猫は本当に「クールで気まま」? 研究が示す“飼い主への愛着”と心を開いてもらうコツ

「猫はクールで気まま」「犬と違って、飼い主にはあまりなついていないのでは……」。そんなふうに言われることはありませんか。実際、外出先から帰っても素っ気ない態度をとられたり、呼んでも来てくれなかったりすると、「うちの子は私のことをどう思っているんだろう」と少しさみしくなる飼い主さんもいるかもしれません。

ところが近年の動物行動学の研究は、その“常識”に静かに疑問を投げかけています。今回ご紹介するのは、米オレゴン州立大学のクリスティン・ヴィターレ氏らが2019年に学術誌『Current Biology』で発表した、猫と人との「愛着(アタッチメント)」を調べた研究です。

結論から言うと、この研究では猫の約65%が、飼い主を“心のよりどころ(安全基地)”として頼る「安全型」の愛着を示したことがわかりました。これは、人間の赤ちゃんや犬とほとんど同じ割合です。つまり「気まま」に見える猫も、その内側では飼い主としっかり結ばれている可能性が高いのです。

この記事では、その研究の内容をわかりやすく解説しながら、愛猫にもっと安心してもらうための具体的な接し方のヒントをお届けします。

猫の愛着を調べた「安全基地テスト」とは

研究で使われたのは、「安全基地テスト(Secure Base Test)」と呼ばれる方法です。もともとは人間の赤ちゃんの愛着を調べるために発展してきた手法で、犬やサルでも応用されてきました。ヴィターレ氏らは、それを猫に当てはめてみたのです。

テストの流れ

テストはとてもシンプルで、初めての部屋で次の3つの場面を順番に観察します。

  • 最初の2分間:飼い主と一緒に、見慣れない部屋で過ごす
  • 次の2分間:飼い主が部屋を出て、猫が一人きりになる
  • 最後の2分間:飼い主が戻ってきて、再会する

注目するのは、最後の「再会」の場面での猫の反応です。人間の赤ちゃんの研究では、安心して飼い主を信頼している子(安全型)は、再会するとすぐに落ち着いて、また自由に遊んだり探索したりを再開します。一方、不安が強い子(不安型)は、飼い主にしがみついて離れなかったり、逆にそっぽを向いて避けたりと、なかなか落ち着けない様子を見せます。

ヴィターレ氏らは、この基準を猫に当てはめ、再会後の行動から猫の愛着のタイプを分類しました。

約65%の猫が「安全型」だった

テストの結果、多くの猫が、飼い主が戻ってくると落ち着きを取り戻し、飼い主を“安全基地”にしながら部屋の探索を再開しました。研究チームが分類したところ、子猫・成猫を問わずおよそ65%が「安全型」の愛着を示し、残りの約35%が「不安型」に分類されたのです。

【研究のポイント】
人間の赤ちゃんでは約65%が安全型の愛着を持つとされています。今回の猫の結果は、この割合と驚くほどよく一致していました。さらに、子猫のときの愛着タイプは成猫になっても安定していて、大人になっても飼い主への愛着が保たれていることも示されました。ヴィターレ氏は「犬と同じように、猫も人との関係において社会的な柔軟さを示す。多くの猫は飼い主に安全型の愛着を持ち、慣れない環境では飼い主をよりどころにする」と述べています。

「猫は単独行動の動物だから、人になつかない」というイメージは、私たちが思っているほど正確ではないのかもしれません。素っ気なく見えても、いざというときに頼りにしているのは、ほかでもない飼い主さん自身だということです。

そもそも猫は「人との関わり」を求めている

「とはいえ、猫はごはんさえあれば人間はどうでもいいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。これについても、同じ研究グループによる興味深い研究があります。

ヴィターレ氏らが2017年に『Behavioural Processes』で発表した研究では、猫に「人との触れ合い」「食べ物」「おもちゃ」「におい」という4種類の刺激を提示し、どれを最も好むかを調べました。すると、家庭で飼われている猫でも保護施設の猫でも、最も多くの猫が「人との社会的な触れ合い」を一番に選んだのです。次いで人気だったのが食べ物でした。

