熊被害が深刻化している近年、「うちの犬は大丈夫かな?」と不安に感じている方もいるかと多いと思います。
結論からいうと、屋外飼育をしている方は、危険です。現代は、“屋内飼育が基本”であり、発想を切り替えたほうが安全です。
本記事では、熊被害の状況から、犬が巻き込まれるリスク、そして犬を守るための屋内飼育・生活のポイントを解説します。
目次
なぜ今、熊被害が「身近なリスク」になっているのか
近年、日本各地でクマの出没が急増しています。
- 2023年の年間クマ出没件数は 24,348件 と統計開始以降最多を記録
- 2024年も 20,513件 と高水準が続き、2025年は8月時点で 16,016件 と過去2年を上回るペース
- 東北〜北陸地方を中心に、ブナなど堅果類の凶作がクマの里への出没増加に影響している可能性が指摘されています
以前は「山奥の話」と感じていたクマの問題が、今や住宅地や都市近郊の公園でも起こるようになってきました。
クマ被害は「人」だけでなく「犬」にも及んでいる
最近では人身被害が大きく報じられますが、犬が被害に遭うケースも増えています。
実際に起きている「犬の被害」
- 2025年9月、福島県喜多方市の住宅で、窓から侵入しようとしたクマにより外で飼われていた犬が襲われた事例
- 2025年7月、岩手県岩泉町の住宅でクマに襲われたとみられる犬が死亡しているのが発見された事例
- 北海道では、犬を連れて散歩中の人がヒグマに襲われた例が報告
これらのニュースから分かるのは、
- 「庭でつないでいる犬」「屋外の犬小屋の犬」もクマの被害対象になる
「犬を連れた散歩」がクマとの遭遇リスクを高める場面になり得る - という現実です。
犬は「クマを教えてくれる存在」でもあり「標的」にもなる
犬が吠えることでクマの存在に気づけるという面もあります。
しかし同時に、
- 吠え声がクマの興味を引き寄せてしまう
- 犬がクマに向かっていき、逆に襲われる
- 鎖や柵で逃げられず、犬だけが被害を受ける
といったリスクもあります。
犬を熊よけの道具として期待するのは危険であり、むしろ守るべき家族として考える必要があります。
なぜ「屋内飼育」が熊被害対策として重要なのか
外飼いの犬が直面するリスク
屋外(庭・玄関先・犬小屋)での飼育は、次のようなリスクを抱えています。
- 夜間〜早朝にクマが敷地内に入り、犬小屋や柵越しに攻撃される
- 鎖につながれているため、犬が逃げられない
- クマがエサ(ドッグフード、生ごみ、コンポストなど)を求めて接近し、犬ごと巻き込まれる
実際、クマは人の食べ物や生ごみ、ペットフードなど強いにおいに引き寄せられやすいとされており、「エサ+犬の存在」がクマを呼び寄せる要因になる可能性もあります。
屋内飼育にすることで得られる安全性
一方で、犬を基本的に屋内で飼育するスタイルに切り替えると、次のような効果が期待できます。
- クマと犬が直接接触する可能性を大幅に下げられる
- 夜間・早朝にクマが敷地内に来ても、犬は建物の中で守られている
- ペットフードや給餌場所を屋内に移すことで、匂いによる誘引を減らせる
- 異変(物音・吠え声)に飼い主が気づきやすく、早めに通報・避難行動がとりやすい
- クマを人の生活圏に近づけない、エサとなるものを置かないことが大切であり、それはペットフードや外飼いのスタイルにも直結します。
犬は室内で飼育する
犬を屋外で飼うことは、熊被害だけではなく、病気のリスク・鳴き声などによる近隣への迷惑行為・犬のストレスといったリスクがあります。
犬の室内飼いは、環境省の資料でも次のように記述されています。
「鳴き声などによる近隣への迷惑の防止や犬とのコミュニケーションを容易にするため、犬はできれば室内で飼いましょう。特に集合住宅、過度に住宅が接しているような場合は、室内飼育をお勧めします。屋外ばかりで飼うことは、犬を家族から引き離すことになり、大変なストレスとなります。」
基本は「24時間屋内」を前提にする
- 就寝時、留守番時は必ず屋内に
- ご飯・水・休息場所も屋内に集約する
- 以前外飼いだった場合は、少しずつ室内環境に慣らす(ベッド・トイレ・クレートトレーニングなど)
散歩や庭遊びの「時間」と「場所」を見直す
時間帯の工夫
- クマの行動が活発になりやすい時間帯の散歩はできるだけ避ける
- どうしてもその時間に出る必要がある場合は、
- 人通りが多い場所
- 見通しの良い舗装路を選び、山際や河川敷、藪の近くは避ける
場所の工夫
住宅地でも、山林に近いエリア・緑地帯・河川敷はクマの移動ルートになることがあります
可能なら
- 住宅街の中心部
- 商業エリア
- よく整備された公園(自治体の注意情報も要確認)
など、クマ出没リスクの低いルートを選びましょう。
散歩中の「犬と人」の安全ルール
- 必ずリードを装着し、伸縮リードは短く固定
- 犬を先に行かせず、人が状況を確認しながら歩く
- 山に近いエリアやクマ注意報発令中は、鈴や熊よけベル、ラジオなどで自分の存在を知らせる(ただし、クマの多い地域の最新アドバイスは自治体情報を確認)
万が一クマを見かけた場合は、
- 犬を絶対に近づけない・離さない
- 犬を抱き上げられるサイズなら、落ち着いて抱きかかえゆっくり後退
- 大声で刺激したり、追い払おうとしない(状況により悪化の可能性)
など、「犬を守る」ことを最優先に考えましょう。
屋内飼育でも「犬のQOL」を下げない工夫
「安全のために家の中に閉じ込める」のではなく、屋内でも犬の生活の質(QOL)を高める工夫が重要です。
運動と遊びの確保
- 室内での引っ張りっこ・ボール遊び(滑りやすい床はマットで対策)
- 知育トイやノーズワークマットで、頭を使う遊びを取り入れる
- 短時間でも、安全なルートでの散歩を継続し、外の空気や匂いを感じさせる
メンタルケアと生活リズム
- 飼い主と過ごす時間が増えることで、安心感や絆が深まる
- 規則正しい食事・睡眠・遊びのリズムをつくる
- 外で吠えるストレスが減り、近隣トラブルの軽減にもつながる
屋内飼育は、クマ対策だけでなく、暑さ・寒さ・盗難・事故・いたずらなど多くのリスクから愛犬を守る総合的な安全策とも言えます。
熊被害の時代に、飼い主ができる「一番シンプルで確実な対策」
飼い主ができる対策ですぐにできるのが、室内飼いです。
もし屋外で飼育している方は、クマ被害が深刻化する今こそ、愛犬の命と暮らしを守るために、屋内飼育へのシフトを前向きに考えてみませんか。
まとめ
- 日本ではクマの出没・被害が近年急増しており、住宅地・公園レベルまで身近なリスクになっている
- 犬がクマに襲われる事例も実際に起きており、外飼いの犬や散歩中の犬が被害に遭うケースが確認されている
- 家庭犬を「熊よけ」に使うのではなく、守るべき家族として屋内飼育を基本にすることが、これからのスタンダード
- 屋内飼育+散歩ルート・時間帯・餌やゴミの管理・庭の整備を組み合わせることで、「クマとの距離を保ちつつ、犬のQOLも守る暮らし方」が実現できる
参考文献:
環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」
環境省「クマ被害対策等について」
環境省「クマ類による人身被害について」
執筆:equall編集部
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