猫と福祉と学生と。岐阜大学「プロジェクト型インターンシップ」が挑んだ地域の課題解決

地域が抱える複数の社会課題を、ひとつの場所で解決しようとする試みがあります。
今回取り上げる実践報告は「プロジェクト型インターンシップ」の記録です。

舞台となったのは、障害者の就労支援を行う事業所が運営する保護猫カフェ「猫影(ねこかげ)」。「障害者の就労促進」と「保護猫の殺処分減少」という2つの大きなテーマに対し、大学生たちがどのようなアプローチで課題解決に挑んだのか、その内容を紐解きます。

2つの社会課題を「繋ぐ」カフェ

本研究の核心は、岐阜県が抱える以下の2つの課題をリンクさせた点にあります。

  • 障害者の就労促進:障害者が働く場所の確保と、継続的な就労支援。
  • 動物愛護:岐阜県内で課題となっている、捨て猫の保護と殺処分の減少。

これらを解決するために設立されたのが、就労継続支援B型事業所「シャンツェ」が運営する忍者猫カフェ「猫影」です。
ここでは、障害のある利用者が猫の飼育や接客、広報業務を通じて職業訓練を行いながら、保護猫の譲渡活動も行っています。

学生たちに課されたミッションは、カフェのオープン(2023年2月)に向けた「メニュー開発」「SNS広報戦略」の提案でした。

学生たちによる実践的アプローチ

メニュー開発:地産地消と「現場」への配慮

メニュー開発班の取り組みで特筆すべきは、「インスタ映え」や「味」だけでなく、「障害者が調理する際の手間」や「コスト」まで考慮に入れた点です。

彼らが提案したのは、岐阜県の特産品である「富有柿」を使用したジャムや、猫を模したゼリーなどのメニューでした。

  • 地域貢献:規格外の柿を使用することでフードロス削減と農家支援に貢献できる。
  • 実現可能性:実際に企業や農家へ聞き取り調査を行い、原価や調達ルートまで検討した。

受入先の事業所からも、農家の収入支援につながる点や、作りやすさが考慮されている点が高く評価されています。

SNS広報戦略:運用継続を見据えた「マニュアル化」

広報班は、若者層への認知拡大を狙い、InstagramやTikTokの活用を提案しました。ここで非常に重要だったのが、単にアカウントを開設するだけでなく、「運営マニュアル」を作成したことです。

障害のあるスタッフが業務としてSNSを継続更新できるよう、投稿内容やハッシュタグの活用法がルール化されました。
この「仕組み化」の視点は、支援者(スタッフ)が入れ替わっても質を保てるため、事業所のブランディングと利用者のスキルアップの両面で有効であると評価されました。

教育と社会貢献の接点として

本報告書から読み取れる最大の成果は、学生が「自分たちのアイデア」と「現場のリアリティ」のすり合わせを行ったプロセスにあります。

学生たちは当初、メニュー開発において何から手を付けるべきか迷う場面もありましたが、自ら農家や企業へ連絡を取るなど、教室の外へ飛び出すことで現状を把握しました。
また、提案内容は単なる学生のアイデアコンテストに留まらず、実際にカフェの運営方針(障害者の作業負担軽減やコスト意識)に寄り添ったものでした。

「障害者のやりがいある仕事の創出」と「持続可能な保護猫活動」。
この難易度の高い2つの課題に対し、外部の視点(学生)が入ることで、富有柿ジャムのような新しい「地元の価値」が加わり、解決の糸口が太くなった好事例と言えるでしょう。

まとめ

大学のインターンシップが単なる職業体験を超え、地域のNPOや福祉事業所と連携して具体的な社会的価値を生み出せることを示しています。
学生が作成したSNSマニュアルやメニュー案が、実際の福祉現場で「資産」として活用されようとしている点は、PBL(課題解決型学習)の理想的な着地点の一つです。

 

参考文献:地域の課題を繋ぐカフェ : 障害者の就労促進と保護猫の殺処分を減らすために

執筆:equallLIFE編集部

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