麻布大学生命・環境科学部 地域社会学研究室教授 大倉 健宏
Q. 大倉さんの現在のお仕事について教えてください。
地域社会学研究室で研究・教育しているのは 「コミュニティ」、すなわち、同じ地域に居住している共同体についてです。コミュニティの研究で大切にしていることは “異質・多様性の受容”、言い換えれば “いろいろな考えを認め合うこと” をモットーに、暮らしやすい社会やコミュニティを構築する方法を「社会調査」の手法を使って検討しています。
Q.ペットに関するお仕事はどのようなきっかけで始められたのですか?
2008年4月麻布大学に移籍して、これまでまったく接点のない研究分野の研究者に接するようになりました。
多くの同僚から、「疫学的研究をやってみないか」と勧められました。疫学のように時間がかかる研究はやる人が少ないと聞きました。
そこで疫学のテキストを開くと、後半の記述疫学はこれまでにも従事していた、地域調査と違いがないように思えました。
疫学ヘの関心はこんなことから芽生え始めました。この様な経緯で、ドッグパークやドッグランというコミュニティのハブをテーマとした調査研究をはじめることになりました。
Q. 大倉さんが展開しているサービスについてお教え下さい。
私たちの研究テーマの一つが 「ペットフレンドリーなコミュニティ」 です。この研究では、ペットと飼い主、そして近隣住民がより良く暮らしていくために、どのようなコミュニティが求められるのかをテーマに、飼い主の性別や収入、1日の散歩量、エサの種類や量、ペット友人の有無、ペットの歯周病ケアの頻度などの項目について、2013年から4回にわたり、米国ニューヨーク市とカリフォルニア州バークレー市にて社会調査を実施しました。
この研究成果は、大倉健宏,2020,『エンゲージ(Engage)された空間―#ペットフレンドリーなコミュニティの条件』学文社.として刊行しました。
Q. 大倉さんの今後の展望や将来についてお聞かせください。
麻布大学が所在する相模原市が「ペット飼育特区」になればいいなと考えています。
飼い犬と飼い主と飼い主ではない住民にとって、暮らしやすいコミュニティを現実化できればいいと考えています。
それによって自治体が「集客力」を増すのではないかと思います。
Q.最後に、業界のプロとしてペットと生活する上でのアドバイスをお願いします
カナダ出身でイギリスの獣医師であるフォーグル(Bruce Fogle)は、ペットと家族の新しい関係について論じています。
フォーグルによれば、ペットはその家族をうつす鏡です。ペットをめぐる理解のうえでは、ペットをだれが手に入れたか、だれのものとされているか、だれが責任を持っているかを知る必要があります。
フォーグルはペットが家族アルバムにおいて赤ちゃんのような位置をしめていると論じています(Fogle 1984=1992:75)。
どのような飼い主が、どのような社会的背景において、おもに飼育をどのように分担しているか、飼育実践の異なりはどのように説明できるか、この事がペットを考えるうえで大切なことだと思います。
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