もちろん、すべての猫が同じわけではなく、食べ物やおもちゃを好む子もいました。それでも、「猫は人に無関心」という見方とは異なり、多くの猫にとって飼い主とのコミュニケーションは大きな価値を持っている、と考えられる結果です。

「うちの子は不安型かも」と感じたら

愛着のタイプは、その子の性格や、これまでの経験、人との関わり方など、さまざまな要因が関係していると考えられています。大切なのは「安全型かどうか」で優劣をつけることではなく、目の前の愛猫が安心して暮らせる環境を整えてあげることです。日々の接し方でできる工夫を、いくつかご紹介します。

【ポイント】無理に距離を詰めない
猫が自分から近づいてくるのを待つのが基本です。こちらからぐいぐい構いすぎると、かえって警戒されてしまうことも。猫のペースを尊重し、「来てくれたら優しく応える」を心がけると、信頼関係が育ちやすくなります。

【ポイント】安心できる「隠れ場所」を用意する
段ボール箱やキャットハウス、高い場所など、猫が落ち着ける逃げ場があると、不安なときに自分で気持ちを立て直せます。来客時や物音が多いときの“避難所”としても役立ちます。

【ポイント】毎日の生活リズムを一定に保つ
食事や遊びの時間がだいたい決まっていると、猫は先の見通しが立ち、安心しやすくなります。環境の急な変化が苦手な猫にとって、予測できる毎日は大きな安心材料です。

【ポイント】コミュニケーションは「短く・心地よく」
猫が喜ぶなで方やおもちゃでの遊びを、短時間でも毎日続けてみましょう。前述の研究が示すように、多くの猫は人との触れ合いそのものを“ごほうび”として受け取ってくれます。

なお、もし急に隠れる時間が増えた、攻撃的になった、食欲が落ちたなど、これまでと様子が大きく変わった場合は、ストレスだけでなく体の不調が隠れていることもあります。気になる変化が続くときは、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してください。

研究を読むときに知っておきたいこと

とても夢のある研究ですが、結果を受け取るうえで知っておきたい点もあります。

まず、これらの研究で調べられた猫の数は限られており、すべての猫に同じことが当てはまると断定できるわけではありません。また、「安全基地テスト」は人間の赤ちゃん向けに作られた枠組みを応用したもので、猫の行動を人間の物差しで分類することの妥当性については、研究者の間でも議論が続いています。実際に、別の研究チームが同様の実験を行った際には、必ずしも同じ結果にならなかったという報告もあります。

大切なのは、「科学が“猫も飼い主を頼りにしている可能性”を示し始めている」という事実を、過度に一般化せずに受け止めることです。愛猫が安全型か不安型かをラベル付けすることよりも、その子が安心して過ごせているかどうかを、日々のしぐさから感じ取ってあげることのほうがずっと大切だといえるでしょう。

まとめ

  • オレゴン州立大学の研究(2019年)で、猫の約65%が飼い主を“安全基地”とする「安全型」の愛着を示し、これは人間の赤ちゃんとほぼ同じ割合だった。
  • 子猫のときの愛着タイプは成猫になっても安定しており、大人になっても飼い主への愛着が保たれていた。
  • 別の研究(2017年)では、多くの猫が食べ物よりも「人との触れ合い」を最も好む刺激として選んだ。
  • 無理に距離を詰めず、隠れ場所を用意し、生活リズムを整え、短く心地よい触れ合いを重ねることが、猫の安心につながる。
  • 研究は対象数が限られ、手法にも議論がある。ラベル付けより、目の前の愛猫が安心して暮らせているかを大切にしたい。

「気まま」に見える猫も、その心の奥では飼い主さんをしっかり頼りにしているのかもしれません。今日の何気ない触れ合いの一つひとつが、愛猫の「安心」を少しずつ育てています。愛猫のペースを大切にしながら、その小さなサインに気づいてあげられるといいですね。

 

参考文献:Vitale, K. R., Behnke, A. C., & Udell, M. A. R., 2019. Attachment bonds between domestic cats and humans. Current Biology, 29(18), R864-R865./Vitale Shreve, K. R., Mehrkam, L. R., & Udell, M. A. R., 2017. Social interaction, food, scent or toys? A formal assessment of domestic pet and shelter cat (Felis silvestris catus) preferences. Behavioural Processes, 141, 322-328.

執筆:equall編集部

 








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