけで決まっているわけではなく、鼻から入るにおいの新しさにも左右される可能性を示しています。反対に、同じフードのにおいに食間も触れ続けると、その後の摂食量が抑えられる結果も見られました。
「飽きた」ではなく「においに慣れた」と考える
この研究を暮らしに置き換えるなら、「猫は同じ味に飽きる」と単純に言うより、「同じにおいに慣れることで、一時的に食べる意欲が下がることがある」と考えるほうが正確です。
たとえば、器にフードを多めに出して長時間置いておくと、猫はそのにおいに触れ続けることになります。ドライフードでも開封後や器に出した後は香りが変化しますし、ウェットフードはさらににおいの変化が大きくなります。猫にとって、食事の魅力は「栄養成分」だけでなく、食べ始める前に鼻で感じる情報にも支えられています。
ただし、新しいにおいで食べたからといって、毎回フードを大きく変える必要があるわけではありません。急な切り替えはお腹の不調につながることがありますし、総合栄養食ではないおやつやトッピングに頼りすぎると、栄養バランスが崩れるおそれもあります。
家庭でできる食事の工夫
研究結果は、猫の食欲を無理に操作する方法ではなく、日々の出し方を見直すヒントとして使うのが現実的です。愛猫の体重、年齢、持病、フードの種類によって合う方法は異なるため、様子を見ながら少しずつ試しましょう。
少量ずつ新鮮に出す
- 置きっぱなしを減らす:食べ残しが長時間出たままになると、においも食感も変わります
- 1回量を見直す:一度に多く出すより、必要量を分けて出すほうが合う猫もいます
- 器を洗う:前の食事の油分やにおいが残ると、猫が避けることがあります
- 保存状態を整える:袋はしっかり閉じ、湿気や高温を避けて、開封後は早めに使い切ります
変化は小さく、安全に
においの新しさを使う場合も、まずは小さな工夫から始めます。たとえば、同じ総合栄養食の範囲で香りや形状が少し違うものを獣医師やメーカーの指示に沿って試す、ウェットフードを使う場合は主食として設計されたものを選ぶ、といった方法です。
トッピングを使う場合は、量を控えめにし、塩分や脂肪分、猫に危険な食材を避ける必要があります。人間用の味付け食品、ネギ類、にんにく、チョコレート、アルコール、カフェインなどは猫に与えてはいけません。持病がある猫、療法食を食べている猫、肥満傾向の猫では、自己判断での変更は避け、獣医師に相談してください。
食べない理由を「わがまま」と決めつけない
今回の研究は、猫の食欲ににおいへの慣れが関わる可能性を示したものですが、食欲低下のすべてを説明するものではありません。対象は12匹で、実験条件は短時間の摂食サイクル、ドライフード、研究施設内の環境です。家庭で暮らすすべての猫に同じように当てはまるとは限りません。
特に、急に食べなくなった、食べる量が明らかに減った、体重が落ちた、吐く、下痢をする、水を飲む量や尿の量が変わった、口を気にする、隠れる時間が増えた、といった変化がある場合は注意が必要です。猫は体調不良を隠しやすく、食欲の変化が病気や痛みのサインになることがあります。
「飽きただけかも」と様子を見すぎず、食欲低下が続くときや普段と違う様子があるときは、早めに獣医師へ相談してください。行動面の強い不安や食事へのこだわりが生活に支障を出している場合は、獣医行動学に詳しい専門家の助けが必要になることもあります。
まとめ
- 2026年のPhysiology & Behaviorの研究では、猫の食欲にフードのにおいへの慣れが関わる可能性が示されました
- 同じフードや同じにおいを繰り返すと摂食量が下がり、新しいフードやにおいで一時的に回復する場面がありました
- 家庭では、フードを少量ずつ新鮮に出し、器や保存状態を整えることが実践しやすい工夫です
- 急なフード変更やトッピングの多用は、栄養バランスや体調に影響することがあるため注意が必要です
- 食欲低下が続く場合は「飽き」ではなく、病気や痛みのサインとして獣医師に相談しましょう
愛猫の食事は、ただ栄養を入れる時間ではなく、におい、器、環境、体調が重なる毎日の小さな観察ポイントです。研究の知見を手がかりにしながら、愛猫が安心して食べられる新鮮な一皿を、無理なく整えていきたいですね。
参考文献:Takumi Takahashi, Shota Ichizawa, Sara Kikuchi, Nanami Hara, Reiko Uenoyama, Tamako Miyazaki, Masao Miyazaki, 2026, “Olfactory habituation and dishabituation dynamically regulate feeding motivation in domestic cats”, Physiology & Behavior, Volume 311, Article 115328
執筆:equallLIFE編集部
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