「最近、犬を飼う人が減っている」そんな実感はありませんか?
実は、犬の飼育頭数が長期的に減少し続ける一方で、猫は横ばい〜微増で推移しています。しかも、世界的に見ても“犬がここまで減っている国は日本だけ”という指摘があるほど、日本の犬猫飼育には独特の構造変化が起きています。
本記事では、一般社団法人ペットフード協会の普及啓発委員長・木村氏による『全国犬猫飼育実態調査結果とペットフード市場について』をもとに、2022年の全国犬猫飼育実態調査の要点と、そこから見える課題・市場動向を整理します。
- 犬が減り、猫が安定している「日本特有の構造」
- 「飼いたくても飼えない」阻害要因(時間・住まい・お金)の実態
- 飼育前に強い不安が出るポイント(犬=しつけ/猫=病気)
- ペットの生涯必要経費と、負担感が増している背景
- ペットフード市場(数量と金額)の最新動向とトレンド
目次
減少する犬、横ばいの猫:日本独自の「犬離れ」が進んでいる
まず注目すべきは、犬と猫の飼育頭数の推移が対照的である点です。
- 犬の推計飼育頭数:2022年は約705万3千頭。2008年と比較して大幅な減少が続いています。
- 猫の推計飼育頭数:2022年は約883万7千頭。微増〜横ばいで推移し、頭数では犬を上回る状態が定着しています。
資料では、犬の飼育頭数がこれほど減少しているのは世界的に見ても日本だけ、という問題提起がなされています。世帯飼育率も低下傾向にあり、犬の飼育を取り巻く環境が厳しくなっていることがうかがえます。
背景にある社会構造の変化
犬と猫の差の背景には、日本の人口動態や生活構造の変化があります。
- 少子高齢化が進み、生活の担い手が減っている
- 単身世帯の増加で、日常のケア負担を一人で背負いやすい
- 共働き世帯(有職主婦)の増加で、日中不在の家庭が増えている
散歩が必要で留守番への不安も生じやすい犬より、比較的ライフスタイルに合わせやすい猫が選ばれやすい環境になっている、と整理できます。
「飼いたくても飼えない」阻害要因が増えている
新たな飼育者が増えない背景には、「意向」と「現実」のギャップがあります。調査では、現在ペットを飼っていない人のうち「今後犬を飼いたい」と考えている割合が低下していることが示されています。
阻害要因の上位は「時間」「別れ」「お金」
飼育を阻害する要因として、犬猫それぞれで上位に挙がる項目が異なります。
- 犬の阻害要因(例):長期の外出がしづらい/別れがつらい/お金がかかる
- 猫の阻害要因(例):集合住宅で禁止されている/お金がかかる/別れがつらい
犬では「外出しづらい(生活の自由度)」が強い壁になり、猫では「住まい(ペット可否)」が最大の壁になりやすい、という構図が見えてきます。
生体価格の高騰と「予算ギャップ」
特に若年層では、生体価格の高騰が飼育開始のハードルになっていることが示唆されています。調査では購入予算の平均が示されていますが、実際の市場価格との間にギャップが生じている点が課題として挙げられています。
生涯必要経費は「犬252万円/猫132万円」:負担感は年々上がる
飼育の負担は購入時だけではありません。調査では、平均寿命まで飼育した場合の総費用(生涯必要経費)が試算されています。
- 犬:約252万円
- 猫:約132万円
特に犬は、フードのプレミアム化、医療の高度化、シニア犬の増加などの影響で、支出額が増加傾向にあると整理されています。つまり「飼う前の価格」だけでなく「飼い続けるコスト」が家計の意思決定に与える影響が大きくなっている、ということです。
飼育前の不安は「犬=しつけ」「猫=病気」
調査からは、これから飼おうとする人が感じる不安の質も見えてきます。
- 犬:「しつけ」への関心が特に高く、次いで「仕事をしながら世話ができるか」といった生活両立の不安が目立ちます。
- 猫:「病気」への関心が最も高く、次いで「家や家具への傷・汚れ」など生活環境面の不安が挙がります。
著者は、こうした不安に対して、適切な情報提供やサポートの不足(啓発不足)が課題になっている点にも言及しています。裏を返せば、正しい知識提供と支援設計は、飼育開始・継続の後押しになり得る領域です。
ペットフード市場は「金額は伸びる」が、犬は数量が伸びにくい
ペットフード市場では、原材料価格やエネルギーコストの高騰、製品の高付加価値化などを背景に、価格上昇と市場金額の増加が見られたと整理されています。資料では、2021年度の出荷総金額が増加し、増加が継続していることが示されています。
- 犬用フード:飼育頭数の減少で出荷「数量」は伸びにくい一方、高付加価値化や価格改定により出荷「金額」は下支えされやすい。
- 猫用フード:頭数が安定しているため、数量・金額ともに伸びやすい。
- トレンド:ドライ中心から、ウェット(レトルト・缶詰など)を含む「食事の多様化」が進んでいる。
犬は「頭数減×単価上昇」、猫は「頭数安定×多様化」という構造が、市場の見え方(数量と金額のズレ)を生んでいると考えられます。
縮小を止める鍵は「社会的価値の再提示」かもしれない
木村氏は、ペット飼育が人にもたらす価値として、健康増進、孤独の解消、家族の絆といった効用(エビデンス)を、より社会に発信する必要性を指摘しています。
「かわいい」だけでなく、高齢化社会における健康寿命の延伸、子どもの情操教育など、機能的・社会的価値を再提示することが、飼育のハードルが上がった時代における市場反転のヒントになる可能性があります。
参考文献:全国犬猫飼育実態調査結果とペットフード市場について
執筆:equallLIFE編集部








































