ペットを飼うことは、私たちの生活に癒やしを与えるだけではありません。実は、消費行動という「無意識の選択」にまで影響を与えている可能性があります。
犬を飼っている人は、猫を飼っている人に比べて、特定の商品やブランドを使い続ける「ブランド・ロイヤルティ」が高くなりやすいことが示されました。
なぜ飼っているペットの種類が、スーパーやネットショッピングでの振る舞いを変えてしまうのでしょうか。本記事では、論文をもとに、その心理メカニズムとビジネスへの応用可能性をわかりやすく解説します。
目次
犬の飼い主は「一途な買い方」になりやすい
先に結論です。研究の示唆はシンプルです。
- 犬の飼い主は、猫の飼い主よりもブランド・ロイヤルティが高まりやすい傾向がある
- ただし「犬を飼うこと」そのものが直接ロイヤルティを生むのではなく、「対人関係での義理堅さ(個人忠誠心)」を介してロイヤルティが高まる可能性がある
言い換えると、犬と暮らすことで強まりやすい「義理堅さ」が、買い物にも波及して「同じブランドを選び続ける」行動につながる、という構図です。
犬の飼い主はブランドへの忠誠心が高い
消費行動において、気に入ったブランドを繰り返し購入する心理傾向を「ブランド・ロイヤルティ」と呼びます。今回の研究が示唆するのは、犬の飼い主は猫の飼い主よりも、このロイヤルティを抱きやすい傾向があるという点です。
具体的には、次のような傾向が想定されます。
- 多くの商品で特定のブランドばかりを選びやすい
- 気に入ったブランドのためなら、探す労力を惜しみにくい
- 普段から愛用ブランドの情報を気にしやすい
これはドッグフードのようなペット関連品に限らず、日用品やファッションなど、消費全般に及ぶ心理的傾向として捉えられています。
なぜペットが主人の性格を変えるのか
なぜペットの違いが、飼い主の購買行動にまで影響するのでしょうか。論文では主に「拡張自己」と「ステレオタイプの移転」という考え方で説明されています。
拡張自己とは
人は自分の所有物(家、車、服、そしてペットなど)を「自分の一部」と感じることがあります。特にペットは家族やパートナーとしての存在感が強く、飼い主のアイデンティティ形成に深く関わりやすいと考えられます。
犬らしさの移転(ステレオタイプの移転)
一般的に、犬には「人間に忠実」「社交的」「約束を守る」といったイメージが語られやすい傾向があります。犬と長く暮らすことで、飼い主は無意識のうちにその特性を自分自身の性格や行動に取り込みやすくなる、という説明です。
その結果、対人関係での義理堅さが強まり、さらにその義理堅さが「モノやブランドとの関係」にも適用されることで、ブランドを変えにくい消費者像が生まれる、という流れが示唆されています。
研究データが示す犬派と猫派の違い
論文では、主に2つの調査で仮説を検証しています。ここでは専門的な統計表現を避けて、要点だけを整理します。
調査1:犬と猫のイメージの確認
まず、犬と猫に対する世間のイメージを調査しました。その結果、「約束を守る」「裏切らない」といった忠誠心に関わる印象は、猫よりも犬のイメージに強く結びついていることが確認されました。
調査2:飼い主へのアンケート
次に、実際に犬と猫を飼っている人(両方飼育などを除外した110名)を対象に、自身の性格傾向と買い物傾向を調査しました。
明らかになったポイント
- 個人としての忠誠心:犬の飼い主は、猫の飼い主よりも対人関係での義理堅さ(個人忠誠心)が高い傾向が示された
- 買い物への影響:犬の飼育がブランド・ロイヤルティへ直接作用するというより、「個人忠誠心」を介して間接的にロイヤルティが高まる可能性が示された
この結果は、犬と暮らすという環境が人の性格傾向を強化し、それが巡り巡って消費スタイルに反映される可能性を示唆しています。
ビジネスやマーケティングへのヒント
この研究結果は、企業のマーケティングにもヒントを与えます。顧客が犬派か猫派かで、刺さりやすいコミュニケーションが変わる可能性があるためです。
犬の飼い主へのアプローチ
キーワードは「関係の構築」です。一度気に入ってもらえれば長く使い続けてくれる可能性があるため、継続利用を後押しする設計が合いやすいと考えられます。
- ポイントプログラム、会員ランク制度などのロイヤルティ施策
- ブランドの信頼性、歴史、品質基準などを丁寧に伝えるコミュニケーション
- アフターサポートや保証を含めた「安心して使い続けられる理由」の提示
猫の飼い主へのアプローチ
猫の飼い主はブランドへの固執が相対的に低い可能性があるため、新商品や機能的メリットを伝えることでスイッチ(乗り換え)を促しやすいとも解釈できます。また論文内の考察では、猫への接触が「予防焦点(失敗したくない心理)」を強める可能性も示唆されています。
- 新機能・利便性・コスパなど、比較で優位性が伝わる訴求
- 「失敗しない選択」を支える安心材料(安全性、レビュー、第三者評価)の提示
- お試しや返金保証など、心理的ハードルを下げる導線
本研究の限界とこれからの視点
今回の論文は非常に興味深い視点を提供していますが、読み手として押さえておきたい注意点もあります。
- 飼育年数による変化:飼い始めたばかりの人と、長年一緒に暮らしている人では影響の強さが異なる可能性がある
- 元々の性格の可能性:犬が性格を変えたのではなく、もともと義理堅い人が犬を選んで飼っている可能性もあり得る
- 他のペットの可能性:鳥、魚、爬虫類など、他のペット飼育が消費行動に与える影響は今後の研究課題である
それでも、私たちが何気なく選んでいる「共に暮らす存在」が、財布の紐の開け方にまで関わるかもしれないという視点は、自己理解にもマーケティングにも価値がある示唆です。
まとめ
研究論文をもとに、ペット飼育と消費行動(ブランド・ロイヤルティ)の関係について解説しました。
- 犬の飼い主はブランド・ロイヤルティが高まりやすい傾向が示唆される
- 背景には、犬の忠実さに関するイメージが飼い主へ移転する可能性がある
- 犬派には継続特典や関係構築、猫派には機能訴求や安心材料が有効になり得る
もしあなたが犬と暮らしていて、いつも同じ洗剤やビールを選びがちなら、それは「愛犬と築く関係性の感覚」が買い物にも表れているのかもしれません。逆に猫と暮らしているなら、変化や比較を楽しむ合理的な買い方が強い可能性もあります。
参考文献:ペットの飼育が消費者のブランド・ロイヤルティに与える影響
執筆:equallLIFE編集部

































